重々しい会議、からの来客。
だいぶ体調が戻ったので再開したいと思います!
「……そうか」
のどかな日々が続いていたミアスの村。
だが、会議室にそろった面々には重苦しい雰囲気が漂っていた。
事の発端は、近隣のパトロールに出ていたエルフからの報告だった。
どうやら獣王国とフォリア王国の戦争がいよいよ本格化したらしく、あちこちで戦いが起こっているらしい。
ふたつの国の間に位置するこの村も、いつ戦いに巻きこまれるかわからない。
「この布陣だと……奥に本隊がいるな。同時に複数の箇所で攻勢をしかけわざと負ける。そして相手が前線を押し上げてるタイミングで一点突破。瓦解した前線を包囲殲滅する。王国の常勝の戦い方だ」
戦闘のあった場所から、フォリア王国の狙いを判断するミズキ。
それに合わせて、ブーデンもこれからの動きを読む。
「獣王国もその動きは掴めてるはずだぜ。だが……勝った以上前線は上がっちまう。獣王の統制が末端まで完璧に及ぶわけじゃねぇしな。そうなればフォリア王国の作戦とやらも上手くいくはずだ」
「本隊ってやつか……獣王国の布陣は?」
「オークの戦い方は猪突猛進。戦術規模の布陣はあっても戦略規模の布陣なんて出来ねぇよ」
ミアスの問に、ブーデンはすぐさま答える。
「そうなると……フォリア王国の本隊がどこにいるかだよな」
「それに関してだが、おそらくここだろう」
ミズキが地図を指さした場所は、フォリア王国と獣王国の前線のど真ん中にあたる部分だった。
「ど真ん中だな。そしてこの村にも近い」
「……不味いですな。その予想が正しければこの村も戦火に巻き込まれます」
「だな。んー、どうしたもんか」
村を捨てるには大きくなりすぎてしまった。ミアスと魂の繋がりを得た生命は強化されていて、繁殖速度もあがってる。
村を作り始めた時とは比べ物にならないほどミアスの村は大きくなっていた。
では、戦うのはどうか。積極的に攻めなくとも村を守るために戦うというのは、そんな考えがミアスの頭に浮かんだ。
「守るっていうのは厳しいか?」
「いや……フォリア王国の戦力を考えればいけるだろう。雑魚は言うまでもないし、強いのがいてもここに居るもの達なら追い返せるはずだ」
ミズキは会議に参加してるメンバーを見渡してそう告げた。
「……だけど、守ったあとどうする? どっちかが勝ってもこの村は繁栄できない」
守るという選択肢をとったとして、その後村が繁栄できるかというと、そんなことはないんじゃないかとアイラは発言した。
「確かに、フォリア王国と獣王国、どちらかが勝って戦争が終わったとして、その矛先が次にむくのはこの村ですな」
「僕もそう思うな。僕達も何かしらの行動を示さないと滅ぶのは間違いないと思う」
ミアスの守るという考えも、長期的に見ればいい選択とは言えなかった。
その後も会議は続き、どうしたらこの村を守れるのか、そこに視点を置いての話し合いが続いていく。
ただ、彼らの長はミアスであり、最終決定権もミアスにある。そのため次第に会議は静かになっていき、ミアスの決定を待つ状態になる。
そしてミアスはようやく考えをまとめたのか席をたち、真剣な眼差しをみんなへと向ける。
会議に参加してる面々は、ミアスの言葉を今か今かと待ち構えていた。
「よし、ふたつの国をおとそう」
「「「「いやいやいや」」」」
「え?」
思った以上に突拍子もないことを言い始めたミアスに、全員からストップがかかる。
「いや、なにも国を壊滅させようってわけじゃなくてさ、それぞれのトップを倒せば……って話だよ」
「それぞれのトップ? フォリア王国の王さまと、獣王を倒すってこと?」
「そう。そしたら国は混乱するし、戦争は終わるだろ? その間に村を繁栄させればいいんじゃないか?」
とてもシンプルな考えだった。ミアスの考えがいけるのかどうか、会議に参加してる面々も自分たちの中で考える。
しばらく静かな時間が流れたところで、ブーデンが沈黙を破る。
「シンプルで悪くないとは思うが……攻めに行ってる間の村の守り、攻め入る手段、相手戦力の調査、やらなきゃならんことが多すぎるきがする。すぐに行動を起こさなきゃ行けない場面で、そんなことしてる暇あるのか?」
ブーデンの意見で、より一層みんなは考え込んでしまう。
考えて、意見を出していけば行くほど、この村がこれから発展していくための道は少ないことがわかってしまう。
だが、そんな会議の重苦しい雰囲気を破るように、会議室の扉が乱暴に叩かれる。
同時に、会議室にいた何人かは何があったのか、報告を受ける前に状況を把握してすぐさま席を立った。
「侵入者でーーってあれ? ミアス様?」
「わかってる! 広場だな?」
「は、はい!」
報告する前に動き出していたミアスに驚く伝令だったが、すぐに我に返ってミアスの後を追う。
広場に出たミアスは、何かを囲むようにして集まっている村人たちの間をかき分け、中心にいる者へと視線を移す。
見た目の種族はヒューマン。それも初老の女性だろう。魔法使いと言うよりも、科学者というのが近いような白衣を身にまとい、知的な印象をもたらすメガネをかけている。
見た目は非戦闘員の科学者。だが身に纏う魔力からは、本気を出したミズキに勝るとも劣らない迫力を感じる。
村にとっての脅威、それがわかったミアスは小さく舌打ちをしてルーの槍と強化されたヌアザの剣を両手に構える。
だが、初老の女性は戦闘態勢をとることなく、好奇心のやどった目でミアスを見つめる。
「あんたがこの村の主かい?」
そして、しゃがれた声でそうミアスに話しかけた。
少しシリアス展開が続くかも?
復活記念というのも何ですが、初のロウファンタジー作品に手を出して見ました。あまり得意なジャンルでは無いので自信が無いのですが……よければ読んでみてください。作者ページから行けます。
追記
再び体調が崩れてしまい……更新が遅れます。楽しみにしていただいている方、本当に申し訳ないです。




