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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第七十六話  追憶令嬢13歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。

平穏な生活を目指す公爵令嬢ですわ。


隣国からの留学生は美人ですが怖い方々でした。

エリザベス様との恐怖のお茶会はその後は声を掛けられることはありませんでした。王女様達は殿下との親睦を深めることなく帰国されました。

正直、殿下が選ばれなかったことにほっとしました。

王妃様は定期的にお茶会を主催します。

あんな恐ろしい方と定期的にお茶会があるなんて耐えられません。

殿下の選んだ方なら不服はありませんができれば怖くない方がいいですわ。

殿下は来年にはルメラ様と出会うので婚約者がいなくても問題ない気もしてきましたわ。




留学により延期になった2か月遅れの茶会の時期がやってきました。

最上級生の令嬢達は忙しそうですが私は演者ではないので気楽でした。

数日前の慌ただしさが嘘のような日々に平穏を満喫していました。

そして今年は問題なく茶会が終わり1位はエイミー様を演者に指名した侯爵令嬢でした。エイミー様という勝利の女神を手中におさめたのが勝因です。



世の中知らない方が幸せなことがたくさんあると知っています。

でも教室で純愛物語について盛り上がっているサリア様の様子を無視できませんでした。ラル王国のお姫様達の知っていた物語。姫様達に話題になるなら教養として目を通したほうがいいかもしれません。なぜか嫌な予感がしますが、勇気を出して声をかけます。


「サリア様、純愛物語をご存知ですか」

「もちろんですわ」

「もしお持ちでしたらお貸しいただけますか?」

「レティシア様、申し訳ありませんがお貸しできませんわ。マール様とルーン様を見守る会の会員限定冊子ですから」


申し訳なさそうな顔をするサリア様よりもサラリと言われた言葉に一瞬頭が真っ白になりましたわ。見守る会は知っていましたよ。リール公爵夫人の機嫌取りに夫人達が入会しているお付き合いのための会ならと諦めましたわ。公爵夫人の機嫌取りも家のために必要な場合もありますから。


「冊子?どなたが書いてるんですか?」

「リール公爵夫人のお抱え文官ですわ」


物凄く嫌な予感がするんですが、それは私とリオのこと書いてます?エリザベス様がリオを情熱的とおっしゃったのはその冊子の所為ですか?


「エリザベス様達とのお茶会で純愛物語お読みになったとの話を伺いました。どうしてでしょうか?」

「きっとルイーザ様ですわ。マール様のことが知りたいと相談を受けた令嬢が純愛物語のことを話され、マール様のために入会されましたもの」


しみじみと呟くサリア様の言葉は受け入れたくないものばかりです。あのあとどなたかがラズ様を保護してくださったことには感謝しますが、どうして入会しましたの?入会?


「会員募集してますの?」

「入会は会員3人の証人があれば可能ですわ」


堂々とおっしゃる言葉に頭が痛くなってきましたわ。リール公爵夫人の機嫌をとるのってそこまで求められます?ラズ様は絶対に入会必要ないですわよ。

もしかしたら私の勘違いかもしれません。一応確認してみましょう。


「純愛物語はどんなお話しですか?」

「1巻はレティシア様達の出会いや婚約までのお話、2巻は学園編です」

「続巻されてますの!?」

「はい。学園内のルーン様とマール様を応援する会のお茶会で報告会がありまして、報告書をリール公爵夫人にお送りしてますの。目に止まったお話は本になりますのよ。皆、自分の好きなお話しが本になるのが嬉しくて激戦ですわ」


珍しく熱く語るサリア様。

リール公爵夫人何してますの!?

芸術を広めるのはリール家の務めよって少女のように朗らかに微笑みそうですわ…。

応援する会ってリール公爵夫人の機嫌をとるために入会されたんじゃありませんの?こんなに活動的なんてやりすぎですわ。

まさか…。恐る恐るサリア様を見つめます。


「学生にもサリア様やブレア様以外にも入会者が・・・?」

「います」

「リオのファンの方達ですか?」

「お二人のファンの方です」

「私は令嬢達に嫌われてますが」

「あら?レティシア様は人気がありますのよ。綺麗で優しく努力家で生徒の見本、下位貴族には特に。もちろん私も大好きですわ」


気を遣われてますわ。

そんな気遣い不要ですが微笑むサリア様の優しさに話を合わせましょう。


「ありがとうございます。嫌われているので頑張ってイメージアップしないとと思ってましたわ」

「レティシア様は敵対派閥の方の標的ですものね。マール様やビアード様のファンの方にも嫌われてますし。でもレティシア様は好かれてますわ。私達は貴方が困ったら迷わず力になります。もう少し頼ってくださってもよろしくてよ?」


淑やかに微笑むサリア様の言葉には優しさが詰まっています。少なくともサリア様から好意を持たれているのは嬉しく笑みがこぼれます。


「いつもサリア様達に助けてもらっています」

「まだまだ足りませんわ」

「心強いですわ。ではお願いしても?」

「おまかせください」


淑女の笑みを浮かべるサリア様、頼りになる友人にお願いしましょう。


「純愛物語を廃刊にしていただきたいのですが」

「できません」


笑顔で迷いなくお断りされました。

家格が違うのに他愛もないやりとりができるのは嬉しいことです。純愛物語は恥ずかしいですが、大事なお友達のサリア様達が喜ぶなら目を瞑りましょう。私が異議申し立てをしてもリール公爵夫人が動いてくださるとも思いませんし。

ですが私だけ恥ずかしいのは不公平なのでリオに話すとすでに知っていました。

リオの情報網は夫人や令嬢達のことも引っかかるんですか?気にするのはやめましょう。

そして純愛物語のことなど全く気にしていないリオの図太さが羨ましいです。

私はリオと違って繊細なので忘れることにします。世の中は知らないほうが幸せなことだらけです。純愛物語についても知らなくていいことでしたわ。この教訓を生かして平穏を手に入れましょう。

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