表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/41

逃走、からの勝利。

中々執筆時間がとれず危うく毎日更新が途切れる所でした( ̄▽ ̄;)


今回はヴラートとの戦いの決着です。お楽しみに!

「ぐぁぁぁ?!」


 背中から胸に槍が突き抜けたヴラートが、絶叫を上げる。だが、他種族の魂を取り込んで強化されたヴラートにとっては戦闘不能になるほどの傷ではなく、ミアスの一瞬の隙をついて《転移》を行う。


「往生際が悪いんだよ!」


「五月蝿い! 私はまだ死ぬ訳には行かないのだ!」


 深手を負っているのにも関わらず、必死にミアスの攻撃をさけるヴラート。


 ヴラートの動きは鈍くなり、ミアスの動きは進化しているとはいえ、ヴラートはこの状況でも生き残るだけの技量を持っていた。そして、戦闘経験の浅いミアスは、ヴラートのフェイントやブラフに時間を取られてヴラートにほんの少しの余裕を与えてしまう。


「《転ーー》」


「させるか! 《炎砲》!」


「ぬぉ?!」


 一瞬の隙をついて距離を取り、《転移》で逃げようとしたヴラートに炎の弾丸が飛んでくる。咄嗟にそれを避けたためヴラートは魔法を発動しきれず、再び槍と剣の攻撃を回避し続けることになってしまった。


 ヴラート以外の兵士はと言うと、《弱化結界》が解けたことで全力での戦闘が可能になったブーデン、ファル、アイラの三人に蹴散らされていた。


 その状況を理解していたヴラートは、兵士が全員やられればその三人がこちらの戦闘に混ざってくることは明確であり、そうなれば本当に自分は終わりだということがわかっていたからこそ、一刻も早く逃げようと策を考えていた。


「転移は無理か……ならば!」


「自暴自棄になったか! 《一閃》!」


 ヴラートは剣を捨て、ミアスへと向かっていく。


 ミアスは、それを自暴自棄になったのだと考えて、《一閃》を放つ。だが、ヴラートはその一撃を待っていた。今までの戦いで、ミアスの戦闘経験の浅さを理解していたため、自分が真っ直ぐに突っ込めば予想通りの行動をとってくれると考えていたのだ。


 そこからのヴラートの動きは、1つの型として幾度となく繰り返して来たものだったのか、洗練され無駄のない動きだった。


 高速で自身を貫こうとする槍先をかわし、脇と身体の間に挟むようにして勢いを止める。多少は傷をおうものの、他種族の魂を取り込んだことで強化された体ならば耐えられないほどではない。そしてもう片方の手で体を回しながら固定された槍を打ち払う。


 その動きで、ミアスの手元から槍は離れ、ヴラートの両手に収まる。


「なっ?!」


「動きと技術はあっても経験不足だなぁミアス! 《フォリア槍術・流水旋》」


 先程は剣で戦っていたヴラートは、槍も使えるのかしっかりとした動きで武技を放つ。流れる水のごとくミアスの防御をかわしながら槍先は進み、ミアスのヌアザの剣を持つ肩を貫く。


「ぐぁ?!」


 先程槍で体を貫かれたダメージに加えて、この一撃を食らったミアスは思わず膝を着いてしまう。


 その時間を使い、ヴラートは懐から結晶のような魔法具を取り出した。


(何個持ってんだよあいつ!)


 心の中で悪態をつきながら、ミアスは立ち上がろうとする。だが、ダメージはかなり大きいのか、身体が言うことを効いてくれない。


 それでも魔力は動かせる。ミアスは背中側から魔力を放出することで推進剤にし、無理矢理ヴラートへと接近する。


「うおおおおおお!」


「なーーぐぁぁぁ?!」


 そして、魔法具を持つ腕をヌアザの剣で斬り飛ばす。ヴラートの悲鳴が響き渡り、傷口からは大量の血が噴水のように吹き出した。


 だが、その目にはまだ意思がある。それをミアスもわかっていたのか、限界を超えた身体を魔力で無理矢理動かして、ヴラートの首へと剣を吸い込ませる。


()()()()()()()


 ヴラートがそう言うと、ヴラートの周りに光の柱が生まれる。


「なんだ?!」


「くくく……こうなれば手は出せん」


 今にもヴラートの首を飛ばそうとしていたヌアザの剣先は光の柱に飲み込まれると同時に、光の粒子になって消えていく。魔力で無理矢理動いていたミアスは地面にぐったりと倒れ込む。


 出血の激しい肩口を抑えながら、ヴラートはミアスを見下ろす。


「……また会おうミアス。他種族はヒューマンのためにいる。ヒューマンの力となる、ただそれだけのためにいるということを次は理解させてやる!」


 ヴラートを包む光の柱は、より強く光を放つ。


「待て! 《炎ーー》……無理か」


 なけなしの魔力でなんとか攻撃をしようとしたものの、魔法が間に合う前に光の柱は消え、中にいたヴラートも姿を消してしまう。


「くそ……」


『主……勝ったぞ』


 ヴラートを逃がしたことに悪態をついてはいるものの、村を守るという点においてはもう大丈夫だと考えたミアスは、意識を手放す。


 ほとんどの兵士を蹴散らしたファルがすぐさまミアスの身体を支え、村側の勝利ということを告げた。


 ミアスは二度、槍で体を貫かれた上に、治癒に使う分の魔力もほとんど使い切ってしまい、しばらくは意識を戻すことは無いだろう。


 だが、ファル、アイラ、ブーデンに目立った傷はなく、村人にも怪我人はいない。


 フォリア王国とミアス、その最初の戦いは、ミアスの勝利という形で、終わったのだった。



お楽しみいただけましたか?


ヴラートとの戦いの決着まで、少し長くなってしまいましたね。来週からは執筆時間も多く取れると思うので文量が元に戻ると思います、がんばります。


もしよければ、ブックマーク、評価、感想残してってください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ