ほのぼの日向ぼっこ、からのアンオブタニウム。
ほのぼのな話です。
「んー、いい天気だ」
あれから10日ほどたち、ミアスはしっかり傷が癒えていた。そして、相も変わらず野原で1人のんびりと日向ぼっこをしているのだった。
ただ、いつもとは違い、仕事は既に終わらせ、日向ぼっこと魔力の練習を同時に練習していた。
近くにあった手頃な大きさの岩を無属性魔法で浮かべながら、空間属性魔法を使って異空間に収納、放出を繰り返す。
単一の属性の魔法を同時行使することも中々難易度が高いのだが、ミアスは異なる属性の魔法を同時行使出来るようになっていた。
その練習の甲斐あってか、『空間属性魔法Lv2』が『空間属性魔法Lv4』に、『無属性魔法Lv3』が『無属性魔法Lv5』に強化されていた。
フォリア王国からの動きは、あれ以来なにもない。何も無さすぎて逆に不安になるレベルで。
倒した兵士たちの身につけていた装備は、ダタラ達主体で新たな装備に作りかえられ、村の戦力増強に当てられていた。また、先程の戦いで強くなったアイラ、ブーデン、ファルの指導の元、集団戦の訓練も行われている。
アイラはランク5のニアノーブルオークから、ランク6のニアオークプリンセスになった。身体能力は魔力による身体強化を行っていなくとも、オーク達に引けを取らないほどになり、全力の身体強化はミアスにも並ぶほどの力を手に入れた。
見た目はオーク要素が少なくなり、体毛は少し濃い程度のヒューマンのようになった。体つきはより女性らしさをまし、これでミアスへのアピールが出来るとアイラはとても喜んでいるようだった。
ファルはというと、ランク5のニアハイドレイクから、ランク6のレッサードライグへと進化した。
体はより大きくなり、姿もドラゴンのような姿へと近づいていく。手足が少し細長くなり、可愛いと弄られてきた翼もまた、大きくなった。
二つのエクストラスキル、『炎熱化』と『竜炎属性魔法』のふたつを持ち、竜種という元々の力が高い種族であるということから、集団戦においては圧倒的な制圧力、防衛力を誇る。
ミアスもレベルは100になっているため進化は出来るのだが、進化してすぐは中々体が馴染まないため、フォリア王国がいつ来るのか分からないこの状況においては中々行えていなかった。
そんな理由から、強くなるためには地道にスキルを鍛えるしかなく、ミアスは日向ぼっこのついでに訓練を行っているのだった。
「暇そうだな、ミアス」
「ミズキか? 訓練してんじゃなかったのか」
ミアスお気に入りの草原に爽やかな風が吹き、近づいてきたミズキの金色の髪が揺れる。一見なんの興味もなさそうにしながら、なんだかんだでその立ち姿の美しさに見惚れるミアスは、できるだけ平静を装ってミズキに返事を返す。
「全員疲労が限界に来てたのでな」
「ボコボコにしたからだろ……、まぁやりすぎじゃあないのは知ってるし、みんな強くなってるみたいだからいいけど」
ミズキは村に少しでも馴染むため、積極的に仕事を行っていた。朝は誰よりも早く起きて食料となる生命を狩り、みんなが起きてからは食料調達の護衛や、パトロールについて行く。そして午後からは訓練に教官として参加し、村全体の戦力強化に尽力している。
弱体化されてるとはいえ、ミズキは《剣の祝福》というユニークスキルの持ち主、身体強化抜きでも圧倒的な強さを持つ上、技術も論理的に教え込む指導力をもっているため、メキメキと村の戦力は増強していった。
今までそういった面の指導を行っていたブーデンが微妙な立場になってしまい、割と焦っていることは本人にとって大きな悩みになっているらしいが。
「それで? なんか用事か?」
「うむ、今日は食料調達に行かないようでな、パトロールもブーデンが随伴するそうだからすることが無いのだ」
「なるほどね。それなら料理の手伝いなんかはどうだ?」
ミアスがいたずらっ子のようにニヤニヤしながら、そんなことをミズキに提案する。
ミズキはその提案に顔をひきつらせた。
この村に来てから、色々な仕事を張り切って行ってきたミズキだったが、料理だけはだめだった。包丁さばきは完璧なものの、味付けの感覚が常人とはかけ離れていたのだ。
初めてミズキが料理を手伝った日、料理担当の村人達から速攻で出禁をくらったらしく、それ以来ミズキは料理を手伝うことはなかった。ミアスは、それを知っていてミズキを弄った。
「……いいだろう。では私が腕によりをかけてミアスに料理を作ってやろう」
「え? じょ、冗談だってミズキ!」
「遠慮するなミアス。せっかく時間が空いたからお前の隣でのんびりしようと思っていたのだが……そう言われてはやるしかあるまい」
「いやいや! 一緒に日向ぼっこしようぜ、な?」
軽くいじった反撃がおもったよりも重く、ミアスは慌てて取り繕う。
ミズキは慌てるミアスを見て、クスッと軽く微笑んだ。
爽やかな風と、夕日がミズキの顔立ちの良さと、綺麗さを引き立て、その微笑みはミアスの恋心にクリティカルヒットしているのだが、ミアスはなんとか表情に出すのを抑えた。
「いいだろう、日向ぼっこをしようではないか。ミアス、横になれ」
「お、おう」
ミズキの指示で、ミアスは大人しく横になる。
そしてミズキは、その横に密着する形で腰を下ろし、ミアスの腕を枕代わりにして横になった。
「?!」
「……どうした? 私が近いのは嫌か?」
嫌なわけが無い、そんなことを心の中で思いながらも、ラルフリートに急ぎすぎといった手前、口に出すのははばかられた。
「そう聞かれたらミアス君は嫌って言えないだろう。何してるんだい君は」
そんなミアスとミズキに、赤髪のエルフが声をかける。
「む、ラルフリートか」
「ほら、早く離れて」
「む」
そういってラルフリートはミズキの手を引いて、無理矢理立ち上がらせた。
「少しくっつくぐらいいいだろう」
「ダメだよ、ミアス君には仕事があるみたいだし」
「仕事?」
今日の仕事は全部終わらせたはず、とミアスは不思議そうな表情を作る。
「そう、ダイデンがアンオブタニウムを使った武器を完成させたらしいから見に来て欲しいんだって」
「お、ついに出来たか!」
ミアスが魔境からとってきた金属、アンオブタニウムはダイデンによって新たな武器として作り替えられていた。その作業が終わったという報告に、ミアスは子供のように嬉しそうな顔で喜ぶのだった。
お読みいただきありがとうございました!
近々、気分転換にテンプレ満載のローファンタジーでも書いてみようと思っています。頭を空っぽにして読めるを目標にするので、興味のある方はお楽しみに。