22 ソルダム伯爵領の実態
「おかしいですね……」
そろそろソルダム伯爵領領境のはず…報告に上がったものにはソルダム伯爵領は占領されたとある。ソルダム伯爵領はガーナード国国境に沿って領土を有し、自領を守る為にはそれなりの私兵団を有していたはずだ。その騎士、兵士達を全て押さえて領土を制圧したとすれば、かなりの数の兵をここに送り込んだことになる。そして、他国に侵入されたとあれば、隣接する他領に援軍や救援の要請が行くはずなのである。が、ソルダム伯爵領に隣接する領地はいずれもその様な警戒をしてもおらず、領境を守る一人の兵をも見受けられない……
「斥候を待つ。全員待機!!」
「はっ」
国王の指示により、ソルダム伯爵領に入る前に全軍待機命令が出された。そこは至って長閑な農村地が周囲に広がる。突然に出現した国王軍に農民はあっけに取られ、ポカンと農機具を投げ出したまま何が起こっているのかと騎士達を見ている農夫さえいた程だ。
「陛下…やはりおかしいです。この辺りでソルダム伯爵領地の兵士や伝令の者達が行き交った姿を見た者はおりません…他国の兵士にしても然り…戦の噂も聞かないと言う事でした。」
隣接している領地の農民達からの情報を集めてきた者達…
「ソルダム伯爵領地には確かにクトルドの兵がおりました…が、数が余りにも少なすぎます。領主邸には入れませんでしたが、館の周りにいる兵も少な過ぎて…館を包囲している様には見えません。」
「奴らは今どこにいるのだ?」
「はっ館を見下ろす牧草地に中隊規模で宿営している隊が本隊かと…それ以上の兵が見当たりません…」
「なん、だと?…たった中隊…?それだけの兵にソルダム伯爵領は落とされたのか!?」
「……いえ、何とも言えませぬ…大隊は撤退した後かも知れませぬし…しかし、荒らされた跡も見当たりませんで……他の斥候の者達は何と言っておりましたか?」
ソルダム伯爵領邸付近を探っていた者達…
「近隣に他国からの侵攻、宣戦布告の通達は無いそうだ…」
「なんとも、おかしな事で……」
これらからの報告により、国王ルワンも騎士ラートも大方ソルダム伯爵領の占領の情報が虚偽だったとの判断をし始めている。
「…ラート。ソルダム伯爵領からの書簡は誰が持ってきた物だったか?」
「……ソルダム伯爵領の、若い騎士かと……隊服も紋章もソルダム伯爵領の物でしたし、見た事はない者でしたので、王城には登城した事が無い者でしょうが…」
「もしや、その者もクトルドの兵かも知れんな……ソルダム伯爵邸、クトルド国軍宿営双方に使いを立てよ!!此度の詳細を確認するのだ!」
ソルダム伯爵領各地に遣わされた斥候からはクトルド国軍のあまりの少なさ、占領されたと言う割には荒らされてもいない町々や農村が余りにも不釣り合いで最早、此度の諍いごとの発端となった盗賊云々も偽りだった可能性がある。その証拠にそもそも王城には盗賊討伐のための人材、物資、資金の援助を請う声も今まで聞こえてこなかった……
後は、両者が何と答えてくるかだ…………




