銀色の閃光、からの堕ちた神。
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「良かったのですか?騎士達を返してしまって」
「いいんだよ、この村の事を伝えてもらわなきゃ困るしな。情報が伝われば、よほど馬鹿じゃない限り俺たちのことは放っといてくれるはずだ」
ミアスに首を飛ばされた隊長を除き、村にやってきた連中は全員が降伏した。
だが、ミアスは降伏した連中をどうにかすることはなく、希望者は全員返してしまった。
「残った冒険者はどうした?」
「村を見て回っています。元々知恵のある他種族との関わりが多いからか、特に私たちに忌避感もないようですな」
騎士達は全員が帰ることを希望したものの、冒険者の何人かは村に残った。それは、ミアス達の圧倒的な実力を感じとったことから来る恐れなのか、それとも冒険者という職業が持つ好奇心なのかミアスにはわからない。
だが、ジャゴラの報告では村に危害を加えるつもりはないようだし、外の世界の事を知る冒険者という存在に、ミアスを含め、みんなが多少の興味を持っている。
「よーし、それじゃあ俺も冒険者の話を聞きに行こーー」
早速冒険者達の話を聞きに行こうとしたミアスの肩を、ジャゴラが押え付ける。
「ミアス様、お仕事です」
「……変わりに頼むよジャゴラ」
「無理です!食事の安定、あとは全員が強くなったことで人口が急上昇しているのです!それに冒険者達ももしかすれば住み着くかもしれません。村の発展計画と防壁の計画など話合うことは沢山あります!」
「えー、俺じゃなきゃダメか?」
ジャゴラの言う通り、ミアスには村の長としての役割がある。そのため本人の意思に関係なく仕事が舞い込んでくるのだ。
だが、舞い込んできたのは仕事だけではなかった。
「……?!、ジャゴラ!」
ミアスの魔力感知に強大な反応が引っかかる。そして、その存在から明確な殺意と敵意を感じ、すぐさま身体強化をかけてジャゴラを抱えてその場を離れる。
直後、銀色の閃光が会議室を貫いた。
轟音が辺りに鳴り響き、地響きと共に村中に異変が伝わる。
「ジャゴラ、無事だな!?みんなを非難させろ!」
ミアスは冷や汗を流し、遥か上空を見つめながらジャゴラに命令を出す。
普段はそこまでやる気を見せない主が、ただならぬ様子で語気を荒らげる様子を見てジャゴラも異常さを感じ取った。
ジャゴラが村人の避難に向かうが、ミアスはただまっすぐに上空を見つめ続ける。
まるで目が離せないように。そこにある何かから。
ミアスの魂が、ほんの少しの歓喜と、強烈な否定を訴えている。
「なんだ、何がいる?!とんでもなく強いのはわかる、だけどこの……感覚は……」
ミアスは、そこで言葉に詰まる。
魂が訴えかける、その感覚は、進化した時に意識が乗っ取られた時に近い。
堕ちた神。それがどうしようもなくミアスの脳裏にチラついてしまう。
そんなミアスの様子を、遥か上空すら超えて、世界の果てから一柱の神が見つめていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……これで、やつも滅びるだろう。あれは堕ちた神の魂を使い、奴を倒すためだけにつくられた存在。いかに奴の成長速度や魂の形が異常だとしても、滅びは間違いないはずだ」
神は、予想を超えて成長するミアスを滅ぼす、ただそのために、かつてミアスのいる世界を創った堕ちた神の魂に手を伸ばした。
魂の中で人格や記憶といった部分を力任せに壊し、ただミアスへの恨みを詰め込まれた機械のような存在。
しかし、その力はそのままになっており、倒された時に弱体化したとはいえ、ミアス一人を滅ぼすのにはあまりの過剰戦力だった。
「これで堕ちた神の封印に力を回さなくとも済む。もしかすればかの世界も滅びるかもしれん」
堕ちた神が創った世界、そこは神々の管轄を離れたイレギュラーな存在。その世界が滅ぶというのは、神としても望ましいことだった。
そんな、神とは思えないほど欲にまみれた願いの元作り出された存在は、はるか下界から自分を見上げるミアスに、奇妙な感覚を抱いていた。
(あの者を……滅ぼす。そのために生まれた、私は)
ミアスは、滅ぼすべき対象。だが、魂の奥深くがそれを否定している。
(……あの者と、私は同一?……否。同一ではない)
ミアスの魂の中には、たしかに自身と同じ気配を感じる。
だが、その気配はミアスの魂と同化しているため、自身と同じ存在とは言えない。
(あの者の中には……燃え盛る怒りも、深い哀しみもない。あるのは、必死に生きようという思いと、この世界を楽しみたいという希望。そして、彼の仲間に対する愛情。いたって、普通の、私が創った世界の……私が、創った?)
ミアスの魂の中身が、穏やかでなんら特別ではない、この世界で生きようという生命として当たり前のもので出来ている事を感じ取っていると、この存在は、自分の考えに違和感を感じてしまう。
(私が……創った。そうだ、この世界は、私が創ったのだ)
そして、神に壊されたはずの記憶や、人格の欠片が修復されていく。
それと共に、この存在は雲を突き破る勢いでミアスの元へと降りていく。
「はやすぎだろ?!」
(……この者は……私の魂の一部を持っている。いや、同化している。それに……他の子達もまた……この者の魂と繋がっている)
「……な、なんなんだ?!」
目の前に降りてきたのにも関わらず、微動だにしない異様な存在を見て、ミアスはこれまでに無いほど狼狽える。
目の前の存在は、ミアスがこの世界に生まれた時のように魂の形そのままになっている。
「敵……だよな?」
ミアスが話しかけても、答えは返ってこない。
(敵……私が創った世界、それならばこの者もまた、私の子。この者を滅ぼすなど……私には出来ない。この者の人格の奥深くにあるのは、寂しさなのだ)
前世の記憶はなく、魂には様々な神の祝福や呪いがかけられている。そして、その異形さ故に、無限の災禍に見舞われる人生を約束され、それと同時に無限の進化もできる、またとない存在。
そんな彼の、ミアスの人格の奥深くにあるのは、寂しさだった。
前世での存在感のなさなのか、それともこの世界にたった1人で生まれ落ちたことによるものなのか、ミアスは無意識に寂しさを感じ、それを埋めるために家族をつくり、仲間を増やしている。
(……私には、滅ぼせない)
そんなミアスの心を理解した上で、滅ぼすことは出来なかった。
「……もしもーし、聞こえてる?」
「……」
「うおっ?!人になった?」
ミアスが声をかけると、この存在は姿を変え、女性のような姿になる。そして、神の支配に抗いながらも、最大限の祝福と、慈愛を込めてミアスの頭を撫でた。
「……?」
困惑するミアスを見つめ、少しだけその状態を維持すると、その存在は再び上空へと飛び去っていく。
唖然とした表情で、その様子を見るミアス。
「わけがわからん……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「はぁ?!なぜだぁぁぁぁぁぁぁぁ!なぜミアスを殺さない!」
堕ちた神を利用して生み出した存在は、何故かミアスを倒さず、それどころか頭を撫でるなどという馬鹿げた行為だけで帰ってきてしまった。
「……はぁ、何故なのだ。魂の弄りが甘かったか?次はもう少し造りを変えてやる!」
帰ってきた堕ちた神の魂を見て、再び神はミアスを滅ぼすと決意をする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ミアス!」
謎の存在が突然現れたと思えば、ミアス様の頭を撫でるのみで他に何もせずに帰っていった。
その様子を見て、ジャゴラ達村人はおろか、アイラやファル、ブーデンも固まってしまっている。
だが、いちはやく硬直から解けたアイラが、腰を抜かして座り込むミアスに駆け寄る。
「ミアス!大丈夫?!ミアス!」
「ア、アイラ?大丈夫だ……心配してくれてありがとな」
慌てて駆け寄ったアイラは、目に涙を浮かべてミアスを揺さぶる。
ミアスはダメージを受けた訳では無いためすぐさま正気を取り戻し、アイラの頭を撫でた。
「ほんと?」
「ほんとだって、なんもされてないしな。最初の一撃は食らったら死んでたけど……」
銀色の閃光を思い出し、ミアスはぞっとした。まともに喰らえば、間違いなく死んでいたであろう一撃。
『主、無事なのだな!』
「無事だ、ファル。にしても……本当にわけがわからん。あの存在がなんだったのかも、なぜ一撃だけ撃って帰ったのかも」
ミアスからしてみれば、その存在の行動は本当に訳が分からなかった。
最初は敵意があったにも関わらず、最後には敵意どころか、暖かみのある優しさがあった。
「獣王国じゃあねぇぞ。あんなもん聞いたことも見た事もねぇ」
「ブーデン、やっぱりそうだよな?なんとなく獣王国とも、フォリア王国とも違う感じがした……」
「じゃあ、なんだよ。神様でも降りたってのか?」
「まさか」
ブーデンの冗談は、冗談ではないのだが。
ミアスは万が一そうであったら困ると思いつつ、みんなを不安にさせないよう笑って流した。
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