33 断罪
「其方が…偽らなければ…」
フィスティアを見つめ言葉を紡ぐ王ルワンの瞳から絶えず涙が流れ落ちる…
「ルワン様……」
「いや……私が其方の力を確認さえしていれば…」
王ルワンは自分の髪を鷲掴みにして、嗚咽に耐える。
「其方ではなく……他の者を妃にしていれば……」
「…………」
「…何故だ!?……何故偽っていた!?」
声を抑えようともしない王ルワンの言葉がフィスティアの心に刺さる…
「私は…偽っては、おりません……」
何を言えば良いのか…?謝罪だろうか…偽っていたと更に偽ることだろうか?王ルワンは最早フィスティアの言葉を受け入れようともしないに違いない……その冷たい責める様な眼差しが言葉よりもフィスティアの心を傷つけていく……
「では、何故ラートは死んだのだ!!!!」
絶叫にも近い叫びが王ルワンから絞り出される。
「………………申し訳…ありませんでした………」
嘆き叫ぶ王に向かって、これ以上フィスティアは何を言えただろうか…自分では体験した聖女の力が今この場では働かなかった…その為に王ルワンの大切な人間が息を引き取ったのだ。自分の聖女としての力が使えていたならばきっと騎士ラートは助かっていたに違いない………………自分の所為で一人の命を失わせることになってしまったのだから……
「フィスティア………」
恐ろしい程の低い声がフィスティアを呼ぶ。
「私は其方の顔など、もう見たくはない……!!私を、裏切り……王家を騙し、のうのうと妃の座に収まる其方に…似合いの場所を与えてやろう…!」
「……陛下……!」
「なりませぬ……!」
この場で王妃であるフィスティアを裁かんとする王ルワンに周囲の騎士が止めに入った。王族が罪を犯した場合には、王の采配で全てを決めるのではなく王室裁判にかけられる慣しになっていたからだ。
「……………」
「それを地下処理場へ連れて行け…!」
「陛下!!」
「なんという事を!」
側に控えていた騎士達からも抗議の声が上がる。
地下処理場、ガーナードの城の基礎は階層にして2~3階分程高く造られている。その地下には主に倉庫として使用されているが、他に重罪人を収監する地下牢があり、その更に階下には重罪人や敵兵捕虜、奴隷の様な身分の者が城で息を引き取った際にその骸が投げ込まれる廃棄穴が設けてある。地下処理場とはこの廃棄穴のことであり、此処に入れられるものは死んだ者達のことだ…
「なりませぬ…!仮にも王妃殿下ではございませんか!」
「その王妃が、私とこの国を裏切っていたのだ!!」
「ルワン……さ…」
騎士ラートが寝かせられている寝台を拳で思い切り叩きつけて王ルワンは続ける。
「お前の所為で、友は死んだ!お前が偽った所為で!私はお前を生涯許さぬ!!そこで誰にも顧みられる事なく、這いつくばって死んでいくがいい!!連れて行け!!!」
王ルワンの言葉一つで王妃フィスティアの生死は決まったも同然だった…




