驚きの空間、からのファルとアイラの戦い。
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洞穴の中に踏み出すと、中には綺麗な砂浜と、青く輝く海が広がっていた。
「……は?」
「……え?」
『……訳が分からん』
アイラ、ファル、ミアスの3人はそのあまりの変化に絶句する。
さきほどまでは森林の中にいたのにも関わらず、一歩洞穴に足を踏み入れた途端、常夏の南国のような光景が拡がっていたからだ。
「……凄すぎだろ。見た目だけじゃなくて気温とかも変化してる。本当に環境から変わってるんだな」
「凄い。あんなに広い水溜まり見たことない!」
海を初めて見たアイラは先程までミズキを警戒していた態度とは打って変わってはしゃぎ回る。
『あれは海というものだな。……魔力の反応があるな』
「それも沢山だな。けど……この空間、見た目より狭いぞ?」
ミアスとファルは魔力感知で空間を探る。
海はどこまでも続いてるように見えるものの、実際はそこまで広い空間ではないようだった。
「どうだミアス。初めての魔境の感想は」
「凄いの一言だな。ここまで激変するとは……」
「魔境の中は別の世界と言われる……にしても、この魔境は変わってるな」
後から入ってきたミズキが、空間を見渡して不思議そうな声を上げる。
「そうなのか?」
「王国にある魔境は洞窟のような見た目で階層があるダンジョンタイプが多い。だが、ここの見た目は一階層のみ。そして閉鎖された空間……巣だな」
魔境にも色々なタイプがあると説明した上で、いまいる魔境は巣だとミズキは考える。
「巣?」
だが当然、そんな知識をもちあわせている訳では無いミアスは巣という言葉を聞き返した。
「こういう階層のない閉鎖された魔境は、なんらかの生命の巣となっていることが多い」
「なるほど、他にどんなタイプの魔境があるのか聞きたいところだけど……あんまり悠長に話す時間はないかもな」
魔境の話に興味が止まらないものの、海の中、奥底にある大きな魔力の反応を捉えたミアスはそう告げる。
「そのようだ。どうする?ミアス。私たちが戦ってもいいが」
ミズキもその反応を捉えたのか、ミアスにそう尋ねた。
「いんや、俺たちだけでやるさ。どんなのが出るか気になるしな。ちなみにどんなのが出てくるとかわかるか?」
「わからん。なにせ魔境は新種族の宝庫と呼ばれるほど、既存の種族が出てこない。ここの巣の主もまた、新種族の可能性が高いというわけだ」
「なるほど、ますます何が出るか楽しみだ。ファル、アイラ!やるぞー!」
「頑張る」
『我も頑張るとしよう』
ミアス達は海に近づき、戦闘態勢をとる。
ミアス達の身体能力は魔力で大きく強化され、盛れだした魔力が水面を激しく波立たせた。
「……ほう」
その様子を後方から眺めるミズキは、その戦闘能力の高さを理解し、感嘆の声をあげる。
「あれほどの魔力?! ただの旅人とは思えませぬ!」
「いいではないか、今は。奴は旅人。ふふふ、おかしなものだな、竜に、獣族の混ざった少女を連れてフォリア王国の国境を越えれるわけが無い。かといって、他種族を家族と呼ぶ旅人などがこの国から生まれるわけが無い。となれば……この前の報告」
「この前の報告……? 騎士団から上がった開拓村のことですか?」
「ふふふ、気になるところだな。他種族との共存を図る村。そしてその村の付近で他種族を家族と呼ぶ旅人とは。よいか、この戦いで情報を集めておけ」
「「はっ!」」
ミズキは最初からミアスの事をまともな存在だとは考えていなかった。だが、その魂に悪心や邪心が無いことがわかっていたために、こうして行動を共にしていた。
ミアスが、フォリア王国に害のある存在なのかどうか。そして、自らの道を阻むのかどうかを見極めるために。
そんなミズキの視線を感じながらも、敵意や殺意が混ざった視線ではなかったため、ミアスは海の底からあがってくる存在に集中する。
『グアアアアアアアア!』
空間全体を震わせるほどの絶叫と共に、ファルの倍ほどはあろう巨大なカエル型の生命が現れる。
カエル型といっても、全身は鱗でおおわれ、背中やエラのような部位には見るからに猛毒言った汁を垂れ流す針がつきでており、爪や牙も鋭く、簡単に命を奪える形をしていた。
「でかっ!」
ミアスはその生命を見て、素直な感想を吐き出しながら久しぶりの《解析》スキルを使う。
《解析》スキルは、無機物などにはある程度の効果を発揮するものの、本質は魂に作用するという所にあるため、生物に対して使ってもあまり多くの情報を得ることは出来ない。
だが、名前くらいはわかるだろうという想定でミアスはスキルを使った。
「ハイエストフロッグ・イディオス。ランクは……8?! 想像より強いな!」
解析スキルが予想よりも高いランクを出してきたことに驚くミアス。
「これは……出し惜しみしてたらやばいかもな。ミズキに見られるのは微妙だけど……」
フォリア王国の王女の前で、全力の戦闘をするのは不味いと考えていたミアスだが、ランク8の敵が現れてしまってはそうもいかない。
ファルとアイラの安全を守るためには全力を出さなければいけなかった。
だが、そんなミアスの心情を、アイラとファルは理解していた。
『主!ここは任せてくれはしまいか?』
「ファル?けどランク8だぞ?」
「大丈夫。森喰竜も倒せた、だから俺とファルを信じてミアス」
「……わかった。他の寄ってきてるやつは俺がやるから、デカいのに集中してくれ」
ファルとアイラの希望に、心配そうな声を出しながらミアスは渋々納得する。そして、ハイエストフロッグの他にも陸に上がろうとしてくる生命の相手をするべく、両手に炎の槍を作り出す。
「ありがとう、ミアス。行くよ、ファル!」
『うむ。行くぞアイラ!』
自分たちの事を心配しつつも信頼してくれたミアスに答えるべく、いつに無いやる気を出す2人。
『グアアアアア!』
そんな2人に、ハイエストフロッグは大きく開けた口から紫の液体を撒き散らす。
アイラは体の動きで液体を避け、ファルは鱗の防御力に任せて、液体を諸共せずハイエストフロッグに向かって突撃する。
『喰らえ、《炎砲》!』
そして、口の中に貯めた炎を圧縮し、ミアスの《炎砲》と同じ魔法を放つ。
同時にブレスを放つことにより、ミアスの魔法以上の推進力を持った炎の弾丸は、ハイエストフロッグの顔面を直撃し大きな爆発が起こる。
『グアァァァァァァァァァ?! グゥ……ガァ!』
直撃したものの、ハイエストフロッグに対したダメージはない。だが、その一撃でスイッチが入ったのか全身から怒気を含んだ魔力を放出し、身体中から紫色の粘液を出した。
『ぬぅ、あれでは炎が通らんな』
「じゃあ私がやる」
粘液のせいで炎が通りずらくなったため、ファルの代わりにアイラが距離を詰める。
だが、ハイエストフロッグがいるのは海。体が大きいからこそ体が見えているものの、アイラが直接攻撃するためには海上に出ていかなければならない。
「……《魔力壁》」
アイラは小さく呟き、海上に小さな魔力の壁を作り出す。
しかし、その壁の向きは水平であり、アイラはその上に飛び乗り、足場として使うことで海上にも関わらず一気にハイエストフロッグへ距離を詰める。
「……《一閃》!」
そして、肉薄と同時に身体能力を最大まで強化し、一撃を放つ。
ハイエストフロッグの脳天を叩くその一撃は、いかに大きな身体と、粘膜を持ってしてもそれなりのダメージになったのか、ハイエストフロッグは呻き声をもらす。
「まだまだ。《山穿》!」
呻き声をあげたハイエストフロッグに更なる一撃が降りかかる。《一閃》の速度が上乗せされた一撃で、アイラに大きな手応えを覚える。
「やった?」
『グァァァァ!』
手応えに対して、ハイエストフロッグへのダメージは致命的なものではなかったのか、頭上にいるアイラを飲み込もうと大きな口を開ける。
「やばいかも……」
アイラは再び空中に魔力壁を作って逃げようとするものの、連続で武技を放った反動で魔力制御が上手くいかない。
だが、アイラが大きな口に飲み込まれる直前、ファルの放った炎放がハイエストフロッグを直撃し体勢を大きく崩したために、アイラはなんとか逃げる。
「助かった、ファル」
アイラ、ファル主体の戦闘回ですね!
ミズキたちの思惑やいかに?!次回もお楽しみください!
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