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生命の誕生

第1話、早速ブックマークを頂けてとても嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。

「んー、進化したけどなんか変わったか?魔力は少し増えたような気がする」


 進化し、生命としてのランクも上がったことで彼は一つ上位の生命体となった。だが、それでもレッサードレイクの成体以下であるし、いまだに形も安定していないのだが。


「姿は……体表がちょっと落ち着いたか?進化して竜に近づいたからっぽいな。あと気になるのは……炎属性魔法。これだな」


 彼は卵を吸収、同化したことで手に入れたスキルである炎属性魔法を早速使う。

 この世界に生まれて数時間なのに、何故か彼はスキルのシステムを素直に受け入れ、使い方もよく分かっている。

 だが、彼自身それを疑問に思うことは無い。本能よりももっと奥、魂の内側の問題だからだ。


「……おお!火が出た!火が出たぞ!!」


 自分の中にある魔力を、炎に変換することで手のひらに小さな炎を作り出す。


「炎熱耐性スキルのおかげが熱くはない。それに魔力の消費もそこまで激しくはないな。にしても……火を見てると何故か食欲が湧いてくる」


 炎と調理が結びついたからなのか、それとも進化したことで物質を取り込んで栄養を取れるようになったからなのか、彼の中に食欲が湧く。


 きょろきょろと周りを見渡し、何か食べれそうなものがないか探してみるものの、周りにあるのは木や草ばかりで果物の類や、捕まえれそうな生物は見受けられない。


「……あ、卵あるじゃん」


 一通り探したところで、先程吸収した卵の他に、竜岩の中に卵があることを思い出した彼はすぐさま残りの卵を集め、小さな枝や燃えやすそうな藁などに火をつける。


「よしよし、そしてこれを焼いて……ちょっと待てよ?これって有精卵だから中身の状態によって調理の仕方を変えなきゃ行けないんじゃ?」


 卵を火に当てようとしたところで、そんなことを思いつく。

 だが、彼の倫理観のような部分は、この世界に来る途中で変化してしまったようで口に入れば全て同じと、卵に殻ごと1本の木の枝を突き刺し、火の上に焚べる。


「……いい匂い。これ殼割った方が良かったか?」


 これから出来る、この世界初の料理を楽しみにしていると、彼の魔力感知に何か大きな反応がひっかかる。


「なんだ?なんか……すごいスピードで近づいてきてるやつがいる。方向は……あっちだな。あ、あれだわ絶対。あの土埃と木の倒れ方的に間違いなくあっちから来てる」


 気を薙ぎ倒し、土埃をあげるような巨体と速度の何かが近づいてきてると言うのに、彼は未だ冷静に状況を見ている。


「……生き物だよな?……ってことは、()だよな?!」


 彼はまさかの理由でこの世界初の戦闘を決意する。魔力の反応は明らかに自分よりも大きいにもかかわらず。


「一直線に来るみたいだからな……狙いはつけやすい」


 体内の魔力を操作し、拙いながらも手のひらに炎の塊を創り出す。


「3……2……1……今!」


 彼の声と共に、手のひらに創り出された炎の塊が、木々を薙ぎ倒し森から抜けて来たレッサードレイクに向かって、一直線に打ち出す。


 《『炎熱耐性Lv2』、『魔力操作Lv2』、『炎属性魔法Lv2』に上昇しました。》


『ギャア?!』


 卵をとられた上に、それを調理しているとわかったレッサードレイクは、自分よりも小さな魔力目掛けて、怒りに身を任せて突き進んでいた。そのためまさかその敵が反撃として魔法を打ち込んでくるなどとは思わなかった。


 彼の手かは放たれた炎の塊は、レッサードレイクの頭に見事直撃し、彼が思ってた以上の勢いで爆発する。


 だが、『炎属性魔法』や『炎熱耐性』は元々レッサードレイクの卵の魂を吸収した時に手に入れたものであり、その成体であるレッサードレイクにとっては大したダメージではないようで、驚き崩れた体勢を立て直す。


「やっぱり『炎熱耐性』持ってるっぽいな……じゃあこれならどうだ」


 普通に炎魔法を使ってもダメなことがわかった彼はすぐさま次の行動に移る。

 

 本来ならば、この世界の生命の成長曲線はそこまで激しいものでは無い。神も危惧した通り、この世界ではステータスやスキルのシステムがあり、神に至るほどの力を手に入れることが出来るとしても、それは何十万年に1度という想定であり、基本的にはそこまで他の世界とは変わらず、むしろ成長は緩やかといえる。

 だが、彼の魂にはこの世界を作った堕ちた神の魂が混ざっており、無意識のうちに最短で強くなる方法を理解している。そのため彼の成長曲線は緩やかなものでは無い。時には劇的な変化も訪れる。


「ははは、さっさと肉を寄越せ!」


 先程よりも、精密かつ大きな力を持った炎の塊を手のひらに創り出し、もう片方の手でその炎の一部を引き伸ばす。

 まるで弓矢のように引かれた炎は、鋭く形を変え一点を貫くことに特化した形へと変わっていく。


「せっかくだから名前でもつけようか。《炎矢》!」


 技の名前と共に放たれた炎は、高速でレッサードレイクへと向かっていく。そしてそのまま、レッサードレイクの胸元を貫く。


 あたりにレッサードレイクの悲鳴と、肉の焼けるいい匂いが漂う。


「頭を狙ったんだけどな……ちょっとズレたか。まあいい、もう一発!《炎矢》!」


『ギャアアアアアア?!』


 《レベルが上昇しました。》

 《『炎熱耐性Lv3』、『魔力操作Lv3』、『魔力感知Lv3』、『炎属性魔法Lv3』に上昇しました。》

 《レッサードレイクの魂を吸収しました。》


 頭部の吹き飛んだレッサードレイクから魂を吸収する。だが、前回魂を吸収した時とは違い、彼は魂の中に違和感のようなものを感じていた。


「なんか……同化出来てないな?それどころか出たがってる気がする……」


 《ユニークスキル『神々の祝福』が発動、スキル『構築Lv1』を獲得しました。》

 《レッサードレイクの魂の情報から新たな生命を構築しますか?》


「おー、なんというご都合展開。さすが神々の祝福ってスキルなだけある。まぁせっかくだからやってみよう。構築を選択」


 《構築スキルにより、レッサードレイクの魂の情報から新たな生命を誕生させます。》

 《『神々の呪い』スキル、『混沌』スキルが発動。竜神の欠片が分離、レッサードレイクの魂に同化を試みます。》


「ん?なんか色々おかしくないか?」


 《『神々の祝福』スキルが発動。レッサードレイクの魂と、竜神の欠片の同化、及び融合が完了しました。》

 《新たな生命、ニアドレイクが誕生しました。》


 様々な神々の意思が混ざり合い、この世界にまた、あらたな歪な生命が誕生する。


『グハハハハハハハ!我、復活!!!!!』

「うるせぇよ!いきなり叫ぶな!」

『ぬぉ?!も、申し訳ない主よ!あれ、なぜお前が我の主なのだ?!』

「俺が生み出したからだろ!」


 竜神の欠片とはいえ、神の魂は細かくなっても自我を維持していた。そのため見た目はドレイクに近い四足歩行の竜の見た目をしていても、中身は傲慢不遜、力こそ全ての竜神のままだった。


『む、確かにそうだ……ならばお前が我の主というのも間違いではないのだな。事実、我の魂はそういう契約のもと、産み出されたようだ』


「めちゃくちゃ納得いってない様子だな」


『それはそうだろう。我は元々竜の神なのだ。それが人の子の……ん?待て、主よ。お前本当に人間か?!』


「人間……じゃないと思うぞ」


 人間と言い切りたいところだが、種族のことや魂の事、新たな生命を生み出せることなどを考えると自分のことを人間とは言いきれないようだ。


『むむむ……魂を操作し新たな生命を生み出し力……強さこそまだ貧弱だが伸び代は大いにある。うむ、ギリギリだが我の主として相応しい!』


「めちゃくちゃ上からだな!まぁいいけどさ……それで?名前とかあるのか?」


『あるにはあるが……ここは主がつけるのが道理ではないか?我は主によって生み出されたのだし』


「確かに!じゃあ……そうだな、()()()で行こう」


『うむ、ファルだな。改めてよろしく頼むぞ、主よ』


「よろしく。ちなみにファル、お前のランクと戦闘力は?」


『ランクは4、戦闘能力は……このスキルというものに慣れてない分、性格に図ることは難しいが……レッサードレイクとやらならば5体同時に相手取ってもギリギリ倒せるだろう』


 レッサードレイクの魂が元とはいえ、神の魂が入っているためか、ファルの能力やスキルは中々に高い。彼もそれを分かったのかなんとも微妙な顔をする。


「じゃあ……俺の護衛頼んだ。俺は飯食うからさ。あ、お前も食うか?」


『いや、主よ。一応その肉は我の前世とも言えるのだが……』


「……まぁ気にすんなよ」


 ファルは自身の前世と聞いても、そこまで気にせず肉を食べようとする主人を見て、微妙な感情を抱く。


『我、この主で大丈夫なのだろうか……』


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『それで、主よ。この先どうしようと考えているのだ』


「この先?」


『そうだ。神への復讐、世界の征服、英雄を目指す、色々とあるだろう』


「あー、神への復讐……はちょっと気になるところではあるな。いまいち記憶はないけど魂がそれを求めてる気がする」


『魂か……主ほど魂の主張が強い生命も珍しい』


「そうなのか?……それで、今後のことだけど、とりあえずこの世界の事を知ろうと思う。ファルもあんまりよく知らないんだろう?」


 彼がレッサードレイクの肉を食べている最中、ファルはこの世界の成り立ちや、神々ですら見捨てていることなどを彼に伝えていた。だが、ファルも彼の魂の中に、この世界を作った堕ちた神が居るとは気づいていない。


 そのため、ファルから得られたこの世界の情報はそういった漠然としたもののみで、細かい世界の事は全く情報がなかった。


「せっかくだからこの世界を知って、色々冒険とかして楽しみたい。ファルは神だからあんまそういうことした事ないか?」


『……そうだな、世界を上から見ることはあっても、世界の一部となって()()()なんてことは我はした事がない』


「よし、じゃあ当分の目的はこの世界の情報を集めて楽しむっていうのが目標だな。そうと決まれば……」


 目標を定めた彼は、最後の肉片を食べきり、徐に立ち上がる。

 頭部がないとは言え、レッサードレイクの肉体の大きさから考えると凄まじい量の肉があったはずだが、彼はなんの苦労もなく食べきってしまったようだ。


「ファル、魔力感知は?」


『出来るが、スキルに慣れんせいでかなり漠然とした情報しか得られん』


「なるほど、じゃあ魔力感知に関しては俺の方が上だな。見てろよ」


 そういうと彼は目をつぶり、魔力感知に集中する。スキルレベルが上がり、より精密に魔力を感知することが可能になったが、今回は精密さを犠牲に、広い範囲から情報を集める。


 《『魔力感知Lv4』に上昇しました。》


 彼の魔力感知はソナーのように広がり、ジャングルのような深い森の情報を得ることが出来る。

 ファルよりも圧倒的に巨大な反応もあれば、無数の反応が集まっている場所もある。

 だが、彼が気になったのは、100に満たないほどの魔力が激しく動き、その数を減らしている場所だった。


「ファル、この反応わかるか?」


『む……おお?!主からの情報が降りてきたぞ?!』


 ファルは彼の魂から生まれた存在であり、その魂は繋がっている。そのため、彼の任意の情報をファルに下ろすことが可能だった。


『これは、戦か?』


「俺もそうだと思う。行ってみないか?」


『賛成だ。主よ、我の背中に乗るといい。速いぞ?』


「それじゃあ遠慮なく」


 そういって彼はファルの背中に飛び乗る。そうして彼とファルは戦闘を行う場所へと一直線に突き進むのだった。

種族:ニアドレイク

ランク:4

名前:ファル

レベル:0

パッシブスキル

『炎熱耐性Lv4』

アクティブスキル

『魔力操作Lv1』

『魔力感知Lv1』

『身体強化Lv2』

『咆哮Lv2』

『炎属性魔法Lv3』

エクストラスキル

『炎熱化Lv1』

ユニークスキル

『混沌Lv-』

『神々の呪いLv-』

『神々の祝福Lv-』

『竜神Lv0』

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