◎まずはマフラーを用意します
手編みのマフラーは、重いかな。
ひと針ひと針、目を数えながら毛糸を引っ掛けては潜らせつつ、私の心には、そんな懸念が渦巻いていた。
別に、でかでかとハート模様やイニシャルを入れてる訳じゃないし、色だってピンクや赤じゃない。
だから、仮に好きになってもらえなくとも、嫌われることはないはず。
そう、自分に言い聞かせながら編み続けているうちに、いよいよバレンタインが近付いてきた。
ホントはクリスマスに渡そうと思ってたんだけど、先の懸念が頭に浮かんで、なかなか手芸店のドアを開けられなかったのだ。
バレンタインに渡したら、本気だと思ってもらえるよね。
聖夜を逃した言い訳と、かすかな期待を胸に秘めつつ、ひと針ひと針、目を数えながら毛糸を引っ掛けては潜らせていく。
……が、数学にも家庭科にも弱い私のことなので、出来上がりの寸法を計算違いしていた模様。
毛糸玉を使い切って編み上げたマフラーは、優に三メートルはある超ロングサイズになっていた。
いくら男性用とはいえ、ちょっと長すぎたかもしれない。
こんなことなら、お店の人に目安を聞いておくんだったと後悔しつつも、私は次なる段階に移った。