ミズキ、からの想い。
評価、ブックマークをつけて下さる方、本当にありがとうございます。お話を書いていると、その1ptが救いになります、これからもよろしくお願いします!
今回はミズキの生い立ちと、なぜミアスの元に来たのかのお話です。お楽しみください!
フォリア王国、第四王女。フォリア=アルシア=ミズキは、祝福を持って生まれた。
これは比喩ではない。王妃から生まれ落ちてすぐに鑑定されたミズキは、ユニークスキル《剣の祝福》を持っていることがわかったのだ。
ユニークスキルというのは、持っているだけで国の宝として扱われる上に、戦闘だけではなく、技術、芸術、の発展に多くの功績を残すとされている。
そんなユニークスキルの中で、《祝福》というのは、ある分野に対して絶対的な才能を与えるとされている。
武術にかんしての祝福ならば、どれだけ努力を詰んだ天才であっても、足元にすらたどり着くことの出来ないほどの強さを持ち、芸術に関することならば各国が、その人材を求めて戦争を起こすほどの芸術家となる。
技術に関することならば、一人いれば国は何倍も潤うとされ、これもまた、戦争を引き起こした事例もある。
そして、フォリア王国の起源。それはとある《祝福》を持った一人の青年が始めたものであり、フォリア王国の中で《祝福》を持つ者は国王をも凌ぐ発言力を持つことが出来た。
だが、そんな存在を容易に受け入れる国王はなかなかいないだろう。実際、ミズキの父親であり、現フォリア王国国王はミズキの存在を恐れた。
将来、剣に関しては何者をも到達できない高みへと登るであろう自分の娘は、なによりも自分にとって危険な存在になってしまう。
そう恐れた王は、自信が得意とする《封印属性魔法》を利用して、ミズキのユニークスキルを封印しようと考えた。
国から魔法使いを掻き集め、高位の魔力伝達可能な金属を使って装置を作り上げた。スキルを封印するという、この世界を構築するステータスシステムに反発するような装置を。
まだ喋ることも出来ない我が子を、装置の中心に寝かせ、想いを込めて魔法を発動する。
親からの祝福などではなく、呪いと怨嗟の想いを込めて。
「……出来たのか? すぐに確認せい!」
装置は無事に起動し、ミズキの身体に魔法が掛けられた。
すぐに国王はミズキのステータスを鑑定させると、そこには思いもよらない結果が待っていた。
「《剣の祝福》が消えずに《王封》というスキルが生まれているだと?!」
《王封》、のちに国王が調べた結果、これは爆発的な成長速度を抑え、祝福の効果を抑えるというものだった。国王の狙い通り、装置によってミズキのユニークスキルは抑え込まれた。
しかし、ミズキの成長速度は人の枠に収まることは無かった。
初めて剣を持った日に、同じく稽古を行っていた上の兄弟姉妹とまともに打ち合い、十日もすれば完封してしまうほどの技量を得てしまった。
子供だったミズキは、剣こそ自分の生きがいだと言わんばかりに、王女が学ぶべき作法や礼儀をかなぐり捨て、すべてを剣に捧げるようになった。
《祝福》を持つものの成長速度ほどではないにせよ、常人からは考えられない成長力と、寝食以外をすべて剣にかける努力の結果、10歳になるころには国で彼女に勝てるものはいなくなった。
日に日に大きくなっていくミズキの存在に、国王は酷くやつれながらも、フォリア王国最強になったことでミズキの剣への思いが薄れるのではないかと希望を持った。
だが、ミズキは人がダメならばと、他の生命に興味を移した。
技術での勝負はなくとも、自分を遥かに超える巨体や、独特の生態や特徴を強さにする生命との戦い。また、高い知能がない故のなんでもありの命の奪い合いが、さらにミズキを強くした。
その冒険の日々の中で、ミズキに従う冒険者や騎士は増えていく。それでも、ミズキはフォリア王国を裏切るような気はなかったし、他種族を排他する考えには同意せずとも、国を動かし民を守る国王を尊敬する気持ちもあった。
しかし、国王はそんなミズキを警戒し続ける。
ミズキが国の中で大きな力を持ちすぎないよう、あえて任務と言って遠方の魔境探索に行かせたり、友人や恋人が出来ないよう、裏であらゆる手を回した。
ミズキが持ち騎士団の中にも、国王の息がかかったものは多く、ミズキには息の休まる場所がなかった。
そして気づいてしまった。誰一人、自分を見ていないと。見えているのは王女という立場や、女としての価値、剣姫と呼ばれるほどの武力、そういった部分だけなのだと。
一度気づいてしまった事は、どうしようもなくミズキの脳裏に焼き付いてしまった。誰と話していても、どこにいても、自分は自分でないような感覚が、じわじわとミズキの心を傷つけていった。
そして呟く。
「普通になりたい」
剣だけを追い続けたミズキの人生で、別の願いが生まれてしまった。
その願いを叶えるべく、ミズキは行動を開始しようとする。だが、そもそも普通とはなんなのか、多種多様な生命には、それぞれの普通がある。ミズキには何が普通なのか分からなかった。
庶民と同じ食生活をしてみても、身分を隠して冒険者の集まる酒場に繰り出しても、ミズキの求める普通の姿は見つからない。
だがある日、とある冒険者と話した時に言われた言葉が、ミズキの心に刺さった。
「こいつは特別なんだぜ!」
そう語ったのは、男二人組の冒険者パーティで、片方の男は、もう片方の男のことを特別だと褒めていた。だが、褒められた方の男もまた、褒めた男のことを特別だと褒め返していた。
その言葉の応酬で、ミズキはひとつの答えにたどり着く。
自分より特別だと思う存在がいれば、自分は普通になれるのではないか、そんな答えに。
ユニークスキル《剣の祝福》を持った大国の王女。そんな自分よりも特別な存在など、そうそう見つかるとは思っていなかったし、任務で各地を回っていても、一向に見つかる気配はない。
だが、きっかけは小さな魔境探索だった。
魔境の空間に一歩足を踏み入れた途端、戦闘態勢をとることすら躊躇ってしまうほどの歪な魂がそこにはあった。
冒険の日々で手に入れた眼の力は魂の形を見抜く。その眼を持ってして、魔境の入口で他種族と共に居た存在の異形さは群を抜いていた。
悪霊に取りつかれた生命でも、魔境で生命の理からはずれた進化をした存在でも、ここまでの魂はしていない。
ミズキは確信した。
この者は、自分よりも特別だと。
ミアスと名乗った存在は、どうやら最近議題に上がっていた開拓村を乗っ取った他種族の線が高かった。
共に魔境探索をして、その成長の異常さと、他種族への接し方を見て、自分より特別だという思いはさらに確信へと変わっていく。
ミアスといれば、自分で普通でいられる。そう思ったミズキは行動を開始していく。
何年も顔を合わせていなかった国王に面会を申し込み、開拓村への出兵を依頼。他種族を嫌う貴族たちの介入は想定外だったものの、自分の傘下のもの達も混ざった混成軍を率いて、国に縛られた自分でも、大手を振ってミアスに会いに行けるように手を回した。
だが、実際に会ってみれば、エルフが自分が望んだミアスの隣を取っていた。
多少の興味と、怒りを持って思わず正面から心をおってしまったものの、なんとかミアスに自分の思いを伝えようとする。
しかし、話せば話すほど、ミズキは自分の行動が酷く身勝手で、甘い動きの多かったことかと悲痛な思いをしていく。
ミアスの隣に行きたい、ただそれだけだったのに、ミアスに嫌われる可能性や、ミアスの家族や仲間に嫌われる可能性を想定できなかった。
実際、アイラを始めミアスの家族や仲間はミズキに対しての不信感が強い。
それを払拭しなければならないと、ミズキはフォリア王国の軍を壊滅させてでも信頼を勝ち取ろうとしていたのだ。
ミアスの隣にいたい。ただそれだけの願いでミズキは動いている。
「……姫様、何を話しているのですか?」
いつまでもミアス達と話しているミズキに、ヴラートと呼ばれていた男が懐疑的な声をかける。
獲物を握る手には力が込められており、すぐにでも戦いを始められるようだった。
ユニークスキル《剣の祝福》を持つ、大国の王女。そんな特別な存在が、普通になるのは難しい。
ミズキは長年付き添ってきたヴラートの、疑うような声色を聞いて、改めてそれを実感する。
そして、決意を持って、フォリア王国軍へと振り返った。
ミズキの思いや、生い立ちの話でした。
こういったミアス以外の各キャラに焦点を置いたお話も、今後少しずつあげて行きたいと思います。
よければブックマーク、評価残していただけると嬉しいです!




