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ミズキの思い、からの告白。

少し、ややこしい話かもしれません。人の心情を上手く書くのは難しい。

(やばい、やばすぎる。ミズキの強さが想像以上だ)


 剣を扱う技術もとんでもないが、ラルフリートの精霊魔法を防いだ瞬間、魔力も気迫も、一時的に爆発したように膨れ上がった。


「精霊魔法、実物を見たのは初めてだが、凄まじい威力だな」


 凄まじい威力と言っておきながら、ミズキには傷一つない。


「終わりだな、エルフ」


 ミズキは悠然と剣をかまえ、座り込むラルフリートに近づいていく。


「待て、ミズキ」


「どうしたミアス、邪魔をするな」


 ミズキにはミアスを殺す気は無いし、あまり傷つけようと思ってはいない。そのため、本心からの言葉だった。


「お前の目的は俺だろう? ほっといてもらっちゃ困るな」


 ミアスが、ミズキとラルフリートの間に割って入り、ファルやアイラ、ブーデンもまた、戦闘態勢をとってミズキを取り囲む。


 本来ならば、もっと早くにラルフリートに協力しても良かっただろう。だが、ラルフリートと戦いを行いながらも、ミズキはつねに周囲へと殺気や気配を放っていた。


 少しでも動けば真っ先に殺されるという気配を当てられれば、ミアス達も迂闊には動けない。


 だが、ミズキはラルフリートとの戦いに満足したのか、今はその気配を解いていたため、全員が近づくことが出来ている。


「……はぁ、面倒だ。私の本心を言おう。あのな、私は別に国王や馬鹿な貴族共のような他種族を排他する考えを持っていない」


 急に雰囲気を変え、殺気をといたミズキは、後ろにいるフォリア王国軍に聞こえないようミアス達に話し始める。


「貴様らは他種族と共存を行い、技術の発展も進んでいるように見える。私としては、保護したいくらいなのだ」


 さっきとは打って変わった友好的な雰囲気に、ミアス達も困惑する。


「だが、私は王女だ。そう簡単に国には逆らえん。だから、私はここで死んだ、そういうことにしたかったのだ」


「……え、いやどういうこと?」


 本当に訳が分からないといった様子で、ミアスは聞き返す。


 さっきまで殺す気で来てたのに、急に態度を変えられてもすぐには対応できない。


「私は、王女をやめたいのだ。国を変える夢や、国民を導く大きな志ではなく、目先の幸せに囚われた人生を送りたい。人並みに楽しみ、悲しみ、恋をし、愛する人と子を成す。そんな、そんな()()の人生を送りたい。それが私の目指す道だ」


「……」


 唐突に始まった告白に、ミアス達はどう返したらいいのか分からなくなる。


 ミアス達の覚悟と、ミズキの願望にはあまりにも差があった。熱意は変わらないかもしれなくとも、さっきまで殺しに来てた相手が普通の人生を歩みたいなどと言ってもピンと来ないのだ。


「ミズキ、つまりは……どういうことだよ? さっきまでこの村を滅ぼす気まんまんだったじゃないか?」


「あれは馬鹿共の送り込んだ騎士に対しての演技だ。それなりに優秀だから手を抜いては示しがつかん。事実、別にそこのエルフに傷はつけてないだろう」


 たしかに、ラルフリートは心を折られてはいても、外傷はない。


 ここまで言われると、さすがにミアス達もある程度は納得する部分もあるのか、具体的な話を聴き始めた。


「……けど、あの実力なら抜け出すでもなんでも方法はあったろ? どうしてこの村まで来たんだよ」


 ミアスはそこが気になっていた。ミズキ程の力があれば、王女という立場であっても逃げることは難しくないはずだ。


「私はミアスのいる所に逃げようと思っていたんだ」


 だが、ミズキからは思わぬ返事が帰って来る。


「……それだけ?」


「何を言う。私は、お前の姿を見て逃げる先はここだと決心したんだ。お前の元ならば、私は普通でいられる、そんな気がした」


 真剣な眼差しで、胸元に手を添えながらミズキは語る。


「そんな気がしたって……ふわっとした理由だな」


「無理もない、いきなりこんな話をされても困るだろう」


 ミズキには、もっと色々と考えがあるものの、軍が見ている分、あまり説明に時間をかける訳にも行かないため、どうしても簡潔で納得のしずらい説明になってしまう。


「……それで? 俺たちの村に来たいのか?」


「行きたい! ……が、私のこの力は怖いだろう?」


 ミアスの問に、希望に溢れた声で返事をするものの、すぐに表情を曇らせる。


「私の力は昔から化け物と恐れられてきた、だから、国王は私に魔法による呪縛をかけている。場所も、力も丸わかりだ」


 その答えでミアスはなんとなくだがミズキのしたいことが分かった。


 まず、ミズキの希望は普通に生きること。そして、そのためにはミアスのところに逃げてくるのが最善だと何故か考えている。


 だが、国に黙って抜け出してきても、村に軍が来て戦闘になるのは間違いない。そこで、国の行動として来たわけだ。


 ただ、その後がミアスにはよく分からない。


「こっからどうするつもりだ? ミズキがこの村に寝返ったら、どっちみち国から軍が来るよな?」


「うむ。大丈夫だ、策はある。全部蹴散らせばいい」


「はぁ?! 待ってくれ、本当に意味がわからん」


 村に軍が来て戦闘になることを危惧して、単独で逃げてくることを諦めたと考えていたのに、軍を倒せば解決ということになるのは意味不明だった。


「この村の実力なら大丈夫だ。正直、獣王国との戦争が本格化しそうで、軍には余裕がない。ろくな戦力はまわせん」


「実力をみるために、俺たちにしかけたのか?」


「それもある。あとは……私の力を見たあとでも話を聞いてくれるのかどうか試した。すまない。だが……私としてはそこがとても重要だったのだ」


 少しずつ、ミズキの考えがわかってくる。だがそれは、あまりにも身勝手で、自分の願いを叶えるためだけに周りの全ての生命を巻き込むという暴挙とも言える。


「……ミズキ、勝手すぎる。ミズキがミアスのところに逃げたいっていうのも、そのために色々と考えてたのもわかる。だけど、それはこの村のことも、ミアスの事も何も考えてない。そうでしょ?」


 ここまで黙っていたアイラが、ミズキに問いかける。その表情はとても厳しい。


「……たしかにそうだ。私は、私の願いを叶えるただそれだけのために動いている」


「そう、だから自分勝手。自分勝手な人を簡単には受け入れられない」


「そう……だな」


 アイラの言うことを聞いて、ミズキは力なく答える。彼女自身、勝手がすぎる行動という自覚はあるのだろう。


「拒絶されたら、どうするつもりだった?」


「邪魔するものを殲滅して、この村に来る」


 ミズキは即答する。


 そのやりとりで、アイラはある程度納得したのか、少し不満げな表情を残しながらも引き下がる。









ミズキ自身、自分が何をしたくて、どんな行動を取ればいいのか、よくわかっていません。そんな心の様子が、少しでも伝わってればいいなと思います。


お読みいただきありがとうございました。


これからも毎日更新がんばります。よろしくお願いします!

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