19 開戦
国王夫妻の一時の安らぎは長くは続かない…アノモラ国に送った外交官がいわれない責を負わされて拘束されてしまった。外交官には非はなく公の場で聖女の肩を持った事がアノモラの王族に対しては不敬罪になるとの事だった。ハンガ国との争いの折には聖女に対する暴言が抗争を引き起こしたきっかけともなっている為に、ガーナード国に対しては控えて頂きたい旨を申し出ただけだった。
ガーナード国とアナモラ国の外交官返還の会合に着くべく、ガーナード国に近いアナモラ国国境沿いの街に件の外交官は移送され、ガーナード国側からは交渉事には長けているだろう宰相ディンク自らが出ることになった。が、此処で問題が起こる。件のガーナード国の外交官は不敬罪こそ問われていたが、重罪犯では無い…筈であるにも関わらず、アノモラ国の兵士達は会合が開かれる街の入り口に外交官を吊るしたのである。交渉事が終了しないうちからの暴挙には最早、宰相ディンクも絶句した。
外交官を返還する為の席であったはず……その外交官が刑に処されたとあっては最早交渉も何もない。悪魔でもアノモラ国側の王族不敬罪による刑執行という筋道を、ガーナード国側から切り捨てた形でアノモラ国内での小競り合いに発展してしまった。
「陛下!陛下!!!」
ガーナード王城に緊急の早馬が到着すると、一気に城内が騒がしくなる。
「何事だ?」
ガーナード国王夫妻に少しの心の安らぎと休息が求められた時はこれで終わる………
「アノモラにて、外交官が処刑され、我が国の兵士と国境間際で交戦中との事です!」
ザワザワザワ………一気にその場が騒がしくなる。
「なんという事だ!宰相は?ディンク殿はどうした?」
大臣の一人が問えば、宰相ディンクは直ぐ様騎士にその場から連れ出されなんとかアノモラ国の国境を越えたとの報告だった。が、まだ国境を超えたあたりだ。アノモラ国の兵が押し寄せては宰相ディンク達に勝ち目はない。
「直ぐにアノモラ国国境へ兵を向かわせよ!できる事ならば外交官の遺骸も持ち帰るのだ!」
できる事ならば、肉親に返してやりたい……
「くそっ!私も出る!」
「なりません!!陛下!!貴方は城から動いてはなりません!」
「そうですぞ……!こうなってしまっては致し方ない…!ここは私が出ましょう……眼前に壁が立ち塞がったら、奴らは尻込みしましょうな……陛下!私が壁の役割をして来ましょうぞ!」
ガーナード国の要とも言われているエシャルン伯爵だ。周辺諸国にもその名は知れ渡っている程勇猛果敢な騎士団を率いて南からセルンシト、アノモラ、ハンガへ掛けての国境沿いの護りを固めて行く。幸いにもアノモラ兵の追撃の手はガーナード国に入らず両者睨み合いの状態だ。両国とも負傷者を多数出してしまう結果となりアノモラ国とは臨戦態勢となった。




