◎最後はビターに終わるでしょう
「……というわけで、ダメだったの」
「そう。先約があるんじゃ、しょうがないわね。にしても、カノジョが居るとは、知らなかったなぁ」
「うぅ~、ミキちゃ~ん」
「おぉ、よしよし。スーちゃんは、よく頑張ったよ。えらい、えらい」
「せっかくプロポーズ作戦を考えてくれたのに、役立てなかったよ~」
「ドンマイ、ドンマイ。チャンスは、また来るわ」
親友のミキちゃんは、いつだって私に優しくしてくれる。だから、ついつい甘えてしまいたくなる。
ミキちゃん、ラッピングを解いてマフラーを出すと、私の肩を抱き寄せ、自分と私の襟元に八の字になるようにマフラーを巻き付けた。
「これだけ長ければ、二人で使っても余裕があるわね。それに、隣にスーちゃんがいるから、合わせて五度くらい暖かい」
「それ、遠回しに私の体型を皮肉ってない?」
「まさか。スーちゃんは、気にしすぎよ。私は好きよ、スーちゃんのマシュマロボディー」
「あぁー! やっぱり、そうなんじゃない」
こうして、真冬の小さな恋は、勘違いと乗り遅れで実らなかったわけだ。
失敗したらもっと悲しいかと予想していたのに、すべてが終わった今では、不思議と清々している。
まぁ、駄目になってしまったものは、どう足掻いてみたところで、どうしようもないもの。
とりあえず、春になったらダイエットしようかな。
山に積もる雪が川になって流れる頃には、新たな出会いがあるかもしれない。
一本のマフラーを二人で共有しながら、私は、三日坊主になりそうな減量計画ばかりを思案するのだった。