執事、故郷へ帰ります。
サバイバルが中止になり数日が経ちました。
勇者はカケル様にズタボロにされた上に殴られたことにより、心入れ替えたように訓練に参加するようになりました。
取り巻きたちは勇者の邪魔になると判断して、学園を辞めさせられ自宅にて軟禁状態です。そのため旦那様や騎士団を恨んでおられます。自業自得でございます。
ただ、勇者はカケル様の強さをするために背中を追うような感じで付き纏っています。お嬢様はカケル様から少し距離を置くようになりました。
改心したとはいえ、金魚の糞と化した勇者を見るだけで殴りたくなるそうですとお嬢様はそう言いました。
まぁわからないこともないですが。
学園は長期休暇に入ります。その後、全生徒を対象とした大会が始まります。魔法や技術を競うものですから休みを利用して訓練をしているそうです。
チーム戦と個人戦があります。個人戦は参加自由だそうです。私は内緒でお嬢様の名前を個人戦出場に書いてエントリーしました。それがバレて少し怒られてしまいました。
ですが、気を引き締めるためにやってやろうと大声で叫びました。
私はお嬢様が長期休暇ということなので、長年溜まっていた有給を消化しようと思いました。常日頃から執事長から休めと言われているのでいい機会でしょう。旦那様に告げてあるので、お嬢様にもご報告に行きます。
「お嬢様。」
「セバス。どうかしたの?」
「私、一月ほど有給を取りましたので、お世話はできません。」
「え?どこか行くの?」
お嬢様が小さい頃から常に行動しておりますので、一ヵ月と聞いた時は大変驚いております。
「里帰りでございます。」
「そう…気をつけて…。」
「一緒にいきますか?」
「え?いいの?」
あからさまにしょんぼりしているので私の口から自然と出てしまいました。
「良いですが…長期休暇中はいつものような扱いはしませんよ。」
「それくらい問題ないわ。セバスの故郷を知るチャンスだもの。興味津々だわ。」
故郷へ帰るのにお嬢様も同行することになりました。旦那様からお嬢様の同行の許可がおり、お嬢様が準備をしている間、玄関にて待っております。