34 王妃の行く末
王ルワンの命を受け、王妃フィスティアは自室へと下がる。事実上の監禁状態となるが周囲の者達は王ルワンの気持ちが落ち着きこの状態が解除される事を密かに願っていた。他国を絡めた動乱が続く中、まさかの王妃が廃妃される様なことになっては他国に付け入られる隙を作る事にもなる。それだけはなんとしても避けたいところではあった。
「……出ろ…!」
朝も明けぬ暗い内にフィスティアの処遇は決まる。王ルワンの決意は変わらず、王妃在籍のままフィスティアは地下処理場へと投げ入れられる事になり、数名の騎士達が突然に王妃の寝室に訪れる。表向きの王妃フィスティアは病床につく事になる。が、聖女の力健在のため次なる王妃の選定はせず…これが王ルワンの考えであった。
命を受けた騎士ならばその命を遂行しなくてはならない。王妃フィスティアの寝室の前には、苦悶の表情を隠そうともしないまま居並ぶ騎士もいた。
フィスティアは着ていた上等なドレスを剥ぎ取られ、質素な室内着のみになる。そのまま騎士達に囲まれてまだ誰も目覚めていない城内を静かに地下に向かって歩いて行った。
王妃フィスティアに関わった者達はどうしたのか…王ルワンの怒りは王妃の生死を問わぬ処遇に処すだけでは鎮まらず、聖女の制定を行なった聖女の墓守の一族の長であるイグランは断首。フィスティアの実家であるドルン侯爵家はその地位の剥奪はしないものの事実上領地での永久蟄居を命じられた。ドルン侯爵はフィスティアの処罰が密やかに下された折にも城への登城は許されず、今後フィスティアの生死についても知ることさえも叶わない…
「謝罪すら…させてもらえないのですね……」
王妃の寝室に篭っていた時、心休まる事もなく王ルワンの事を考えていたフィスティア。自分は不甲斐無さに打ちのめされて、友を失い悲しみ苦しむ夫の慰めも謝罪する為に面会する事さえも叶わなかった………
「ルワン様…」
地下へと降りる階段で一度だけフィスティアは城内を振り返った。きっともう、生きてここを見る事はないのだろう……そんな少しの感傷も任務を遂行しようとする騎士は許してはくれないらしい…
「早く歩け!!」
フィスティアが立ち止まると腕を掴み、半ば引きずる様にして地下へとフィスティアを引き立てて行った…
地下処理場へは二箇所入り口がある。一つは遺体を投げ入れる穴、一つは役人や係りの者が出入りする扉。石造りの壁や頑丈な木造りの扉はどの部屋とも代わり映えがない。が、木造りの扉が開けられた時にここがただの室内では無いことがよく分かった。室内は殺風景で家具らしいものは何もなく、ただ広いその部屋には押し車が何車か無造作に並んでいるのが見えた。室内であろうはずなのに入った先には壁はなくそのまま外に通じて出ていくことができる様になっている。目の端には小さな小屋の様な物が見えて、部屋の天井にあたる部分にはポッカリと穴が開いていた。
「ここだ、入れ!」
半ば投げ入れられる様にして腕を掴まれたフィスティアは部屋の床へと倒れ込む…
ここ………?
廃棄所と言われる地下処理場では何というか、部屋とも外とも違う異質な雰囲気で匂いまでも違った……




