俺と彼女と共同生活
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今日は華の金曜日と一般的には言われているが、俺にとっては最悪の日だ。その日の昼休み、俺は親友の康太と共に昼食を食べていた。
「はぁー……」
「どうした凪、ため息なんかついて?」
「いや、なんでもないよ」
なんでもなくはないんだけどな……
俺は今ある深刻な問題を抱えている。
下手したら生死に関わるかもしれないぐらいの問題だ。
「ため息ばっかついてると、幸せが逃げちまうぜ。でも、凪にそんな幸せがあればの話だけどなー」
「そうだな……」
三井は真っ黒の肌から白い歯をキラリと光らせ俺をからかった。しかし、俺はツッコミを入れるさえ元気がない。
何故なら、今日俺は売り飛ばされる日だから。
この発端は昨日の夜ーー
「おい凪、お前を売ることしたから。明日荷物纏めて、この家から出てってくれ」
俺はご飯食べていると、突然叔父の直也さんからそう宣告された。嘘だと思いたくて直也さんの目を見るが本気の目をしている。
「えっ!?ちょっと待ってくださいよ。どういうことですか!?」
直也さんは頭を抱えながら俺を鋭い目付きで睨んだ。
「はあ……いいかよく聞け。今までは兄貴の息子だからって我慢してきたけどな、もううんざりなんだよ!!お前が居るせいで彼女は家に連れて来れないし、夜は静かにしてなきゃいけないし、何よりお前かわいくない」
えぇぇ…………
四年前、俺が中学一年になった頃、俺は事故で両親を無くし父の弟、直也さんに引き取られる事となった。
直也さんは父とは八つ離れている。
その為、仕事をしながら俺を育てるという事に嫌気が指したんだろう。
でも、俺も直也さんに気を使わせない様に家事全般は出来るようになったつもりだったんだけどな……
しかし、それが逆に可愛くないと言われる決定打になってしまったみたいだ。
「分かりましたよ、でも俺はこれからどうやって生活すればいいんですか?……」
「学費と生活費はお前の両親が残した遺産で何とかなるだろ」
「そうですか……じゃあ俺一人暮らしします」
「待て待て、ちゃんと住居はあるんだ。さっき売ったって言ったろ?」
はっ?何を言って……
直也さんは自身のスマホを机から取り、俺にフリマサイトのページを見せた。
「ほら、ここを見てみろ」
そう言って直也さんが指さした場所には俺が無料で売られていた。さらに、赤い文字でSOLDと書いてある。
「だから、ここの家に住めばいいんだ。わかったか」
直也さんはそのままどこかへ行ってしまった。
「わかったかって言われましても……」
俺は自分のスマホでさっきのフリマサイトで売られている俺の詳細をみた。
「『十六歳男子。家事全般が出来ます。こき使ってやって下さい。買ってくれた後に細かい情報は送ります』だと……これじゃどんな人に買われるか全くわからないじゃないか!最悪だ……俺の情報全部バレてるし。やばい人に買われてたらどうしよう……」
俺は不安に駆られていたがどうする事も出来なかった。仕方なく俺は腹を括り、俺を買った人の家に行くことにした。
そして俺はそこで生き残る!
そして今に至るーー
放課後になり下校した俺は、俺が住む事となるであろう場所まで来ていた。
目の前にはマンションが建っている。
「ここか……どんな人が住んでるんだろう。怖い人じゃありませんように!!」
俺は不安に押しつぶされそうにながらも遂に部屋の前まで来た。
「すぅーはぁー、よし」
大きく深呼吸した後にインターフォンを押した。
「すいません、今日からお世話になる橘ですけども……」
あれ、反応がない。留守なのか?
すると、玄関のドアがゆっくりと開き一人の美少女が出てきた。
「いらっしゃい、橘くん。今日からよろしくね」
「えっ姫乃さん??ちょっと待ってここって姫乃さんの家??よろしくって……」
彼女は姫乃 芽衣、くっきり二重が特徴的な黒髪ポニーテールの美少女だ。下手なアイドルより可愛いと思っている。姫乃さんとは中学から付き合いだがお互いの事は余りよく知らない。
「そうだよ。とりあえず詳しい事は中で話すから、ささあがって」
「えっ、あ、うん。お邪魔します……」
俺は彼女に言われるがまま家にあがった。
えっ、ここが姫乃さんの家なのか?
外見からは想像つかないぐらいギャップが凄いんだが……
周りには、沢山の段ボールの箱が散らかっている。
それとゴミを纏めた袋を度々置いてある。
「そんなにジロジロ見られると恥ずかしいな」
彼女は頭をかきながら照れている。
「さあここに座って。麦茶でいい?」
「うん……ありがとう……」
俺は彼女に言われるがまま椅子に座り麦茶を貰うと、彼女は向かい側に座った。
「ところで質問だけど、今この部屋入ってどう思った?」
「えーー……とても生活感があっていいお部屋だと……」
「正直に言って!」
「はい……正直、汚いと思いました。ここに人が住んでるんだろうか?ってぐらいに」
「はは、やっぱはっきりと言われると心にくるものがあるね……」
彼女は胸に手を当て苦笑いを浮かべている。
しかし、俺も驚いていた。完璧そうな姫乃さんがこんな性格だったとは。人は見かけによらないらしい。
「そこで、橘君には私のお手伝いさんとして今日からこの家に住んでもらいます!」
俺が、姫乃さんのお手伝いさん??
「えっ、本気で言ってるの?」
「本気だよ。だって橘君、家事全般出来るんでしょ?」
「そうだけど、そうじゃなくって男が住むんだよ?しかも同じ家に!一緒に!いいの!?」
何故か俺が反対しているような状況になっている。
「橘君だからいいの……」
えっ、それってもしかして……
俺は少し変な期待を胸に抱いていた。
「だって橘君、中学の時から惚れた腫れたの話一切聞かないんだもん。挙句の果て橘君アッチ説なんて話も挙がってたみたいだしね。なら安心でしょ!」
彼女が笑顔で俺を見つめている。
確かに一切なかったけど。
しかもそんな説があったのか……
笑顔でそう言い切られるとちょっと悲しい……
あと俺の淡い期待を返してくれ。
「そ、それは、家庭の事で忙しかったからで……」
「言い訳は男らしくないよ、橘君!ヘタレだと思われちゃうよ」
ほんとだわ!今ここで手出したろか!
と思ったが、そんな事したら新しい住居が刑務所になりそうなので必死に堪える。
「わ、わかったよ、本当にいいんだね?俺がこの家に住んでも?」
「うん!」
「じゃあ、これからよろしくお願いします」
「よろしくー。なんか、同棲するみたいだね」
「な、何言ってんの!?共同生活でしょ!」
「動揺しすぎだよ。ふふふ」
彼女の笑い声が部屋中に響き渡った。
あぁ、俺の理性はしっかりもってくれるだろうか。 心配になってきた……
こうしてフリマサイトが繋いだ、俺と姫乃さんの奇妙な共同生活が始まった。
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