戦闘開始、からのラルフリートの本気。
30話まで来ました。やっぱり毎日更新の中で一日に二話あげるのは大変ですね( ̄▽ ̄;)
ついに10万文字をこえ、なかなか読み応えのある文量になってきたかなと思います。これからもエタらず、毎日更新頑張ります!
「……ミズキ!」
空間属性魔法で出来た扉から、髪をなびかせて現れたミズキに、ミアスは苦々しい声を上げる。
「そう怖い顔をするな、ミアス。せっかくの再会だろう?」
「……再会は二人きりがよかったけどな」
「ふはは! 私もだ。だが生憎、二人きりでの逢瀬とは行かないものでな」
軽く言葉を交わしながらも、ミアスは全身に魔力を巡らせ、今すぐにでも剣を抜いて戦えるよう準備する。
それに対してミズキは余裕の笑みを崩さない。だが、ミアスの技術を持ってしても尚、勝てるというイメージが湧かなかった。
(隙がないなまじで……魔力感知を使っても体内の魔力の動きが掴めないし)
「ミアス!」
少し遅れて、ファルやアイラ、ブーデンにラルフリートといった面々も姿を現した。
登場した面々には、ひとつも同じ種族がいない。その事実にフォリア王国軍からざわめきが起きた。
「……ふむ。やはり、他種族が共生しているか」
「姫様」
「わかっている。ミアス、悪いがこの村は他種族との共存という禁忌を犯したとして、フォリア王国国王から討伐命令が出ている」
「はい、わかりました。……なんて言うと思ったか?」
ミアスは殺気を魔力に混ぜて威圧をかけると、フォリア王国軍に緊張が走る。
「そう殺気立つな。何も皆殺しという訳では無い。ミアス、お前さえフォリア王国に来てくれれば、私の力でこの村の事は揉み消してやろーーっ!」
ミズキが、ミアスに近づきながらそう言うと、ミアスの後ろから複数の殺気が放たれる。
「……愛されてるようだな、ミアス」
「有難いことにな。悪いが、俺はフォリア王国に行ったりはしない。みんなで、この村を守るって決めたんでな」
「そうか……なら、力づくでもお前を連れて帰るとしよう」
ミズキは、何としてもミアスを連れて帰ろうとしているのか、剣を抜き殺気を含んだ魔力を放つ。
剣を抜いただけでその威圧感は尋常じゃないほど高まり、ミアスやブーデンでさえ一瞬動きが固まってしまう。
その隙をミズキが見逃す訳もなく、一瞬にしてミアスの懐まで潜り込み、戦闘能力を奪うべく剣を振るおうとする。
「もらっーーむ?」
ミアスの身体に刃が届く寸前のところで、ミズキは動作を止めて、飛来した矢を切り落とす。
「ミアス君に近づくな、女」
矢が飛来した方向、そこには弓を構え、尋常じゃない魔力を身体に纏ったラルフリートがいた。
赤い髪の毛は、魔力をうけて深紅ともいえるほど真っ赤に染り、瞳にも魔力が滲んでいるのか、赤く輝いている。
「エルフか。ふむ、ミアスがとられたくないか?」
「君と話をする気はないよ!」
ミズキの問いかけをばっさりと断ち切り、ラルフリートは凄まじい速度の矢を放つ。
ミアスですら、奇襲で使われれば避けれず、正面からの攻撃でも避けられるかどうかの速度で飛んでくる矢を、ミズキはいとも簡単に斬り捨ててみせる。
(見えなかったぞ今の動き?!)
ラルフリートのおかげで難を逃れたミアスは、今のミズキの動きを、目で追えなかったことに驚愕する。
ラルフリートもまた、自身の矢を真っ向から切り捨てたことに驚きつつも、すぐさま次の矢を番え、放った。
「まだだよ、《多重矢》」
先程とは違い、武技を使うと、十ほどの数の矢が一斉にミズキへと向かう。
「甘いな」
だが、それもミズキに届く前に尽く斬り落とされてしまう。
あまりにも早い斬撃は、魔力で強化されたミアスの目を持ってしても捉えることが出来ないため、ラルフリートにとってはなにか見えない力で弾かれているようにすら見える。
「っ、なかなかやるね。なら……これは?」
ラルフリートの目が赤い輝きを放つと、ミズキの足元から急激な成長をする植物が生えてくる。
「む?」
植物はあっという間にミズキの四肢に巻き付き、体の自由を奪う。
その上で、ラルフリートは先程同様の一撃を放った。
「これで終わりだよ!」
「この程度でか? あまり笑わせてくれるな、エルフ」
ミズキはなんとか自由のきく、手首から先をくるりと回して植物の一部を切り裂く、そうして自由になる範囲を広げると、同じ要領であっという間に体の自由を取り戻し、飛んできた矢を斬り落とす。
未だに、ミズキの表情から余裕をもった笑みは抜けない。
「……化け物だね。だけど、それは僕も同じ」
弓矢ではどうしようもないと、ラルフリートは弓を手放す。
そして、ゆっくりと目を閉じ、集中を高めて一気に膨大な魔力を練り上げる。
「ほう、いい魔力だ」
「《精霊魔法》ーー《地縛》!」
ラルフリートが魔法をとなえると、ラルフリートのそばに現れた精霊が、魔力を受け取り、ラルフリートの願いに答えるべく魔法を発動する。
魔力を媒介に、精霊に魔法を発動してもらう。それが《精霊魔法》であり、その効果は同じ魔力で同じ魔法を打つ時とは比べ物にならない。
魔法によって、ミズキの周りの地面が命を持ったかのように動き出し、押しつぶすようにしてミズキの身を固める。
さすがのミズキも、地面で押し固められてしまってはいくら剣を使っても抜け出すのは容易ではない。ほんの少しだけ余裕の笑みが崩れる。
だが、ラルフリートの魔法はそこで終わりではない。まだ、膨大な魔力が精霊に譲渡されずに残っている。
「……《大地精剣》!」
膨大な魔力が精霊に譲渡されると、地面に突如10メートルを超える巨大な大地で出来た剣が生み出される。
「んな?!」
「ほう! これは見事な精霊魔法だな」
ミアスは驚きの声を上げ、ミズキもラルフリートが行う精霊魔法の凄さを褒める。
「余裕も終わりだよ! いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
身体を拘束され、《大地精剣》が自分を滅ぼすべく向かってきているというのに、未だににミズキは自分の勝ちを確信しているような表情を保っている。
それが気に入らないラルフリートは、叫び声とともに大地の剣を振るって全力の一撃をミズキに与える。
「……《王封・解除》」
剣が迫り、ミズキの身体を砕こうとする。だが、ミズキの呟きが聞こえたと思ったその瞬間、莫大な魔力と気迫がミズキから放たれる。
そして、なんてことは無い、ただ剣を振るうだけ。それだけの動作でラルフリート渾身の一撃、《大地精剣》は真っ二つに斬られてしまう。
「そん……な……」
余りの衝撃と、ミズキから放たれる強者の迫力に、ラルフリートは戦意を失い座り込んでしまう。
「どうした、エルフ。もう終わりか? 私はこの通り元気な訳だが」
村側からは、誰一人として声が上がらない。ラルフリートが放った一撃、それは自分たちでも滅ぼされる可能性が高い一撃だったのにも関わらず、ミズキは一振で防いでしまった。
その事実が、どうしようもなく絶望を漂わせていた。
どうでしたか?少し短めでしたが、ヒロイン二人の本気が垣間見えたんじゃないでしょうか!
絶望感が漂っていますが、次回の展開をお楽しみに!
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