久しぶりの神、からのミアスの仕事。
今回は少し日常会です。
ある神域で、ミアスを転生させた神は、ミアスのようなイレギュラーが起きないよう様々な修正を行っていた。
そして、その作業が一段落し、久しぶりに神域に帰ってきたところで、ふとミアスの事が頭によぎる。
かの魂は、今どうなっているのだろうと。
だが、神であっても、堕ちた神が勝手に作った世界をピンポイントで覗くことは難しい。
「どうしたものか……そうだ、この魂を使えば……」
悩んだ神は、堕ちた神の亡骸から魂の一部を切り離す。
そして魂をこねくり回して作られた望遠鏡のようなもので、神は世界を覗く。
「……なっ?!何故こんなことになっているのだ!はやすぎる!」
神はミアスを見て驚愕する。神の予想よりも、ミアスははるかに早いスピードで成長を繰り返していた。
しかも、ミアスが魂を対象に、構築や吸収といった操作を加えられる事も神にとっては完全に想定外だ。
「擬似的な輪廻転生ではないか!しかも、彼の魂に混ざった祝福や力が引き継がれている分、通常よりも強い種族になっているだとて……まずい、まずいぞ」
神が、彼の魂をあの世界に放り投げたことはまだそこまで知られてはいない。
だが彼の魂を目撃しているものは多く、ミアスがさらに成長し、まだあの世界の中では圧倒的弱者ともいえる彼が、神にすら匹敵する生命になれば神は責任を追求されてしまう。
「どうにかしなければ……」
危機感を感じた神は、ミアスに対して対策を始める。
そして神は、堕ちた神の魂へと手を伸ばした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「うーん、いい天気だ」
神に見られているとも気付かず、ミアスは、一人草原で大の字になって寝転んでいた。
ブーデンとの戦いが終わり、ブーデンを仲間に引き入れたのはいいものの、アイラがブーデンに対抗心を燃やしたり、獣王国の中でも上の方にいたということで村人たちが納得しずらい状況になったりと、ミアスは人間関係の構築や修復に追い回されていた。
それも、10日程経ってしまえば落ち着くもので、ミアスが仲介を行わなくとも、復興を共に行い、寝食を共にしていれば自然と蟠りは薄れていく。
「はぁ……、あいつらが仲良くなって良かった」
ミアスは深々とため息をつき、問題が解消したことを嬉しく思う。
復興においては、里を救ったお礼にと移り住んできたダタラ達が技術力を発揮し、以前よりも速く、立派な建物が建てられていく。
そんなこんなで、ここのところ戦い以外の仕事に終われていたミアスは、全てから解放されたように寝転がっている。
「あー、空、綺麗だな。お、あれ竜か?なんか飛んでんなー。……飛竜の肉って美味しいかな?」
『こんな所にいたのか、主』
空を眺め、思考を停止させるミアスの元に、ファルが近づいていく。
ファルは、致命傷に近い傷を負っていたものの、ミアスの魂から治療を行うという荒業でなんとか命を繋いだ。
しかも、レベルが100になったことで進化を行い、ランク4のニアドレイクから、ランク5のニアハイドレイクへと進化している。
そのため身体はより大きく、鱗も強靭になっていた。だが、ファルにはひとつ悩みがある。
「相変わらず可愛い翼だな、ファル」
『うるさいわ!』
そう、進化したことでファルの背中には小さな小さな翼が生えていた。
おそらく、ファルの中で飛竜への憧れがあったためか、ドレイクの進化系の中に翼を持つ者がいるのかはわからないが、威厳とは程遠く可愛い翼だった。
『進化したら生えたのだ。散々アイラとブーデンに馬鹿にされたのだ……もうやめてくれ』
「ははは!ごめんて、進化を繰り返せばそのうち立派な翼になるさ」
『ぐぬ……我もそれを願っている。いや、成し遂げてみせる!』
ファルは自身の小さな翼を見つめ、今一度気合いをいれる。
「応援するよ、にしても、何の用だったんだ?俺を呼びに来たんだろ?」
『む、そうであった。復興がそろそろ終わるそうだぞ?それにあたってジャゴラが宴の開催をしたいらしい』
「あいつら宴好きすぎだろ!けどなー、料理も酒も不味いとは言わないけどバリエーション少ないしな……ただ食事して騒ぐだけっていうのも毎回だと飽きる」
『つまり?』
「改善を要求する。いつも通りの宴じゃ乗り気にならん」
『うむ、わかった。ではジャゴラに新たな宴の企画を主が考えていると伝えておこう』
ミアスに、ファルはにっこりと嬉しそうにしながら答える。
「え、ちょっと待てよファル。それだと俺の仕事が増えてないか?おーい!ファル!おいってば!」
そうしてミアスの仕事がまた一つ増えたのであった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「それで、ミアス様の希望する宴というのはどのようなものなのですか?」
新たに建築されたミアスの家に、ミアス達の中でまとめ役ともいえるミアス、村長のジャゴラ、ダタラの里の里長であるダイデン、アイラ、ブーデンに加えて村人の中で各部署のまとめ役になっている何人かが顔を合わせていた。
ファルは会議室に入れないため、外で村の子供たちの相手をしている。
「んー、そもそも今宴やる必要あるか?まだ防衛も薄いしオーク達が来ない保証もないだろ?」
ここ何日間かは平和な日々が続いていた。だが、オーク達がいつまた攻めてくるかわからない。
「まだ来ねぇよ。今獣王国には余分な戦力がねぇ、あったとしても、こっちの状況が分からない限りは迂闊に攻めてこないってもんだ」
そんなミアスの不安を、ブーデンが即座に否定する。
「……なんで睨むんだよミアス」
「なんでもない。じゃあ……やるか、宴」
どう足掻いても宴をやるしか無くなったため、思わずブーデンを睨みつけながらも、諦めて宴をやる方向に会議を仕向ける。
「はい!宴は皆の士気に繋がりますからな!新たな宴となればより効果があるでしょう!」
「そういうもんか。よし、ならしっかりやるか。まずは各自、宴への文句あるか?」
「不満ですか?」
「不満だ。改善点をあげてった方が新しくし易いだろ?俺の不満は料理、酒のバリエーション不足、あと飲んで食べてだけっていうのは飽きる。音楽とか……踊りとか追加するのはいいかもな」
ミアスはなんとなく自分の感覚で宴への不満と改善案をあげていく。
「酒と料理は俺も不満だ、獣王国を出すのはあれかも知んねぇが、この森の恵みならもっと色々出来るはずだ」
ミアスの不満に続いてブーデンも会話に参加する。
「そうですね、今までは危険を避けて森に深くに入ったりはしませんでしたが……いまなら出来ますね」
「そうだな、みんな強くなったし……あ、村人だけで行くのは危ないから俺たちの誰かを連れてけよ?」
村人の調理担当にミアスはそう返す。
「酒は儂らが作ろう!里でも多少作ってたしな!がはは!」
酒についてはダタラ達が担当すると宣言する。
「よし、じゃあ酒と料理は大丈夫だな。じゃあ次は催しだな。踊りとか音楽とか……」
「踊りですか……」
「儂らダタラの伝統芸、腹踊りがみたいか?」
「いや、腹踊りはいいよ……ブーデン、獣王国にはないのか?」
「踊りかぁ?あー武は舞に通じるってことである程度は俺もできるぜ?」
ブーデンの槍裁きで繰り出される舞踏ならば、美しいものが見れるだろう。ミアスやアイラも練習すれば可能なはずだ。
「んー、やってみるのはありだな。だけど、俺が目指してるのは……なんというか……こう、誰でも音楽にのって楽しめる簡単な踊り、みたいな?」
ミアスはそういった踊りの形態をイメージしていた。だが、ここにいる人々にそんな踊りをするという習慣はなく、ミアスの希望に答えることは難しい。
思ったよりも、自分の希望が難しいものだと気付きミアスも少し考えを改める。
だがそこで、そもそも音楽にのって楽しむのに簡単な踊りの型が必要なのかどうかという考えに辿り着く。
音楽にのるだけならば、わざわざ踊り方を考えなくとも好き勝手、赴くままに体を動かせばいいのではないかと。
「踊りはなんとかなるだろ。音楽は?」
「音楽は……ダタラの里じゃあ打楽器の演奏はしてたぞ?」
「打楽器か!いいね。ちなみにその楽器って簡単につくれるのか?」
「あー、魔物の皮を使ってるからそれさえ取れりゃあ作れるぜ!」
それを聞いて、ダタラの里長、ダイデンに打楽器の作成を頼む。それに合わせて食料調達時にその魔物の素材確保もするようジャゴラに確認をとる。
なんだかんだで、会議はミアスを中心にすることでスムーズに進んでいく。
「よし、あと、改善点あるやついるか?」
そう、ミアスが尋ねるとアイラが手を上げる。
「お、アイラ。何かあるのか?」
「ある。宴のメインみたいなのが欲しい」
「メインか、いいかもなそれ!」
アイラの提案にミアスは嬉しそうに立ち上がる。
「メイン、ですか?」
「そうだジャゴラ。例えば……めちゃくちゃ美味い魔物の料理とかあったら良くないか?」
村の現状を考えると、普段食べないような料理をメインとして提供するのがいいとミアスは考える。
「あー、それなら、森喰竜とかどうだ?この変でもいるだろうし、あれは美味いぜ」
「そうなのか?よし、じゃあメインはその森喰竜だ。他に案はあるか?うん、なさそうだな」
他に思いつく改善案がないことを確認すると、ミアス今一度みんなの顔を見回し、口を開く。
「じゃあ料理の素材確保はファルと調理担当の村人たち。森喰竜はアイラ、ブーデン、あと手が空いてるオークと先頭に自信があるやつを募集してつれてってくれ。いいな?」
こうして、新たな宴の準備が始まる。
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