久しぶりのスキル獲得、からの教官ブーデン。
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堕ちた神によって破壊された家を直す作業に参加しながら、ミアスはジャゴラの報告を受けていた。
「魔境が見つかったようです」
「魔境?なんだそれ、あ、お前。釘何本かくれるか?」
「もちろんです!ミアス様!」
どうやら村の周辺を調査していたところ、魔境とやらが見つかったらしい。
ミアスは釘を打ちながらジャゴラとの話を続ける。
「魔境は強大な力を持った魔物の住処とも、神の創った試練とも言われています」
「そんなのがあるのか」
「えぇ、魔境は一つ一つ独自の生態系や環境が形成されていて、比較的強い魔物が出る……あとは宝がたくさんある。と冒険者たちが言ってましたな」
「なんだ、ジャゴラも実物は見た事ないのか?」
ジャゴラの言い草から、ミアスはそう尋ねる。
「そうそう見つかる物ではありませんから、ですが、冒険者と魔境の2つは幼い男子の憧れなのですよ」
通りで楽しそうに話すわけだ、とミアスは思いながら、家の工事を続けていく。
だが、いちいち釘や材料を運ぶのが面倒になったのか、ミアスは材木に手をかざす。
「どうしたのですか?ミアス様」
「ちょっとな、見てろよ……」
ミアスは手から魔力を放出し、その魔力を操作して材木を包む。
そして、材木ごと魔力を操作することで材木を浮かせた。
《『無属性魔法Lv1』を獲得しました。》
《『魔力支配Lv4』に上昇しました。》
久しぶりのスキルレベルの上昇と、新たな魔法スキルの獲得で、格段に浮かせた材木の操作が楽になる。
そして、気分が良くなったミアスはそのまま残りの必要な材木にも魔力を纏わせ持ち上げた。
持ち上げられ材木は、設計図通りの場所に移動してしまう。
その様子を、ジャゴラと作業員たちは口を開けて見つめていた。
「これで楽になったな。みんな!今のうちに固定してくれ!」
「は、はい!」
ミアスの指示で作業員たちも動き出し、ミアスの魔法で規定の場所に置かれた材木を慣れた手つきで固定していく。
その後も、魔法を使って工事を凄まじい勢いで進めていく。
「よーし!外は完成だな!中は任せても大丈夫か?」
「はい!ミアス様」
予定よりも圧倒的に早く工事は終わり、あとは内装を整備するのみとなったため、あとは村人に任せてミアスはジャゴラと共に訓練所へと向かった。
訓練所の中に入ると、ブーデンが村人やオーク達相手に訓練を行っていた。
「そこ!体格差があんだから正面から打ち合うんじゃねぇよ!体がデカいって事は死角も多けりゃ動きもノロマな事が多い。そこを突かなきゃだめだろぉが!」
「はい!」
オークと、村人の一人の戦いを見て、ブーデンが怒号に近いアドバイスをする。
語気は強く、怒っているようにも見えるものの、指示は的確で模擬戦を行っている本人達もアドバイスを素直に受け入れる。
アドバイス通りに、ヒューマンの村人は機動力を駆使して攻撃を仕掛ける。
だが、オークもアドバイス通りにやらせる訳にもいかない。盾を駆使して防御しつつ、攻撃に合わせて盾で反撃するシールドバッシュを狙う。
ヒューマンの村人は機動力で押せないことにあせってきたのか、無理な突撃をしてしまう。
オークはそれを見逃さず、攻撃を盾で受け止めると同時に、大きな体格が持つ力で武器ごと村人を弾き飛ばす。
「そこまで!……焦りすぎだな。一方的に攻撃できてるんだからそこまで焦らなくていい、まぁ攻め方が一定だとまずいけどな。オークの方も守りを固めるだけじゃなくてフェイントとかわざと隙を見せたりして誘うべきだ。そうすりゃもっと早く勝負は着いた」
吹き飛ばされた村人とオークに改めてアドバイスを送るブーデン。
「それで、何の用だよミアス」
「気づいてたのかよ」
模擬戦を行った2人に、今後の訓練で気をつけるところを指南したブーデンは、端で見ていたミアスに声をかけた。
ミアスほどではないにせよ、魔力感知や気配で敵の位置を探ることになれているブーデンは、もちろんミアスの気配に気づいている。
だが、他の村人達やオークは気づいていなかったようで、慌てて姿勢を整えた。
「そりゃ気づくだろ、それで?何の用だよ?訓練の手伝いに来たのか?」
「魔境の件で来たんだけど……それも悪くないな。よし、ブーデン、盾構えろよ」
「はぁ?本当に手伝うのかよ……まぁいい、手伝いとはいえ模擬戦に変わりはねぇ」
まさかミアスが訓練に付き合うとは思わなかったためブーデンは驚くものの、ミアスと戦えるのならばと、笑みを浮かべながら盾を構える。
「……さっきのブーデンのアドバイスあったろ?体格差がある時は機動力で翻弄するってやつ。あれ以外にもこんな攻略法があるってのを見せるぞ」
訓練の手伝いのため、ミアスは村人達に見るべきところや、これから行う模擬戦で学ぶべきところを話す。
「……といっても、これは身体能力よりも技術に頼った戦い方だから、一発本番じゃなかなか難しいけどな。用意はいいか?ブーデン」
「来いよ」
2人とも、あえて身体強化はかけずに素の力だけでの模擬戦を始める。
2人が全力で身体強化をかければ、訓練所はもたないしそもそも村人達の参考になる戦いは出来ない。
最初に動いたのはミアス。剣を低く構えて一気にブーデンへと詰め寄る。
それに対し、ブーデンは盾を構えて動かない。盾というのは基本的に防御に特化したものであり、攻撃に使うとしてもシールドバッシュなどのカウンター技が基本のためだ。
ミアスは、機動力で翻弄する訳でも、変わった技を使うわけでもなく、ただ直線的に距離を詰めて武器を振るった。
だが、当然その攻撃はブーデンの盾に阻まれ、それどころか簡単に盾によって跳ね除けられそうになる。
しかし、ミアスが狙ったのはまさにその状況だった。
シールドバッシュの勢いに合わせて剣を引き、体を回転させながら滑り込むように盾の内側に体を入れ込む。そしてそのままブーデンの首元に刃を当てた。
「……まいった」
ブーデンが負けを認めたところで、ミアスも剣をおろし村人達からは拍手が上がる。
「こんな感じで、カウンターをさらに利用して内側に入ることも出来る。体格差を逆手にとった感じだな。まぁ今のはブーデンが俺の意図を分かってくれてたから上手くいったんだけど」
ブーデンとミアスの技術は低くない。そのため、いざ実践で今の動きを行おうとすれば、上手くいくとは限らなかった。
だが、村人達にはかなりの刺激になったようで、改めて自分の主の強さを感じたのと、まだまだ自分たちにも強くなる道があるとわかってやる気を出していた。
「俺はランク3でこれだからな、みんなももっと強くなれる」
「「「はい!ミアス様!ありがとうございました!」」」
「はいよー」
村人達はミアスに礼を言い訓練を続けていく。
「……本気でやったらあんな簡単にはいかせねぇぞ」
「わかってるよブーデン、それで、魔境が見つかったんだろ?」
村人に見せるためとは言え、模擬戦に負けたことが納得いかないのか微妙に機嫌が悪いブーデン。
だが、本気で機嫌を悪くしているためでは無いため、ミアスの質問に答える。
「周辺の警戒中にな。入口もかなり小さかったし獣王国とフォリア王国も気づいてねぇはずだ。行ってみるか?」
「ぜひ行きたい」
即答するミアス。彼の中では魔境に対して強い好奇心があった。
「お、おう。いつになくやる気だな……じゃあアイラとファルをつれて行ってこいよ」
「ブーデンは行かないのか?」
「魔境は何度かいったからな。それにあそこは人型の敵が少ねぇし……」
ブーデンは戦いが、中でも強い敵との戦いを生き甲斐にしている。だがそれは人型の敵との技術勝負が主な好みであって、それ以外との戦闘はそこまで好きではなかった。
「じゃあ、村の守りを頼んだ。なんかあったら呼んでくれ」
「魂の繋がりで伝えろってことだな?わかった」
魂の繋がりを使えば、ミアスとの連絡はある程度離れていても可能なため、ブーデンに緊急時は連絡するよう伝えて、ミアスはアイラとファルを誘って魔境へと向かうのだった。
お読みいただきありがとうございました!
次回からは魔境編です!
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