本領発揮、からの《弱化結界》。
ミアスの本領発揮!成長しまくりです!
《『集中Lv1』を獲得しました。》
ミアスの集中が高まり、頭の中に響くアナウンスにも気づかないほど、ヴラートと、この戦場に意識を向ける。
「くはは、死ねぇ!」
「来いよ!」
荒々しい魔力を放ちながら、ヴラートはミアスに襲いかかる。
極限の集中状態でようやく反応できるほどの速度で迫ったヴラートはミアスを頭上から蹴り飛ばす。
ミアスはそれを両手に構えたヌアザの剣とルーの槍を前面に押し出し蹴りを受け止める。
「うおおお?! 馬鹿力が!」
「くははははは! まだまだぁ!」
一撃受け止めただけで腕が痺れるほど、ヴラートは凄まじい膂力を持っていた。そして、ヴラートの怒涛の連撃が始まる。
「くぅははははははは! 守るだけかぁ?!」
「うぉおぉぉぉぉぉ!」
反応速度ギリギリの戦いをくりひろげるミアス。一撃一撃が致命傷になりかねないヴラートの攻撃を、間一髪のところで弾き飛ばし続ける。
《『超反応Lv2』、『高速思考Lv4』に上昇しました。》
スキルレベルの上昇により、多少なりとも余裕ができる。一瞬の隙を利用してミアスはヌアザの剣を大きく振るう。
「《断裂》!」
「甘い! 《転衝》!」
なんとかミアスがくりだした反撃の一手、《断裂》による斬撃はヴラートに触れる直前で掻き消えた。
「なっ?! 空間魔法か」
村に突然軍が現れたのもこいつの仕業かとミアスは舌打ちしながら、再び防戦一方に押し込まれる。
「正解だ。だがタネがバレたところで止められる訳では無い!《転移》!」
ヴラートが魔法を発動した瞬間、ミアスの目の前から姿を消す。
「っ?! 後ろか!」
「遅い!」
ミアスの背後に転移したヴラートは、がら空きの背中に剣を突き立てる。
背中から胸へと、まっすぐにミアスの体を貫いた剣から、真っ赤な血が滴り落ちた。
「大丈夫かよ?!」
「ミアス!」
『主!』
その様子を戦いながら見ていたアイラ、ブラート、ファルが悲鳴に近い声をあげ、ミアスの安否を確認する。
「くはは……声も出ないか?」
刺した剣を握り、ヴラートはニヤニヤとミアスに話しかける。だが、ミアスからは一切の反応がなかった。
ヴラートは、あまりの痛みに声が出ないのだと考え、剣から手を離し、ミアスの顔をのぞきこんだ。
「負けた気分はどうーーなに?」
のぞきこんだミアスの顔を見て、ヴラートは硬直する。戦意を失い、負けを受けいれた絶望の表情があるとヴラートは思っていた。だが、ミアスの口元には獰猛な笑みが浮かび、目は殺意に染まっていた。
「ひっ?!」
ヴラートの本能的な部分が警告を発し、思わず飛び退く。だが、他種族の力を手に入れた自分が恐れるわけはないと、体の震えを押さえ込みミアスにとどめを刺すべく、空間属性魔法で新たな剣を取りだした。
《『神々の祝福Lvー』が発動。『吸収Lv4』、『同化Lv4』、『超反応Lv3』、『高速思考Lv5』、『治癒Lv4』、『解析Lv4』、『身体超強化Lv4』、『集中Lv3』に上昇しました。》
《神々の祝福》スキルが、ミアスの望みに答えるべく必要な力を与える。
《『神々の呪いLvー』が発動。『水属性魔法Lv1』を『空間属性魔法Lv2』に統合。『空間属性魔法Lv4』に上昇》
《『解析Lv4』と『空間属性魔法Lv4』により、《弱化結界》の無効化を確認。》
《神々の呪い》スキルは、ミアスの意思を無視して、勝手にミアスへと力を与えていく。》
ミアスの体がゆらりとゆれ、自身の体に突き刺さった剣を抜く。《治癒》スキルのレベルが上がったことで、すぐさま傷口の治療が始まって言った。
「な、なん何だ……?! なんだ貴様は!」
明らかに雰囲気が変わったミアスに、ヴラートは腰が引けながらも剣を向ける。
ミアスは、殺意に染った目のまま、身体強化をかけ直した。
「っ?!」
《弱化結界》の効果を無効化したことで、ミアスは全力の身体強化を行うことが出来た。
ミアスの全身から魔力が迸り、ヴラートの指示で勢いよく戦っていた兵士たちも完全に手を止め、とんでもない魔力を放つ、恐ろしい存在へと目を向けた。
「くそっ、転移! ……なぜだ、なぜ魔法が使えない! 転移!」
とりあえずは距離をとろうと考えたヴラートは、空間属性魔法を使おうとするものの、魔力が乱れて使えない。
「まさか……《弱化結界》か?!」
魔力が乱される、その理由に心当たりが浮かんだヴラートは驚愕した。ミアスか《弱化結界》を無効化しただけではなく、その技を使えるようになったことに気づいたためだ。
《弱化結界》は単独で出来るような魔法ではない。空間属性魔法が使える魔法使いが、結界を貼るための空間を囲むように配置し、常時魔力を使い続けてやつと維持できるものであり、単独で行えるようなものでは無い。
それがヴラート、フォリア王国の認識だった。
「正解、《弱化結界》だ。解析させてもらったからな……こんなことも出来る」
ミアスが槍を一度地面に突き刺し、頭上に手を掲げると、手のひらに魔力の塊が浮かんでくる。
「それは……、結界の核か?!」
ヴラートの言うように、ミアスが手のひらに浮かばせたのは、村を囲むように貼られている《弱化結界》の核だった。
ミアスは、それを握りつぶす。
ガラスの割れるような音と共に、村を囲っていた《弱化結界》が粉々になって割れていく。
「よっしゃァァァァ、覚悟しろや!」
「殺す!」
『《弱化結界》を解いたか。相変わらず規格外な主だ』
《弱化結界》の崩壊と同時に、アイラ、ブーデン、ファルから魔力が迸り、拮抗していた戦場が一気に動き出す。《弱化結界》が無ければファルの広範囲攻撃も容赦なく兵を襲い、ブーデンやアイラも鎧袖一触と言わんばかりに兵を吹き飛ばしていく。
「……なんか、形勢逆転しちゃったな、ヴラート」
「ふざけるな……ふん!《転移》」
ヴラートは血管がはち切れるのではないかというほど怒りを浮かべているものの、戦いに対しては冷静さを残しているのか、ミアスと同じように自身にかけられた《弱化結界》を解除し、ミアスのすぐ後ろへと転移する。
だが、ミアスの後ろに転移したはずなのに、ヴラートの視界にミアスはいない。
「《弱化結界》が出来るんだから《転移》も出来るに決まってるだろ? 《一閃》!」
「ぐぁぁぁぁぁ?!」
ヴラートが転移するのと同時に、ミアスはそのさらに後ろをとるようにして転移を行っていた。
そして、がら空きのヴラートの背中なルーの槍を突き刺す。
「さっきのお返しだ」
お読みいただきありがとうございました。ミアスの成長力が遺憾無く発揮されましたね!
もしよければ、ブックマーク、感想、評価残して言ってください!
この前気づいたんですが、評価って各話の下部分にあるんですね。昔は最新話にしかないイメージだったんですが……。




