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ホオヅキ電気 保安事業部 2課 二班  作者: かまたかま
2/2

保安事業部の仕事

響くようなエンジン音を鳴らしながら暗い朝の道を快走する車。



差はあれど常に凍結しがちな道な為、制限速度は50kmと一応決められているが………



「り、林堂さん……結構スピード出しますね………。」



「大丈夫だって、会社のロゴ見れば電技師だって1発で分かるから。急ぎの私用がある時は言ってくれれば制限速度無視で送ったりもしちゃうよー。」



「……それってOKなんですか…………。」



外回りの電技師は急ぎの『現場』がある時は速度制限を無視できる。これは電気とゆうライフラインがいかに重要であるかと、それを現場で支える『電技師』の権限の強さを物語っている。



「そうだ、今の内に俺達の巡回装備の説明しとくか。……まあ、要するに軽装だな……外を回ったり、そこまで大事じゃ無さそうな時にパッと飛び出したりする格好だ。」



林堂さんの説明に合わせて隣に座るセツさんが羽織っているコートを見せてくれる。



「これが俺達が使う軽装……補助外殻(スケイル)コートだ。オーダーメイドで明ちゃんの奴はまだ無いが………羽織るだけの簡易な防具だな。」



補助外殻(スケイル)コート………。パッと見だと皮で出来たゴワゴワなトレンチコート見たいですが……。」



「……触ってみる?。ほらここ、指で押してみて。」



そう言ってセツさんが裾の所を触らせてくれた。


感触としては……やはり見た目通り硬い。柔軟性があるのは確かだが着心地が良いとは言えないだろう。



そして所々に………特別硬い芯のような物が入っている…特に皮膚に近い所にある骨の近くに。



「骨を保護するようにこの芯は入っているのよ。その上に合成繊維の丈夫な生地が貼られている訳ね。……と言っても動きやすさ重視で全身の骨をカバーしてはいないし、この布地も過信しちゃダメなの。大事なのは『安全第一』……危なくない『状態』を作る事ね。」



右手の人差し指を立て、少し顔を傾げながらウインクするセツさん。


キレイ系の顔だがその仕草は愛嬌たっぷりで……とても可愛らしい。



「まあ、…セツさんは元から全身に緩衝材あるし大丈夫じゃね?。明ちゃんは気を付けなきゃだけど。」



我會殺了你(殺すぞガキ)ッ!!………全く、デリカシーの無い男はモテないわよ。」



………そう思った矢先、セツさんの表情がライさんの一言で豹変した………怖い。



……だが、このマイペースな雰囲気が徐々に緊張感を和らげてくれる。

さんはいい人そうだし、セツさんはずっと話しかけてくれる。ライさんはまだ分からないけど悪い人では無さそうだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




15分程走っただろうか。



辺りの民家はまばらになっている……



ライフラインが重点的に引かれている生活圏で最も外側、Dゾーンと呼ばれる場所だ。



最も外側と言ってしまえば聞こえは悪いが……言い換えれば最も『温暖』な場所でもある。


過去にあった隕石の衝突により、地軸が公転軸に対してほぼ水平にま傾いたのだが……それにより地球の片側は常に太陽が当たる灼熱に………もう片方が常に日が差さない極寒の地へと変わってしまった。



勿論どちらも人間は生きていけない。だからその丁度間……大気が混ざり合い人間にとって丁度良くなる地帯から若干日がささない側で人類は生きている。



そうゆう訳もあり、この温暖なDゾーンはありとあらゆる事において人気な場所なのだ…………



『ただ一つの要因を除いて』…………。





「よし、ここら辺だ……………っと、派手にやられてんなぁ。」



林堂さんが車を停め、ライさんとセツさんと共に降りた。



よく分からないが私も降りて周りを見る。



「…………うわ、これどうやって………。」



「すげぇだろ?、俺らが来る意味あったなこりゃ。」



車に乗っている時は四角になっていて気付かなかったが………道路に並んでいる街灯が土台のすぐ上から『叩き折られて』いた。



硬質かつ重量のある細めの棒を打ち付けたような………衝撃のみで叩き折ったような状態だ。


「街灯が破壊された範囲を見てみるか………、明ちゃんはセツと一緒に動いてくれ。」



「はいっ!。」



林堂さんはそれだけ言うと車に戻り、トランクから銃を取り出すとそのまま道に沿って進み出して行った。


ライさんも同じように銃をもって林堂さんが進んだ方とは反対側を見ている。



「……じゃあ、私達は辺りの家を周りましょうか。結構少ないけどこれだけの事をしたなら音くらい届いているでしょうし。」



 「そうですね!、破壊された時刻とか……ひょっとした何があったかも見ているかもですね!。」



そうと決まればあとは動くのみだ。



早速セツさんが見ている家………すぐ側にある一軒家に向かう。



二階建ての大きな家だ……土地が安いので大きな家や建物を建てやすいとゆうのもDゾーンの1つの利点である。



「もう普通の人は働いていたり、学校に行ってる時間だけど………誰かいるかなぁ。」



今は9時刻、多くの人は家から出ているだろう。



ふと窓を見てみる……カーテンが空いていたので中に人が居るかどうかが気になっているのもあって視線が向いてしまったのだ。



「……………け……て……………、」



「…………セツさん……………人です…………。よく見たら窓いてます。」



風が殆どなく、カーテンが揺れていないため閉められていると思った窓に………人がいた。



両手で窓枠を掴み、なんとか顔だけを持ち上げている状態でギリギリ聞こえる程度の小さな声量で助けを求めていたのだ。



だが、私と目が合った彼女は助けが来た希望の為か更に必死に助けを求めて来た。



「……助けてっ…………ここに居ますっ!…………助けてっ!!。」



「い、今行きます!!!。」



理由は分からないが一大事だとゆうのは分かる。



かなり衰弱しているように見えたが、そこまで状態は悪くなさそうだ。早く助ければそれだけ彼女にとって良い結果になるだろう。



そう思い走り出そうとした時……



…………セツさんに手首を捕まれ、走り出そうとした勢いで転びそうになってしまった。



「セツさん?!………早く助けないとあの人が!!。」



「私に任せて。……明ちゃんはまだ見習い何だから………。」



それだけ言うとセツさんは私の前に立った。



…………助けを求める女性と私の間に。



「どうされたのですか?。」



「助けてっ!!…………ここに居るので!!、助けてっ!!。」



相変わらず女性は必死に叫んでいる。



「何があったのでしょうか?。」



「助けてっ!!助けてっ!!…………タスケテェェッツ!!!」



………その迫真さは秒毎に増していく………、



最初に見た瞬間の弱々しさは…………無い。




「ココニ!!……タフケテッ!!、イルノデッタスケテェェッツ!!!。」



「そんなので人を『釣ろう』なんて猿芝居にも程が有るわ。」



セツさんがベルトから下がっている黒い物のピンを外す。



ピンはそのまま捨てられ、黒い物は緩やかなフォームで『女性』の元へ投げ込んだ。



「下がって、念の為頭を下げて……破片はかなり飛ぶから。」



この言葉で何を投げ込んだのか確信した私は振り返って少し走り、そのままヘッドスライディングの容量で道路脇の地べたに飛び込んだ。



…………………数秒の間を開けて




ドンッとゆう低く短い衝撃音と共に鼓膜が高鳴る、


体が内側から震えるような感覚……そしてパラパラと木っ端になっな物が落ちてくる音。



「せ、セツさん?!。いきなり『手榴弾』投げ込むなんて、生きてる人が居たらどうするんですか?!?!。」



セツさんが投げ込んだのは間違いなくフラグメントタイプの手榴弾だ。


手のひらに収まるサイズの爆発物で、爆発の威力とゆうよりそれによって飛び散る無数の外殻………歪な形の金属片を全方向にばら撒く事でダメージを与える爆弾。



当然人が喰らえば、ただの家では同じ部屋は勿論……ある程度の壁なら貫通して穴だらけになってしまうだろう。



「生きてる人?………まあ、これも勉強よ………あれを見なさい。」



急変する現状に若干ヒステリーを起こしていたのだが……セツさんの至って冷静な声に少しだけだが理性を取り戻す。



そして言われた通り後ろを見る………狂気のような様で助けを求めていた女性の方を…………、



「………な、なんですか………あれは。」



「ね?……流石に生きてる人なんて居ないでしょ。」



黒い外殻、巨大な4本の足で長い腹部分を支え最も発達した前足で胴と頭を支えている『昆虫』。



その頭部は逆向きの三角形だが………複眼の間にぐちゃぐちゃになった人型の何かが生えている。



………そして何よりも『デカい』そいつが………窓があった壁を破壊しながら家からはい出てきていた。



「『ヒトマネカマキリ』ね。走光性は無いからこんな所に居るなんて珍しいけど。」



……そう、それは『カマキリ』にそっくりだった。



全体的にカマキリをより硬質に、細身に……何よりも巨大にした生物だ。



そして頭部から生えているぐちゃぐちゃになった肉塊……あれは恐らく至近距離で手榴弾を食らった先程の女性……いや、女性のように変化した『疑似餌器官』だろう。



………そう、これが私の配属された『保安事業部』の仕事。



日が照らさない世界を照らす電気と街灯…………、



その光に『集まる』習性をもつ害虫達から電気設備を『守る』仕事………。



「じゃあ明ちゃんは下がっててね。今からが『本格的』な仕事開始だから。 」


オオヒトカマキリ



巨虫網 大カマキリ目 ヒトカマキリ科



巨体の頭部に人型の疑似餌器官が発達しているオオカマキリ。



走光性は無く、頻繁に人間の生活圏内には侵入しない。



本来は外域で中型の肉食昆虫を誘き寄せる為に頭部の疑似餌を用いる。

この疑似餌は数種の『助けを求める』叫びを上げるため、聴音能のある昆虫を効果的に集める。



また、人の生活圏内に侵入した個体は習性なのか『街灯を破壊』し、民家に体をすっぽりと隠し(住人を捕食した後)疑似餌器官のみを外から見える位置に置くとゆう『人を誘き寄せる』行為をとる。



これが習性なのか………それとも街灯を壊せば電技師が、助けを求める人が居れば他の人が助けに来るとゆう事を『理解』して行っているかは不明。

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