ダイデンの用事、からの二つ目の魔境。
そろそろ10万文字も近いですね……!ここまで続けてこれたのも、読んでくださる皆さんのおかげです!
今後ともよろしくお願いします!
《水属性魔法Lv1》を獲得しました。
《空間属性魔法Lv1》を獲得しました。
魔境での探索を終えたミアスとミズキは、案外あっさりと解散を済ませ、それぞれの帰る場所へと戻って行った。
ミズキ達を警戒し、少し遠回りをしながら村に帰ったミアス達。
無事に魔境の探索を終え、敵となるかもしれないフォリア王国との王女とも友好的な関係を築けたというのに、ミアスは村に帰ってからあまり浮かない顔をしている。
『……主。阿呆みたいな顔をしてどうしたのだ』
「阿呆みたいとは失礼な! ファルこそ、可愛い翼つけてどうしたんだよ」
『可愛くないわ! まったく……あの女が気になるのか?』
挨拶がわりに軽口を叩くと、ファルはミアスの悩む原因が思い当たったのか、少し呆れたように尋ねる。
「……別に」
『主は表情によく出る』
明らかに図星をつかれた顔をしているのだが、ミアスは違うと言い張る。
「フォリア王国は他種族に対して排他的な考えを持つやつがほとんど、ましてや王女の中にあんな奴がいるとは思わなくてさ」
『まぁ、考えの柔らかいヒューマンではあったな。だが、主がそこまで悩むのも珍しい』
「悩んでんじゃねぇよ。ただ……なんかな」
少し誤魔化しながら、ミアスは立ち上がってファルに笑いかける。
『……ふむ。それで、何の用かという話だったが、ダタラの里長、ダイデンが探していたぞ』
「ダイデンが? わかった。伝えてくれてありがとな」
『うむ、それでは我は村のものと山菜を取りに行く予定があるのでな』
要件を伝えると、ファルは翼をパタパタと動かしながら村の方へと戻っていく。
ミアスは、そんなファルの後ろ姿を眺めて呟いた。
「……やっぱりファルが一番村に馴染んでるな」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おお! 来たか!」
村の中で、ダタラ達のために作られた区画がある。
そこは、ダタラ達の技術を存分に発揮できるよう、なによりも鍛治施設の重要度が高い。
そのため、その区画に足を踏み入れれば鉄を叩く音が常に響き、小屋の中からはダタラ達の怒号が聞こえてくる。
「相変わらず怒号が響き渡ってるな、ここは」
「がはは! ダタラは鍛治と酒には手を抜かねぇんだなぁ! だから気合が入っちまうのよ!」
手を抜かないが故に、下手な仕事をしているものは許されず、時には怒号だけでなく身体に教えを叩き込むこともあるのだった。
今もまた、ミアスの視界に殴られて吹っ飛ぶダタラが目に入る。
彼は一体何をしたのだろうか、ミアスは微妙な視線を向けながらその光景を眺めるものの、殴られたダタラはすぐさま起き上がり仕事へと戻っていった。
「……仕事熱心なのはいいことか。で、俺を探してたって聞いたけど?」
「おお! そうだそうだ。ちょっと鍛治についての話があってな。まぁそこ座ってくれや」
ダイデンはそう言って小屋の奥、休憩室のようなところにミアスを案内する。
そしておもむろに木箱から酒を取り出し、ミアスの前にも盃をおいて注ぎだす。
「酒かよ!」
「ダタラからしたら水と変わらねぇ強さの酒だ!」
「まぁいいか……」
酒精が弱い酒はダタラからしてみれば水と変わらないらしい。ダイデンは勢いよく盃に並々に注がれた酒を飲む。
ミアスも何を言っても無駄だと思ったのか酒に手をつけた。
「んで、鍛治の話しだっけ」
「おお、そうなんだ。まずよぉ、お前さんは鍛治についてどれぐらい知ってる?」
「んー、鉄を溶かして、目的の形に叩いて伸ばす」
鍛治について聞かれたミアスは、なんとなくのイメージを答える。
「まぁ、間違っちゃねぇな。もう少し細かく説明してやる。ついてきてくれ」
さっき休憩室に来たばかりなのに、早速ダイデンは立ち上がり、スタスタと案内していく。
「ここは製鉄をする場所だ。多々良を使った製鉄をしている」
「多々良……あぁ、空気を送り込んでる奴か?けどなんか……魔法か?」
多々良と呼ばれる、炉に空気を送り込む部分からミアスは魔力を感じていた。
「魔法が一番効率がいいからな。風属性魔法持ちは少ねぇから大変な仕事なんだがな」
ミアスは鍛治を行うのに魔法を使っていることに驚いていた。
鍛治といったら職人の手仕事というイメージがあり、魔法で行うというのは想定外だった。
だが、考えてみれば多々良を踏んで空気を送り込むよりも、魔法を使いながらの方が圧倒的に楽に済む。
しかも、魔力感知で細かく見てみれば、魔法で行ってるのは風の増幅のみ。そもそもの風を送り込んでるのは人力であり、その風を増幅させる魔法のため魔力の消費がとても少ない。
「魔法を使ってるのが意外か?」
「ちょっと意外だったけど、考えてみれば納得だな。魔力の消費が少ないように考えられてるし」
「お、さすがだな。そこに気がつくとは。炉の方でも火力の調整に魔法を使うこともあるし、金属の操作には《鍛治属性魔法》ってのを使うこともある」
「《鍛治属性魔法》?」
「そうだ。これを使えるかどうかで鍛治の仕事の幅が大きく変わる。まぁ、ダタラであっても中々手に入らないんだがな」
「そうなのか、ちなみにダイデンは持ってるのか?」
「ったりめぇよ!ダタラの里長は鍛冶師として最も優れた者がなるんだぞ、持ってねぇわけがねぇ」
里長であるダイデンは当然、《鍛治属性魔法》スキルを持っていた。
ミアスの問に、ニヤリとした顔で答える。
「それでよ、用っていうのは炉に関することなんだが」
「ふむふむ」
「簡単に言うと、鉄がねぇ」
「めちゃくちゃ根本的な話だった!」
思った以上に深刻で根本的な用件だったとミアスは驚く。
「前の里にいた時は、里の地下に鉱脈があったんだが……今はオーク達に占拠されてるだろうし採りにいけねぇ」
「そうだな。近くに鉱脈は?」
「ある。だが、そこは魔境になってる上に、近くにはコボルトの住処がある。攻撃的な種族じゃあねぇんだが……」
「?」
その先の言葉を言いずらそうにダイデンに、ミアスは不思議な顔をする。
「……ケチくせぇんだ。あいつら」
「はぁ? ケチくさい?」
「そうだ、とってもいいが持ち帰るのは質の悪い鉄鉱石のみ、ほかにも入場料として鉄を置いてけだの、訳の分からんことをいうんだ」
鉄を取りに来た連中に対し、入場料として鉄を置いてけという極端なケチくささを持つコボルトの話をする。
「ケチ臭いってレベルを超えてないかそれ。にしても鉄がないのは困るよなぁ」
「困る。それに魔境の鉱脈には魔鉄やミスリルなんかの希少金属もあるからな。ぜひとも確保して欲しい」
「なるほど、それが用件ね。わかった、何人か連れて行ってみるよ。空間属性魔法も使えるようになったしな」
「空間属性魔法だと?」
「そう。ほらな?」
疑いの視線を向けるダイデンに、ミアスは実際に空間属性魔法をつかい、何も無いところから食べ物を取り出してみせる。
「がはははは! やはりとんでもないな、お前さん! それじゃあ鉄のことはたのんだぜ!」
「任せろ、帰ったきたら鍛治属性魔法教えてくれよなー!」
そう言ってミアスは、村の発展にかかせない金属をとりにいくため、新たな魔境へと向かうのだった。
ダタラ達との絡みはなんだかんだであまり無かったので、今回はそれが主体のお話でした!
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レビュー書いてくれてもいいんですよ?|´-`)チラッ




