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ポイ捨て、からの転生。

よろしくお願いします。

毎日更新です。


追記


お話を書くようになってから分かったことですが、評価やブックマークのボタンを押すというたった一つの行動でとても救われます。


今まで評価やブックマークにあまり馴染みがなかった方も、この作品だけではなく、ぜひ色々な作品へブックマークや評価、そして「面白い」ただその一言だけの感想でもいいので、残していただけると嬉しいです。


 ある日、大学のサークルで飲酒事故が起きた。

 亡くなったのは新入生で、周りにいた人の証言ではテンションが上がって調子に乗った結果、まわりの静止も気にとめず一気飲みを繰り返した……という事に()()()()()


『違う!あれは事故じゃない!殺人だろ?!』


 万年陰キャの俺がそんなことするはずがない。そもそも、大学デビューの連中に数合わせでどうしても来て欲しいって言われたから行った名前も知らないサークルの歓迎会だぞ?!


 しかも聞いたこともやったことも無いゲームに負け、体育会系のノリで一気飲みを強要された。そして挙句の果てには断り続けた俺を殴りつけ無理やり酒を飲ます始末。


 その結果がこれだ。


 謎の真っ白な空間。目の前には……神、だよな?


『そんなことを我に言われても仕方がない』

『だって、殺されたのに俺が悪いみたいになってんだぞ?!』

『……汝は神という存在を誤解しているようだ』

『誤解だって?』

『そうだとも。まず、汝らが神と呼ぶ存在は汝らよりも高度な生命体に過ぎない。様々な世界を飛び、汝らの言う奇跡を起こすことが出来たとしても、万能ではなく、正直言ってしまえば数え切れぬほどの数がある生命体の一つなど、()()()()()()


 え、どうでもいいのか。


『我が管理しているのは生命の死後の扱いについて。よって生命が死んでくれなければ困るのだ。そしてさらに言えば、死因は関係ないし興味もない。そもそも善悪の基準や殺人については汝らが勝手に決めたことだぞ?』


 ……よく分からないけど、要するに仕事だから情も何もないし、そもそも人じゃないんだから人の価値観で物言われても理解できない、ってことだよな?


 物分りいいな俺。


『ここは神域。雑念もなければ生命の限界値まで能力が発揮できる。……にしては弱々しいが』


 上げて落とすなよ。


『……そんな弱々しい生命の魂が、なぜ我の神域にいる?』


『え?死んだらみんな来るんじゃないのか?』


『そうだとしたら今頃ここは魂で溢れかえっている。そもそも魂になった時点で人も植物も関係なく自我を失い、新たな命への転生を待つのみだ。なのに汝は自我を残し、何故か我の神域に入ってきた』


『……何でだろうな?』


『我にも分からない。だが、ここに居られるのは困る』


『んー、そうなのか?』


 なんか思ったよりも神様らしくないな。


『……なるほど。汝の魂を調べたが、圧倒的に存在感が薄いのだな』


『は?いきなり悪口言われたんだが……』


『君たちの抱くイメージで物を言っているのではない。存在感とは魂を確立するための()だ。神域というのはその力に反応して異物の侵入を防ぐようになっている』


 存在感って力だったのか。確かに俺の人生影が薄かった……あれ?俺の人生ってどんなんだっけ?


『む?自我の崩壊……ではないな。()()()()?何が起きている?どちらにせよこのままでは……ふむ』


 神がぶつぶつと呟くと、なぜか魂だけの彼の身に激痛が走る。


『ああああああああぁぁぁ?!』


『……魂を千々にされてもすぐに元に戻るとは……存在を示す力がないのか?!なぜそんなものが……ええい、このままでは神域に溶けだし、我の魂ですら同化しかねん』


 神は、神域に存在する堕ちた神の魂に手を伸ばし、強引にひきちぎる。そしてそれを彼の魂に無理矢理混ぜ込んだ。


 すると、気体のように溶けだしていた彼の魂はひとつの歪な形に固定される。


『……とりあえずは大丈夫だろう。だがどこに転生させたものか』


 神は彼を転生させる世界を探す。だが、世界はそれぞれが受け入れることが出来る魂の形が決まっている。


ただでさえイレギュラーな魂に、堕ちた神の魂を混ぜた彼の魂を受け入れる世界などそうない。


 一通りの世界を眺め、どこも難しいことを悟った神は、ある世界へと注意を向ける。


 先程ひきちぎり、彼の魂に混ぜこんだ堕ちた神が創り出した世界。


 元はただの一生命として生まれた堕ちた神。かの神は自力で魂の殼を破り捨て、世界を作るほどの力を手に入れ神に至った。だが、勝手に作った世界など、神々が許容するはずもなく、かの神は堕とされ、作られた世界は管理者を失った。


 管理者の失われた世界は生命の制限がない。それに加え、堕ちた神が創り出した独自のシステムにより、その世界の生命体は大きな力を持つことも考えられる。


 今はほかの世界とほとんど変わらない世界でも、今後その姿は大きく変化し、悪化していくと考えられる。


 そんな世界に、この魂を放り込めば、神ですら恐ろしい結末が待っているかもしれない。


 だが、このまま神域に置いておけば自身の魂と同化し、自分が自分でなくなってしまう可能性がある。神はやるしかない。


『……一刻も早く転生させたいところだが、さすがにこのままではまずい』


 いくら保身の為とはいえ、このまま転生させる危険性を考えた神は、自身の魂の中で黒ずんだ部分を切り取り、歪な形の魂に混ぜ込んだ。


 神の魂の中でも、不幸や絶望といった負の要素を混ぜこまれた彼の魂は、更なる異形へと姿を変えていく。


『よし、これで彼の魂は不幸や絶望といった負の要素に満ち溢れた人生となるだろう』


 そういって神は未だに形を変え続けている彼の魂を強引に掴み取り、目当ての世界へと投げ飛ばす。


 投げ飛ばされた彼の魂は、既に記憶は崩壊している。だが、堕ちた神の魂が自我をつなぎ止め、負の方向に多大な影響を及ぼしながらも人格の崩壊と魂の流出を抑え込む。だが、神の魂の欠片は絶えず彼の魂との同化を拒み、形を変え続ける。


 そんな歪な魂が世界へと飛んでいくのを、多くの神が見ていた。


 一切の興味を示さない神。嫌悪感を抱き、呪いとも言える更なる不幸を与える。


 彼の魂は他にも多くの神の目に止まった。混沌や破壊を愛す神々は彼の魂の行く末を祝福し、邪神や悪神は期待を込めて力を授ける。


 そうして彼の魂は、多種多様な神々の力を受け、新たな世界へと降り立った。














『……ここは?俺はここで何してるんだ……というかそもそも俺は何だ?』


 彼は今、世界に降り立ったものの、これまでの記憶はなく、なんとかある程度の自我を維持している状態。生命体としての姿も定まらず、他者から見ればぐにゃぐにゃと姿を変え続ける不気味な物体として見えていることだろう。


 だが、彼が自分の存在が何なのかを疑問に思った時、彼の思考に色々な情報が浮かんできた。


 種族:生命の根源

 ランク:0

 名前:

 レベル:0

 パッシブスキル

『吸収Lv1』

『同化Lv1』

 アクティブスキル

『解析Lv1』

『魔力操作Lv1』

『魔力感知Lv1』

 エクストラスキル


 ユニークスキル

『無限進化Lvー』

『不老Lvー』

『無下限禍難Lvー』

『神々の呪いLvー』

『神々の祝福Lvー』

『邪神Lv-』

『混沌Lvー』


『……盛り沢山すぎる。吸収とか同化がパッシブスキルなのもよく分からないしそもそも生命の根源てなんだよ。ユニークスキルに至っては理解する気にもならない』


 色々と思考を巡らせたものの、最終的に彼はユニークスキルから目を背けた。人格を形成するのは記憶、その記憶が崩壊し、無くなっていたとしても価値観や思想は堕ちた神の魂によってつなぎ止められたため、彼の常識からあまりにかけ離れたユニークスキルを理解することは出来なかったのだ。


『うーん、どうしたものか。とりあえず……魔力とやらを感じてみるのがいいか?』


 彼は今、生命としての機能があまりにも足りてない。そのため視界どころか嗅覚や触覚といった感覚器官がほとんど存在してない。


『……お、おお?これが魔力か。なんとなくだけどわかるぞ』


 魔力を感知するという、新たな感覚器官を手に入れたことで、ある程度周りの状況を掴むことが出来る。

 この世界はあらゆるものが魔力を持っているため、まだまだLvの低い技術だとしても、漠然と魔力の大きさや距離感を感じとることが出来る。


『……なんか、ジャングルって感じだな。んー、魔力の形に、俺やばい形してないか?』


 ここでようやく、彼は自分の形がとてつもなく歪で禍々しい形をしていることに気がついた。


『これって動かせるのか?んー……おお、意外と動くな。よしよし、粘土みたいにこねて……ん?なんか硬い部分もあるな。これは内側に入れて……なんとなく人っぽく……』


 そうして彼が自分の形を変えていくと、淡く輝く半透明な人型の生き物が出来た。明らかに生命という見た目ではないが、魔力でしか姿を捉えられない彼からしてみれば、人と変わらない。


『よし!こんなもんでいいだろ。にしてもだいぶ動きやすくなったぞ!』


 人の形に近づいたことで、移動が簡単になる。


『他のスキルは……解析ってやつが気になるな。よし、解析』


 彼は目の前にある魔力の塊目掛けて解析を使用する。すると、ステータスが表示されたのと同じように彼の頭の中に情報が浮かんでくる。


『なになに?これは……()()?説明文は……火山から放出された岩石の中でも、高い熱を維持している岩石で、その熱を卵の孵化に利用する竜が多い……なるほど、通りで岩の中に複数の魔力があるわけだ』


 《『魔力感知Lv2』に上昇しました。》


 常に魔力を感知していたためか、あっという間にスキルレベルがあがり、岩の中に内包された魔力を感知することが出来るようになる。


『お、これが卵か。これにも解析してみよう……えーと、レッサードレイクの卵。ランクは0だな。これって卵だから0なのか?それとも種族のランクが0なのか?』


 岩の逆側に周り、卵を手に持った彼は何故か無性に魂に執着心を覚える。


『うーん、何だこの感覚。めちゃくちゃこの卵が気になる。食欲に近いけど……ちょっと違う感覚?まさか……』


 食欲に近い、そんな感覚に従って彼は自分の本能に()()()()()


 すると、今まで無意識のうちに押さえ込んでいたパッシブスキルの『吸収』と『同化』が発動し、卵に宿っていた魂を吸収してしまう。


 《レッサードレイクの魂を獲得しました。》

 《『吸収Lv2』に上昇しました。》

 《『同化Lv2』に上昇しました。》

 《レベルが100に到達しました。進化が可能です。》


「おー色々出てきたな……ってあれ?俺声出てる?」


 頭の中に複数のアナウンスが流れたところで、彼の体に変化が起きる。レッサードレイクの魂を吸収、同化したことによって、発声器官や感覚器官の情報を獲得した。そのため、ただ淡く輝くだけだった彼の体に目や鼻、口に似た不格好な感覚器官が誕生した。


「おー!目も見えるし鼻も利く!口もあるし……肌はなんか鱗っぽいし乱雑な感じだけど。しかし、進化が出来るとは……」


 進化が可能と言われても、彼の知識の中には進化のやり方がある訳もなく、頭の中に混乱が浮かぶ。

 だが、世界のシステムは彼のその混乱を、進化の意思有りと判断し、彼に進化先の候補を示す。


 《進化先》

 ・原初の生命(竜) ランク1

 ・レッサーリザードマン ランク1

 ・レッサードレイク ランク2


「うお?!いきなり頭に浮かんできたな。進化先の候補は3つか。……じゃあここは、《原初の生命(竜)》を選択」


 色々と彼は悩んだが、最終的には本能が求めた進化先を選んだ。


 《種族が原初の生命(竜)に変化しました。》

 《パッシブスキル『炎熱耐性Lv1』を獲得しました。》

 《アクティブスキル『炎属性魔法Lv1』を獲得しました。》


 種族:生命の根源

 ランク:0

 名前:

 レベル:0

 パッシブスキル

『吸収Lv2』

『同化Lv2』

『炎熱耐性Lv1』

 アクティブスキル

『解析Lv1』

『魔力操作Lv1』

『魔力感知Lv2』

『炎属性魔法Lv1』

 エクストラスキル


 ユニークスキル

『無限進化Lvー』

『不老Lvー』

『無下限禍難Lvー』

『神々の呪いLvー』

『神々の祝福Lvー』

『邪神Lv-』

『混沌Lvー』





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 彼が転生を果たした頃、神は神域で困惑していた。


『どうしてあれだけの呪いと祝福を共存させていられる?!それに加えて、なぜ奴の本能は力を求めているのだ?』


 神は自分が思った以上に彼の魂が危険であることをようやく認識する。


『だがまぁ……たとえ奴が神に至るほどの力を手にするとしても、それは何万年もあとの話だ。すぐに手を打たなくとも手段はいくらでもある』


 そういって神は、彼の魂のようなイレギュラーな存在が再び生まれないよう、魂に関連した神と連絡を取り、調整を行う作業へと戻っていく。


 数多くの願いや呪い、魂の欠片があつまった彼の魂は、既に神の理解すらも超えていることを、まだ神は知らない。



『レッサードレイク』

ランク2。太い手足を持ち、長い首が特徴の四足歩行の竜。レッサーと名がつくこともあり、そこまでの強さはないが、炎属性の魔法を用いたブレスを使う個体もいるため、新人冒険者の一つの壁として知られている。


『レッサーリザードマン』

ランク1。高い知能を持つ竜種として知られるリザードマンの劣等種。知能は低く、簡単な言語を用いて行動する程度。リザードマンの従属種として繁栄している事が多いが、湿地帯などでは稀に野生の群れを見かけることが出来る。


『原初の生命(竜)』

ランク1。あらゆる生命の元となる、生命の根源から竜の遺伝子が芽生えた姿。爪や牙、鱗、発熱機関などの竜として一般的な機能を身につけているが、原初の存在のため強くはない。


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