17 煙立つ
ガーナード国西にあるクトルド国、南東にあるアノモラ国にはここ何年も王家に聖女の輿入れは無い。両国は聖女に対する敬意を払ってはくれるものの、ガーナード国に対してはやや見下した対応を取って来ており、何かに付けて言いがかりの様な要望を出してくる。
一年前からガーナード国が提案している国王暗殺に関する協議にも協力参加はせず、逆に謂れのない大罪を押し付けてきたと反撃の体制に出ている。そして多大に名誉を傷つけたとして、今後この様なことがない様にガーナード国内に各国の自治区を造れとの聞き入れることのできない要望を出してきた位だ。
「王、どうされますか?この二国の要望は国が滅びる程の打撃を受けても了承するには屈辱的ではありますがね?」
連日連夜に渡る会議に些か嫌気が差してきているのだろう、宰相ディンクの発言はやや投げやりなものにも聞こえてくる。答えるとするならばこの案件は全てが却下、だ。もう既にガーナード国としての答えは出てもいるのに、なぜ、ここまで長引かせる必要があるのか…そちらの方が疑問であって、ここに出席している大臣他役職者を問い詰めてしまいたい……
「落ち着け、ディンク…まさか、この様な茶番に踊らされている者がいるとは思えないのだが……これは、何度目の採決か?」
「陛下、もう今日で五度目の採決になりますよ?ええ、城内に居る全ての貴族から決を取る訳ですからそれはそれは無駄な時間を使用してまでこのくだらない案に縋らなくてはならないのですか?」
「しかし、ディンク殿!この二国の要望を跳ね返したら…武力で実力行使に出てくるでしょう!それ位にこの度の件は両国を怒らせてしまっているのです!」
「何を言うのだ!一国の王暗殺だぞ!!その容疑者を他国が匿うなど、持っての他ではないか!友好を築くどころかこの両国は毒の牙を隠し持つ毒蛇ではないか!」
「そうだ!両国の言うようになぜ、我らの地を明け渡さねばならぬのだ!」
「しかし!このままでは戦に!!それだけは何としても避けなければ!!」
クトルド国、アノモラ国の要望を頑として跳ね返そうと言う者、戦に突入だけは何としても避けたい者の意見がほぼ真っ二つに割れてしまっている。勿論、両国には外務官を何度も派遣し、ガーナード国の言い分は十二分に伝えさせてもらって来た。その上での自治区提供とは…先王の方針で普段は戦を回避しようとする保守派の人々が多い中、今回の案件はそんな人々にも飲めるものではなかった様だ。
「まだだ……二国の要望は当然受けぬが、まだこちらから打って出るには時期尚早…ディンク、どう思う?」
「我が王…御意にございます。」
国王ルワンは他国にも屈さぬ心持ちである。が、今はまだ動く時期では無い…




