執事、魔族と交渉しました。
「くっ!気づかれたか。」
「あ、貴方はいったい何者だ!」
気絶していた勇者が起きて、剣を構えて魔族にそう問いかけた。
200年前に同盟を結んだはずの魔族がなぜここにいるのか。同盟と名ばかりの不可侵条約である。
「あん?一般人は下がってな危ないから!俺はそこにいる勇者を見にきたんでな!」
魔族はカケル様に指差して勇者(笑)に言いました。
「はぁ?こいつが勇者なんだが…俺は一般人だ。」
「…ぷ…ククク。」
「リゼ…わ、笑っちゃ駄目…だ、めよ。」
お嬢様は笑ってしまいました。ミサ様はなんとか堪えていますが。
「その人たちは関係ない!僕が勇者だ!」
「いや嘘だろ?お前あっち行っとけ。邪魔だからさぁ。ほらあっち行けよ。」
魔族にすら疑われております。真顔で否定され邪魔者扱いされております。
「認めてもらえないとは…ざまぁ!」
「それは本当よ。こいつが勇者ですわ。残念なことに。」
「まじかぁ。こいつお嬢ちゃんより弱いじゃねぇか!」
「私のお嬢様を舐めてはいけません。」
「ちなみに執事の君は少し離れてもらえるかな?一番怖いから。」
「何を仰いますか。同盟したとはいえ敵となられたのならあなた様は敵です。お嬢様の害す者です。私がお嬢様の後ろに立つことはありえないのです。」
殺すか生かすかどうしましょうか。取り敢えず攻撃してきたら拘束しましょう。
私は視認できない程の極細いワイヤーを相手にバレないように張り巡らせていきます。
「それで同盟を結んだはずの貴方様はどういったご用件で?」
「それは同盟の破棄と宣戦布告っ!?」
その言葉を聞いた時、見えない速度で腕を振りワイヤーが魔族を横凪しますが、寸前で気づかれ避けられてしまいました。右腕と右足しか落とせませんでした。軽くない裂傷ですので回復するのに時間は掛かるでしょう。
「運がいいですね。拘束いたします。暴れますと切れてしまいますよ?動かないことをオススメしましょう。」
「く、そぉ。」
「普通に会話しながら、えげつないわね。」
「見えなかった……。」
「セバスさん。止血した方が。」
「そうですね。」
壊毒を使用して傷口と切り離された足と腕を無理やり縫合してやりました。
処置が終わったと同時にルダイ様がタイミングよく現れました。
ひと段落ついてから来るとは…。
「ルダイ様。これ程遅いとは思いませんでした。メイド長に躾けてもらいましょうか。」
「申し訳ありませんでしたぁ!」
余程嫌なのでしょうか。勢いよく地面に頭を叩きつけて土下座いたしました。
いい土下座ですね。面白い。
おや?勇者が魔族に近づいていきました。
「あれも貴方の仕業ですか!」
「……。」
「なんでそんなことを平然とできるんだ!信用ならない!魔王は僕が倒す!」
《わりぃーけどそいつ気絶してるぜぇ?なに一人芝居してんの?いたたたた!痛いヨォこの子絆創膏もってきて!勇者包めるくらいの!」
《役に立たなかった雑魚が何言ってるにゃ。全てが平均以下ってなに?雑魚じゃん!勇者のくせに》
「僕は勇者だ。懸命にみんなを守っている!
雑魚じゃない!失礼だぞ!」
「何が勇者よ。構えながらも何もしなかったくせに何言っているのですか。武器を構えアタフタしていてそれが勇者?笑わせるのも大概にしなさい!カケルのほうがまだマシよ。」
「そんなはずない!カケルにはいつも勝っているよ!」
「いつの話をしてるんだ?てめぇが女と遊んでいる時!寝ている時!俺はいつも魔法や剣術を習っている!お前に負ける気がしねぇ!」
勇者もそうですが、その取り巻きも何をしてるんでしょうか。お嬢様を見習って欲しいです。
「なぁこの魔族はどうすんだぁ?」
「お迎えも来ていることですし、今回は引き渡しましょうか。お嬢様を危険に晒したくはないので帰らせましょう。」
姿を表した魔族が降り立ってきました。
「バレていたか。部下を渡してもらいたい。」
「いいですが…質問に答えてもらえたら引き渡しましょう。余程頼りになる部下なんでしょう。拒否すれば分かっておられますよね?」
にっこりと笑い、ワイヤーで縛られている魔族の首を掴みナイフを近づかせて言いました。
「外道が…」
「外道とは心外です。私はお嬢様の害をなすものを排除するだけです。では、貴方のここにきた目的はなんでしょうか。」
「宣戦布告と勇者とやらの実力をだ。」
「それは魔王が変わったことでいいのでしょうか?」
「先代には消えてもらった。」
「そうですか。魔王が行動を起こすまでの期間はお分かりですか?」
「だいたい一年ときいている。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「答えられる範囲の質問に感謝する。」
私の知りたい情報が聞けたなら満足です。
固定したワイヤーを取り、拘束した魔族を放り投げます。そして消えていきました。
拘束した魔族ですが少し毒を入れてあります。その毒は魔族の脳に侵入すると私の操り人形となります。まぁスパイとして放り込みます。