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28 毒矢に倒れる 3

「どこだ!」


「彼方の天幕です!!」


 戦場では怪我が付き物だ。ガーナード国王軍の中には、戦地にまで付き従う気丈な令嬢もいた。今回も王の出兵とあって宿営で聖女は待機していた。


 王ルワン自ら騎士ラートを天幕に運び込む。矢傷は幸いな事に急所を外れてはいた。が、受傷直後の意識の昏倒と、必死に抑えていても後から溢れ出て来る出血がただの傷では無いと物語っていた。


「陛下!?こちらに!!」

 

 連絡を受け、既に寝床が用意されている中に騎士ラートは下ろされる。


「失礼いたします!!」


 直ぐに令嬢が騎士ラートに手をかざす…戦場には慣れていないのだろうその聖女の手は微かにだが震えていた。


「どうだ!?癒せるか!?」


 治癒は始まったばかりであるのに、王ルワンは直ぐに結果を求めて来る。


「お待ちくださいませ、陛下。聖女とて万能ではありませぬ…時間がかかる事もあるでしょう……」


 聖女の力も能力も個人差が大きく、小さな擦り傷の治癒から大きな傷までと一人一人の能力に応じて癒すことができる。


「傷は……大した事は無いのです。矢傷も深くはありません。癒せぬはずはないのです……!けれど…!血が…血が、止まりませぬ!」


 癒す力も弱めぬままに必死に治癒を試みている聖女の顔から血の気が退いていく…


「……毒………毒では……!?」


「何と?」


 他の負傷兵を診ていた医師が天幕に駆け込んできた。


「どうなったのです!?」


「先生!血が、騎士様の血が止まりませぬ!?」


 最早聖女は泣き出してしまいそうだ。


「何と、毒矢か……!」


「解毒は出来ぬのか!?」


「わ、私では、治癒が精一杯でございます…このまま出血を止める様にしか…」


「むぅ…かなり強力な毒を使用しているのでしょうな。毒の回りが速すぎます…」


「何とか……何とか、何とかならんのか!!私の代わりに矢を受けたのだぞ!!」


 騎士ラートは王の右腕とも、親友とも言われるほどの信頼を受け今日まで共にガーナードを守って来た。目の前で、もうダメだと言われたとしても王ルワンには諦め切れるものではない…


「王妃様……王妃様の、聖女としてのお力では如何でしょう!?」


「おお!そうだ!城まで持つか!?」


 聖女の言葉に医師が弾かれた様に騎士ラートの脈を診る。


「持たせて見せます…!後は、出血さえ止めて、王妃様に毒を消し去ってもらいましょう!」


 王妃フィスティアの強力な聖女の力は国中で誰もが知るほどに有名だ。癒せぬものがないとまで言われるほどに………今はもう最後の綱として王妃フィスティアの聖女の力に頼る他、騎士ラートの命をつなぎとめる事は出来なかった…

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