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いざ魔境、からの王女様。

書き溜めに向けて少し短めが続きます。

 ブーデンとジャゴラに村を任せ、ミアスはアイラとファルを連れて魔境へと向かった。


 ブーデンから聞いていた場所へ行くと、急にあたりに静けさが訪れ魔力が濃くなる。


 森の中なのにも関わらず、生き物の気配が一切ない。そして、濃厚な魔力は小さな洞穴から溢れ出ていた。


「これが魔境か」


「変な感じ。魔力が濃い?」


『……不思議な気配だな。魔力感知でも中がどうなってるのか分からん』


 3人そろって洞穴を覗き込むものの、中はなにかの力が働いているのか、様子を見ることは出来ない。


「んー、とりあえず入ってみるーー?! アイラ!ファル!」


 入ってみようとしたところで、この異様な空間に侵入者が入ってきたことをミアスは感じる。


(この空間、外の様子を魔力感知で感じ取れないのか! 気づかなかった……)


 空間に入ってきたのはヒューマンの4人組、向こうもこの空間に入るまでミアス達がいると気づかなかったのか、驚いた表情をすると同時に武器を構える。


()()お下がりください!」


 4人の中で、唯一の女性を囲むようにして残りの3人が前に出る。


「待て待て。見た目は怪しいかもしれないが、別にいきなり襲いかかったりしないから」


「ぬぅ、信じられるか!そのような竜を連れて!」


『……我がどうかしたか?』


「「「喋った?」」」


「……ほう」


 まさか喋るとは思わなかったのか、武器を構えた男達は驚きの声を上げる。だが、唯一の女性は興味深そうにファルを見つめる。


「よい、下がれ」


「ひ、姫?! 得体の知れぬ連中ですぞ!」


「良いと言っているのだ。まったく、ヴラート、お前は頭が硬すぎる」


 姫とよばれた女性は、凛とした声で男達をさがらせ、隙のなく、無駄のない優雅な動きでミアスに近づいていく。


「私は、フォリア王国第四王女。フォリア=アルシア=()()()。不思議の存在よ、お前の名は?」


「ミアスだ。まさかフォリア王国の王女様だとは……にしても、なぜ俺が不思議な存在だと?」


 ミズキ、という名前にどこか懐かしい感覚を覚えながらミアスは自己紹介をする。


 王女という立場を名乗ったのにも関わらず、ミアスが特にかしこまった様子を取らない事に男たちは明らかな不快感を示す。


 だが、ミズキはさらにミアスに興味を持ったのか金に煌めく長い髪の毛を軽く振り払い、もう一歩ミアスとの距離を詰めながら答えた。


「……私の目は少々特殊でな。お前の魂はおかしい。だが、見た目はヒューマンか、いずれにしても近種だろう?だから不思議と言ったんだ」


「魂を見れるからか……なるほど」


 目が特殊と言われたためか、ミアスは手を伸ばせば簡単に触れられる距離まで近づき、目をのぞき込む。


 真っ青な目の中に、深紅の輝きが籠った力強い目を。


「……ミアスといったな。ここへ何しに来た?」


「同じ質問をしたいね。一国の王女様が3人……いや、5()()か?たったそれだけの護衛で獣王国との前線間際に来るなんておかしいだろ?」


 ミアスが5人といったことで、ミズキの影から微かな魔力の乱れが起こる。


「……()まで気取るか。これではフォリア王国の暗部も形無しだな。」


 ミズキは自身の影に潜む存在にも聞こえるよう、そう発言した。


「それで?どうなのだ、ミアス」


 まだ自分の質問に答えていないと、ミズキはミアスに今一度尋ねる。


「何者……難しいな」


(フォリア王国の騎士殺しちゃってるし……開拓村を独立させてるから完全に敵だよな。ここは誤魔化しておくか)


「どうした?言えんか?」


 ミアスが言い淀んでいることが分かったのか、ミズキは軽く剣に触れ、好戦的な笑みを浮かべた。


「いや……まぁ、出自は細かく言えないけど、旅人だと思ってくれればいい。この2人はアイラとファル。家族だ」


「……ふむ、そういうことにしておこう。だが、竜と家族というのは……フォリア王国では考えられんな」


「そんな問題ではありません姫!禁忌ですぞ!他種族と家族になるなどと」


 先程ヴラートと呼ばれた男は、ミズキの言葉に食ってかかる。


 余程フォリア王国の他種族を排他する考えが染み付いているのか、今にもミアスに斬りかかりそうな勢いだ。


 そこまでしつこく不快感を出されると、無闇矢鱈に攻撃したり、他者を害す気はないミアスであっても、少しヴラートに敵意が湧いてしまう。


「……別に俺はフォリア王国の国民じゃない。どうしようが勝手だろ」


 少しだけ、威圧しながらそう返すものの、ヴラートは怯んだ様子を見せることはない。


「……関係はある。国民ではないにせよ、他種族を家族と称するものが国民の目に止まれば異端な教えが広まるかもしれん」


「やめろといった。ヴラート! ミアスにはそんな考えはない。私の()に誓ってな」


「……御意」


 ミズキが改めて注意すると、ヴラートは渋々ながら引き下がる。


「そこの女子は?ヒューマンではないな?」


「……」


 アイラはミズキを警戒しているのか、ミアスの陰に隠れて、ひょっこり頭を出しながらミズキを観察する。


「アイラ?そっちの男が怖いのか?」


「男はどうでもいい。女はやだ」


 微妙に頬を膨らませながらミズキを睨みつけるアイラ。


 アイラにどうでもいいと言われたヴラートが若干ダメージを受けつつも、ミズキはアイラの視線を真正面から受け止めた。


「……ふむ。アイラと言ったか。幼いな!心配するな、ミアスをとったりはせん!ふははは!」


 アイラが自信を睨みつける理由が、嫉妬やヤキモチに近い感情だと理解したミズキは、アイラの可愛らしさを褒めつつ、大きな笑い声をあげる。


「むぅ。やっぱりこの女嫌だ」


 ヤキモチを妬いているのがバレたからなのか、アイラはほんのり顔を赤くしながらファルの背中へと顔を埋める。


 その様子を、柔らかな笑みで見つめるミアス。


 彼の中ではアイラは女性と言うよりも妹や娘といった立場に近いため、ヤキモチを妬いてる姿を微笑ましく眺めていた。


「アイラはヒューマンではないとだけ言っとくかな。あと、俺たちが魔境に来たのは単なる好奇心だ」


「なるほど。旅人ならば好奇心で行動する事に不思議はないな。私はそうだな……ちょっとした任務でこの魔境に来た」


「任務ね。それで?俺たちが入ることに問題あるか?」


 ミアスにとって今気になるのはそこだった。好奇心で魔境に来たらいいものの、フォリア王国の王女なんかが出てきてしまっては、魔境に入るという行為がフォリア王国と事を構えるような事態になってしまうかもしれない。


「……未発見の魔境という扱いであったし、フォリア王国にこの魔境の所有権はない。よってミアス達を拒む理由はない」


「じゃあ入ってもいいんだな?よし、行こうぜファル、アイラ」


 問題がないと知るや否や、即座にミアスは魔境に入ろうとする。


 多少、ミズキという存在に興味はあるものの、このまま話していれば開拓村の元村人達を率いる長だとバレかねないからだ。


 もしかしたらもう既にバレているかもしれない。税の取り立てに来た騎士達はもう既に報告を済ませているだろうし、ミズキのような王族の耳まで情報が届いている可能性は高い。


「待て、ミアス。魔境に入るのはいいが、私達も同行しよう」


「姫様?!」


「いいだろうヴラート、私の数少ないワガママというものだ。姉上に比べれば遥かに少ないな」


「そうではありますが……このような得体の知れないものたちと同行するなど」


 ヴラートはミアス達との同行に反対するものの、ミズキは既に決定を変える気はないようだった。


「良いな?ミアス」


「……わかった」


「凄まじく嫌そうな顔だが……」


 ここで断れば、さらに面倒なことになるかもしれないと感じたミアスは、嫌々ながらもミズキの同行を受け入れる。


「それでは、行くとしよう!」


 こうして、フォリア王国第四王女、フォリア=アルシア=ミズキとの奇妙な魔境探索が始まったのだった。

アイラに続き、第二のヒロイン登場かもですね。


世界観についての質問や、好きなキャラ、スキルなどがあればぜひ、感想で聞かせて欲しいです!


よければ、下部リンクの小説家になろう勝手にランキングを踏んでいただけると嬉しいです。

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