113 再会 3
フィスティアは差し伸べられた手を取ると、酷く満足げなセルンシト国の騎士と共に室内へとエスコートされて行く。
「貴方のお名前を聞いてもよろしくて?」
サント家の兄弟は身元が分かったが、このセルンシト国の騎士についてはフィスティアは何も知らないままだった。そして自分を助け、あの地獄から連れ出してくれたのはどちらの者だろうか?
「そうでしたね、レディ…ゆっくりと今までの事もお話ししましょう。なぜ、貴方がここに居られるのかも。」
「是非、お聞きしたいですわ…」
そして、ガーナード国はどうなっているのか、王ルワンは………残して来ている家族達は…?
応接間に場所を移し、柔らかなソファーに揃って腰を下ろす。
「まず、私の事から…」
フィスティアをエスコートしたセルンシト国の騎士はケイトル・セルンシトと名乗った。
「!?…セルンシト国の王族の方!?」
まさか、ただの騎士が王族という事にも驚くのに、その人物が一度ガーナード国で処刑されていた事に更に驚きだ。
王族とは言っても、ほぼ国外にいるような放蕩癖のある第二王子だ。次代の皇太子がいるので自由気ままに過ごしていた。そんな人生も終わりを迎えた矢先に聖女に救われてはその恩を返さなければと、ただ生きていくだけだったケイトルは自分の残りの人生を賭ける事にした。ガーナード国に縁の深いヒルシュ国へと便りを出せば、ヒルシュ国の末の王子カンリールが力を貸すと名乗りを上げる。
このカンリール王子がかなりの曲者で諜報が趣味という。ほぼ全土に渡って目と耳があると思って良いくらいの諜報能力を持っていると言っても過言ではない程の情報網を持っていた。ヒルシュ国王の元にカンリール王子から声をかけられ集められた者達が同盟軍を組む。
そこには勿論の事、ガーナード国国王ルワンの姿もあった。
王ルワンの名を聞けば、フィスティアの肩がビクッと震える。フィスティアにとっては懐かしく愛しい、そして苦痛と恐怖を与えた張本人だ。
ヒルシュ国王の元には、ガーナード国で聖女に命を救われた者達を中心に、今回のガーナード国での反乱とハンガ国の対応に反発する者達が集まる事になる。実際には殆どの者たちがヒルシュ国に集まる事はなかった。それぞれの場所でガーナード国王の生存を聞き、そしてその報復の為の作戦を聞き、次々とその作戦に加担の声を上げたのだ。その中にはハンガ国の騎士達も少なからずにいたという。
一人の聖女を救う為に、また自らの国のあり様に疑問を持った勇気ある者達が、あの日、一つの印と共に立ち上がった。