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40 地下処理場の普通

 朝、日が登ると重くなった身体に鞭打って硬いパンと時折投げ入れられる固茹で卵の争奪戦に参戦する。死体が落とされる所と同じ場所に食事が落とされて最初は食べる事などできなかったフィスティアも背に腹は変えられぬと思い切って口をつけたのは何日前のことだったか……ここでは食べなければ自分が死んでしまう。また、例え食べても栄養失調で倒れて病気になる者も多い。ならば食べて生き残る…ここの環境に慣れてくれば、臭気にも吐かなくもなって来た。

 そして荷が落とされてはそれを運ぶ。当たり前のようなその繰り返しを黙々と熟して行く自分自身にすら驚きを覚える程だ。


 昨日まで動き一緒に働いていた者が朝には動かなくなって()()となる事など日常茶飯事。誰がいて、誰が居なくなったかなど数える者も気にする者さえここには居ない…


 そんな毎日を送るなか、フィスティアはある事に気がついた。森に死体を運ぶ時、時折不可解な事をしている者がいた。道に荷車を止めて休憩するのは珍しくも無いが、わざわざ荷車の上に上がっては死体を探っている者がいた。彼らが何をしているのかフィスティアも直ぐに知る事になった。


 彼らは死体から貴重品や装飾品を外して自分の粗末な服の懐に隠し持っていた。地下処理場に投げ込まれる前に、大抵の貴重品などは役人達に没収されてしまうのが常のようだが、稀にまだ外しきれていないピアスや指輪、服の中には宝石入りの個人識別札等が出て来るのだが、これをいただいているのだ。手に入れた所で当然使う場所も有りはしないのにまるで心の拠り所にでもしているかの様に集めて行く…明日は自分が探られている立場になっている事も珍しくは無かったのだが……


 王妃であったフィスティアも慣れてしまった…他人の遺体から何か見つけ無ければと、生きる目的をも掴む様な気持ちで無気力な中にも熟し続けた。


 ここに入れられてからもう数週間は経つだろうか?小さな少年と仕事をさせられているフィスティアは寝床と言われた小屋で眠る事をやめていた。最初は顔色一つ変えない少年があまりにも哀れで少しでもそばにいたいと思ったのがきっかけだったか…今ではもう思い出せもしないのだが、雨を避けて土や草の上に眠るフィスティアにはかつての美しい姿のかけらさえも見ることが出来ないほどに、痩せ細り、薄汚れて一瞬老婆の様にも見えたかもしれない。

 病気や飢えで倒れた者を看護する者も居ない中、動けなくなればそれまでだ。まだ、動くなら、動けるなら食べ物を口にする為に床に這ってでもパンを取りにいかなければならなかった…

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