第3話 見たことないもの
転校生の姫野花蓮が転入してから3日が経過した頃、俺は学校へ行くことができなかった。時計の針が9時ごろを指す頃俺はベッドに横になっているだけで今からでもベッドから降り、学校へ行こうとする気など微塵もなくベッドに横たわって見る真っ黒で沈黙したテレビに映る自分の顔や髪を見て少し憂鬱になりながらも動こうとする気はなかった。
時計の針が11時を指す頃、俺はようやくベッドから降りてテレビのリモコンを探し、お昼頃の情報番組を見るといつもは学校に行っているときは見れない番組を見て、少し背徳感を感じながらまたベッドに横たわった。
「なにしてんだよ・・・俺」
・・・夢を見ている。これはたまにある夢の中でこれは夢と実感できる時。 夢の中では小学生の頃の俺と、その時仲良く遊んでいた佐々木龍と磯島悠が出ている。その2人を見ると少し懐かしさを感じるも、3人で自転車を漕ぎゲームセンターに行って遊んでいる。すると、ささきあが俺の肩を組み、耳元で小さな声で「金貸してよ」と言いいながら、左足で俺の右足を踏まれ俺はなにも言えない状況であった。それを見た磯島はニヤリと笑うだけで、俺はもうなにも言い返せずただ黙るだけだった・・・
その沈黙を破ったのは、現実の俺の家のインターホンの音だった。嫌な夢を見たと俺は少し心拍数が上がり、落ち着かせるためにゆっくり深呼吸を行い呼吸を整えて、家のドアを開けた。
「お、元気そうじゃん・・・って光夜髪ボサボサすぎ!」
その姿は同じクラスで小さい頃からの幼なじみである、一宮 結衣の姿であった。少し茶色がかったショートカットの髪をして、俺の今の髪の毛とは大違いに整っており、顔も少しボーイッシュな感じで輪郭がハッキリしており幼なじみながら綺麗だとは思う。
「うるせ・・・お前は相変わらず元気だな」
少しそう嫌味を言いながらも、同じクラスで幼なじみでありながらほとんど話さないため、こうやって2人で話すのは久しぶりだ。まぁ・・・俺が一方的に避けていたってのはある。その理由は、いつも通り心の光を見ると俺の姫野花蓮への感情と同じように、眩くピンク色に光っており、俺に対して恋愛感情を抱いているからだ。
「あんたはさ・・・風邪じゃなさそうなのに、どうして休んでるの?」
俺は風邪で学校は休んでいるようにしているが、結衣からは風邪ひいてないことはバレバレでなにも言い換えせず、下唇を上の歯で噛むだけで目をしかめていた。
「・・・とりあえず、入るね」
そう言うと靴を脱ぎ、俺の部屋へと勝手に歩いていく。
「ちょ、まてよ許可してねーじゃん」
「別にいいでしょ?それとも、何かやましいものでもある?」
「別にないけど・・・」
こうなった結衣は止めることはできないため、俺はもう諦めて部屋に行く前にリビングに行って、コーラをコップに入れそれを持って後から自分の部屋へと入った。
「男臭い部屋ね・・・一応掃除はしてるっぽいけど」
部屋の隅を指でなぞるように触れ、埃があるのか確認した後そう言って、俺は姑かよとツッコミを入れながら、テーブルの上にコーラの入ったコップを置き、ベッドに座った。
「それで、何のようだよ」
「これ、家近いから先生に渡せって言われた」
そう言うと3日分の授業の資料だった。
「ああ、サンキュー・・・」
そういえば、俺の部屋に女の子を入れたなんていつぶりだろう・・・まぁ、結衣しか入れたことないけどとても久しぶりでこのシチュエーションに俺は少し気分が高まってしまい、緊張している。
「あんた・・・緊張してんの?」
俺の心の中を読んでるんじゃないかと言うように結衣にそう言われると、そんなわけねぇ!とベッドから立ち上がり必死に否定した。
「いや、あんたのことずっと見ているから・・・わかるよ、言わなくても」
そう言われたら俺はもうなにも言い返せず、黙ることしかできなかった。
「それで、いつまでいるんだよ」
また心の光を見るもピンク色に光っており、俺のこと好きである女の子と俺の部屋にいる状況に俺は慣れず・・・だから結衣とも関わりを減らすことにした。恋愛感情を持たれていることに対して俺はどう関わっていいのか分からないからだ。そして、今2人きりのこの状況・・・俺は少し怖さがある。
「あのさ・・・光夜に言いたいことあるんだけどいい?」
少し真剣な表情で俺の目を見て、ああ・・・と頷くことしかできず、握りしめ盾は震えているのを自分ながらに感じていた。
「光夜って・・・あの転校生のこと好きなの?」
その言葉を発した結衣の心の光は初めて見るものをしていた。それは、ピンク色に光ってはいるが、真ん中に少し黒くそれがどんどん膨らんでいくように大きく、そして・・・ピンク色と黒色が混ざるように光っている。
俺の中で経験上、黒色の光は見たことがない。だからこの色に対してどのような感情を持っているのか分からない。その未知な感情に真摯に考えてしまい、結衣の言葉を完全に無視していた。
「聞いてるの・・・?」
そう言うとベッドに立っている俺に覆いかぶさるように、倒れてきて、結衣にベッドに押し倒された状況になった。
「な、なにして・・・」
俺はもう結衣に押し倒されたこと、黒い光のこと、転校生が好きということをバレたことそんなたくさんの事が起きたことで完全に頭が混乱し、抵抗もできずほとんど話すことすらできなかった。
「私・・・ずっと光夜のこと好きだったのに・・・どうしてあんな転校生に」
下から見る結衣の表情は悲しそうで、どんどんと心の光が真っ黒に染まっていき、ピンク色が欠片も見えないようになると不意に俺は結衣に唇を奪われた。