執事、王様と謁見する。
案内されたお部屋に入ると、ルダイ様がいらっしゃいました。何やら顔色が優れないご様子でした。
「先生、どうかなされたのですか?」
「いや、昨日家に帰ったら、部屋が綺麗になっていた。」
「え?」
「生徒の個人情報があるから転移防止結界を張っていたし、侵入されることはないだろうと思っていた。だが侵入されたというのに、金品は無事でその代わりに、綺麗に掃除され、洗濯もされて干されていたし、夕飯が作り置きされてラップされていたんだ。意味がわからない。」
「それって先生の彼女じゃないんですか?」
「俺に彼女はいない。3年前まではいたんだがな…。」
「では一体誰が……。」
「あぁ…それでしたら私がいたしました。」
「「!?」」
「毎日草臥れたシャツなどを着ていらっしゃったのでいっそうのことやってしまえと思い、侵入させて頂きました。実にやり甲斐のある汚部屋でしたので張り切ってしまいました。」
「まさかの犯人はセバス!」
「つかてめぇ執事!テーブルにあったあれ!」
「何か?ありました?」
「いや……うんなんでもない。」
笑顔でお聞きしたのですが、黙って目を逸らしてしまいました。
残念です。いじり倒そうと思ったのですが。
案内役の執事がやってきまして、漸く謁見の時が参りました。
先程までの姿が嘘のようになり、凛とした表情となるお嬢様。流石は公爵家の御令嬢といったものです。緊張して無様に転倒しないか祈っています。
執事の案内で無駄に大きな扉の前に立ちました。入室の許可を得ると警備の兵が扉を開けました。
しかし、警備が緩いですね。
転移防止結界があるとはいえ、少し力のある人なら簡単に侵入できてしまいます。
私が警備の云々について考えていますと、お嬢様がたが礼をとりました。
「面を上げよ。」
王様の言葉でお嬢様方は顔をあげます。
私はこんな駄王に頭を下げるのは、屈辱でしかありません。これでも王様なので私も頭を下げます。
私の昔の顧客なのですが、嫌々仕事を受けてやったのだから、私は頭は下げるのはとても嫌なのです。鳥肌と蕁麻疹が出てしまいます。