執事、過去の話をしました。
気絶したルダイ様が目を覚ましたので、夕食の時間となりましたので、食堂にお連れしました。
ただいま、旦那様方とルダイ様でお食事をしております。
お嬢様とルダイ様は今日の出来事を旦那様に話しました。
「すまん。まさかあそこで出くわすとは思わなかった。」
「セバスが怒って、勇者を懲らしめたんですよ。ハッピーベアーも困っていましたし。」
「すまん。あれでも勇者だから死んでたら困るんだが…。」
大丈夫ですよ。代々勇者という属性は図太くしぶといゴキブリのような輩ですからね。
「大丈夫じゃないか?あそこは海で、助かったとしても下痢が酷いだけだし。」
「そうか。ならいいんだが。」
「それはそうと。先生は瞬歩を習得できたのですか?」
勇者に興味はないのでお嬢様は話を切り替えました。
「うん。まぁ……。」
「あらあら。余程お疲れの様ですね。メイド長は半端は妥協しませんからね。」
「もうやだ。ここの使用人は鬼畜ばかりだ。」
「「心外でございます。」」
使用人一同、声を揃えて否定させていただきました。
「ふふ。使用人たちは個性的で楽しいでしょう。」
「うちの使用人はうちの屋敷の護衛であり最終防衛ラインでもあるかな。弱くてはならない。」
「護衛?」
「ルダイ様…私たちはスカーレット公爵家使用人として対象より弱くては務まらないのです。」
「てかなんで最強の連合国騎士団長より強いやつが使用人やってんだよ。」
「俺は弱いとは思っておらん。強いって言ったら執事長メルフェス・バファルだな。もし殺し合いをするならセバスだな。」
「殺し合いって。」
「私はまぁ色々あるのです。」
だいたい、5歳ころからあそこで常に生き物を殺して死戦の中にいた私と、訓練で強くなった使用人とで比べるほうが間違っております。まさに月とスッポン的な感じです。
「スカーレット公爵家が異常なだけか。それなら納得するしかない。」
「うちはそんなにすごかったのですか。」
お嬢様も感心しております。まぁ身近にいると気付かないこともあります。
食事を終え、ルダイ様をお風呂に入れ、着替えをご用意致しました。それを渡して要件がないかを尋ねました。
「お前が何者か…聞いてもいいか?」
「それはお嬢様の担任としてですか?それとも連合国SSSランク序列6位【夜叉】ルダイ・シルバーとしてですか?」
そう質問を返すと、目付きが変わり警戒されてしまいました。そうされるとからかいたくなるじゃないですか。
「お嬢様の担任になる方を調べないわけにはいかないじゃないですか。」
「はぁ担任として言ったつもりなんだがな。殺気をあれだけ放つやつがいると、心配だからな。」
「ふむ。そうですね。少し昔話でも致しましょうか。私はとある偉いところの御坊ちゃまでした。5歳のある日、魔力測定にて結果が出ませんでした。そのため、隠蔽しようと【幻魔の死森】の最深部に強制転移されました。」
「はぁ?」
「ですが私は死にたくありませんでした。情けか知りませんが小太刀を持たされました。そして近くにいた生き物を斬って、殺して、吊るして、かぶりつき、睡眠を忘れてひたすら生き続けました。泥水を啜ってでも生きてあいつらに復讐するその日までと。そして当時の王者であった血王竜が襲ってきたので一週間戦いました。最後は口の中に突っ込んで食道をズタズタにして首を刎ねました。そのドラゴンの骨を刀にして、また殺し続けた結果、その森の王として君臨したのです。」
「そして、ある日お嬢様と出会い使用人として働くことになったのです。」
そして闇ギルドマスターと出会い、暗殺技術を仕込まれて、そのマスターを暗殺し、マスターとして君臨しました。闇ギルドを解体して、今は暗殺専門のギルドとして連合国の裏家業を担っております。
「何も面白いことなんてなかったでしょう?」
「いや、ありすぎてコメントに困るんだが。」
頭を抱えたルダイ様だが、今日のあれが響いて眠くなられていたので、一礼して部屋から退出しました。