女の戦い、修羅場なミアス。
ブクマ100件を突破しました!目標のひとつにしてきたので、とても嬉しいです。これも読んでくれるみなさんのおかげです。これからもよろしくお願いします
今日の話は、ミアスの貞操がピンチかもです。この世界の女性は押しがめちゃくちゃ強いですね。
「ラルフリート、というのだな。ミアスから聞いたぞ」
「そうかい? みんなにはラルフって呼ばれてるよ。君には呼ばせないけどね」
ミズキに対し、敵意満載の対応するラルフリートに、ミアスはおろおろと二人に視線をうつす。アイラはこれが女の戦いだとわかっているのか、口を出す気はないらしい。
「手厳しいな、ラルフリート。私に負けたのがそんなに気に食わないか?」
ミズキは王女の生まれということもあり、言い方や態度は基本的に不遜で傲慢なものになってしまう。この言葉も、ミズキにとっては別に煽っているわけでもバカにしているわけでもないのだが、ラルフリートからしてみればそうではなく、ムッとした表情をさらに厳しいものにする。
「……別に、負けたのは僕の力の無さだよ。気に食わないのは村やミアス君に危険を持ってきたくせに、何だかんだで村に居座ってることさ。ミアス君は許したかもしれないけど、中々みんなは受け入れられないよ」
ラルフリートは、ミズキとの戦闘で真正面から打ちのめされたことについては、自分の力のなさだと納得していた。
「むぅ、正しいな。ただ、私も簡単に許され、受け入れられるとは思っていない。無論、受け入れて貰えるよう努力はするが、それでもダメだと言うのならばこの村を去ろう。これはミアスにも言ったことだ」
真剣な表情で語られたその言葉の真偽を確認するように、ラルフリートはミアスの方を見る。それに対してミアスが頷いてるのを見て、ミズキの言葉が本心からのものだと確認したラルフリートは、小さく息をはき、手に持った料理をミズキとミアス、それぞれのテーブルに置いた。
「……まぁ応援しといてあげるよ、不本意だけど。あと、次は負けないからね」
「ふっ、望むところ……と言いたいところだが、ヴラートの魔法具のせいで私はかなり弱体化しまってる」
ミズキは手を閉じたり開いたりしながら、少し不安そうに告げた。ヴラートの魔法具は、ミズキのユニークスキル《剣の祝福》を破壊しようとした、だが、封印も完全には出来なかったのに、破壊など出来るはずもなく、ミズキの魂の中、スキルを司る部分に傷を与えたのみだった。
傷は修復不可能なものでは無いが、治るには時間がかかり、その期間はスキルの恩恵をあまり受けれないため、弱体化してるともいえる。ただ、ミズキには身体と頭に染み込んだ技術があるため、そこまで変化がある訳では無いのだが。
「そうなの? じゃあ回復してからでいいよ。僕も弱体化してる人に勝っても嬉しくないし」
「ふむ、ではお言葉に甘えるとしよう。それにしても、思ったよりも私に対して……その、なんというか、優しい?のだな。」
ミズキ自身なんと言っていいのかわからないのか、自分で言うのが恥ずかしいのか、少し言い淀みながらラルフリートに尋ねた。
「ふん、別に優しくはしないよ。ただそこまで悪い人でもなさそうだから、一回負けただけで強く当たるのは大人気ないと思っただけさ」
「……そうか」
ミズキにとって、そのラルフリートの行動は好ましいものだったのか、嬉しそうに微笑みながら返事をする。
そして、ミズキは目の前にある食事に目をうつす。食事は、村の近くで取れた猪型の生命の肉を、濃厚な果実のスープで煮込んだものだった。
病人には全く優しくない料理ではあるものの、見た目と匂いがミズキの食欲を激しく刺激する。
いただくとしよう、そう呟いたミズキはナイフとフォークを手にもつ。
そこで、ある程度ミズキが認められる方向に話が終わろうとしていた……だが、ラルフリートが爆弾を落とす。
「あ、言っておくけど、ミアス君は僕のものだからね」
「はぁ?!」
「……ラルフリート、貴様」
「待って、ラルフ」
ラルフリートの爆弾発言に、ミアス、ミズキ、アイラが三者三様の反応を示す。
ミアスはびっくりしながらも、自分を異性として求められてることに喜びを隠せない様子で、ミズキは食器を落とし、ラルフリートを睨みつけ、アイラはラルフリートに襲い掛かりそうな勢いで。
「待て待て、俺がいつからラルフのものになった」
ここで、少し冷静になったミアスが場を落着けるために声を上げる。だが、喜びが微妙に隠しきれておらず、口角があがっていた。
「ミアス、顔がにやけてる」
「そそそそんなことないわ!」
とてつもない動揺で、どう隠せると思ったのかはわからないが、ミアスはアイラの指摘を否定する。
「ふふん、やっぱりミアス君は僕のものだね! 嬉しそうだもん!」
「違う、ミアスは女に慣れてないだけってファルが言ってた」
(あいつなんて事言ってんだよ……)
この場にいないファルの好感度が若干下がる。
「女に慣れてない? ふむ、強さとは魅力。ミアスならば既に女を侍らせていてもおかしくないとは思っていたが……確かに、初めてあった時も初心な反応をしていたな」
「そうなんだよ、ミアス君ならハーレムを作ってもおかしくないのに、未だに誰とも何もしてないらしいじゃないか。正直、僕は君に助けられた時から君に惚れてる。だからぜひとも僕のものになってほしい」
いきなりの、しかも直球勝負の告白にミアスは言葉が出ない。
だが、ストレートな分ミアスはこの場での回答を求められてしまうことになった。ミズキとアイラの視線がミアスに突き刺さる。
「……嬉しいよ、好意を持たれてるのは凄く嬉しい」
「なら……」
「だけど、ちょっといきなりすぎる」
正直なミアスの感想だった。もちろん、他種族との交配が可能と知って以来、ミアスも異性との恋愛やハーレムなんかを考えなかった訳では無い。ミズキやラルフリートとそういう関係になれたら……なんて妄想もなかった訳では無い。ただ、実際その場面になった時に、ミアスは驚き固まってしまった。
修羅場をくぐり抜け、ハーレムを形成するには、ミアスの経験があまりにも足りていなかった。
「俺だって恋人とか欲しいと思うけど、なんというか……こう、恋人の前に色々と段階をふむものじゃないか?」
そのミアスの問に、ミズキ、ラルフリート、アイラの三名は「は?」といった表情をする。
この世界は、基本的に弱肉強食、強さの魅力は好意に繋がることが多く、さらにはいつ死ぬか分からないために行動も早い。恋人になる前にデートをし、微妙ながらもそのお互いの思いを推し量るような控えめな恋愛はあまりなかった。
「違うみたいだな」
「いつ死ぬか分からないからね、いい男は見つけ次第捕まえろ、おばあちゃんの格言だよ」
「うむ、フォリア王国にも命短し恋せよ乙女という言葉があってな、ヒューマンにとって若く美しくいられる期間は少ない、いい男は逃すなという事だな」
ミズキとラルフリートが、急に意見を合わせてくる。
「ただ、ミアス君がゆっくりがいいなら、そうするよ」
だが、ここはラルフリートが引いた。ここで無理に押してミアスに嫌われる訳にも行かないし、そこまで切羽詰まっている訳でもないため、今すぐにミアスと恋仲になる必要も無いのだ。
(ゆっくりっていっても……多分ミアス君は押せば行ける)
(ふむ、この様子なら私にもチャンスは大いにあるな。元々ミアスの隣をめざしてきたのだ。勝ち取って見せよう)
(むぅ、思い切って押せばよかった)
ただ、三名とも内心はミアスを手に入れため燃えていた。
それにミアスは気づかず、とりあえずはこの場が収まったものだと考え、食事に手を付け始めた。
「あいつ、絶対女で苦労するぜ」
『我も同感だブーデン。まぁ我としてはアイラを応援したいのだがな』
そんなミアスの様子を知ったブーデンとファルは、これからのミアスの生活を考えて、大変な日々になるだろうと憐れみながらも、楽しくなりそうだと、少し嬉しそうにしているのだった。
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ヒロイン達がグイグイ来てますね。次回からは日常編がすこし続きます!
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