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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第六十四話  追憶令嬢13歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。

ステイ学園2年生です。


私はエイミー様の恋を応援する会を立ち上げることを決めました。

貴族の世界は複雑なので慎重に動かなければいけません。

放課後に特別室のサロンを貸し切り、防音の結界も仕込みました。

授業と訓練以外では魔法の使用は禁止なのでリオに相談して、魔石と魔法の使用許可書を用意してもらいました。生徒会役員のリオに感謝ですわ。後日チョコケーキを献上しましょう。

私がお誘いしたのは、ブレア様、サリア様、ステラにハンナ。

上位貴族のブレア様とサリア様は貴族としての常識はきちんと持っていますし、ステラとハンナは優しく慎み深い人柄。

この4人なら協力を断られても、噂を広めないと信じております。

セリアは協力してくれないのはわかってるので誘ってません。今は研究に夢中です。

シエルの用意したお茶とお菓子に口をつけます。私が手をつけないと四人は口をつけられないマナーですので。


「今日は時間を作ってくださりありがとうございます。胸に留めていただきたい私的なお話ができたらと」

「友人の相談を噂の種になどしませんわ。ご安心ください」

「私はご一緒できて光栄です。レティシア様からのお茶の誘いは初めてですもの」

「初めて飲むお茶ですがこれは」

「お茶は伯父様、マール公爵からのお土産ですわ。マール公爵領で新しく売り出されたものですわ」

「さすがマール公爵家。また新しい物を取り入れますのね」


リオがお茶に興味はないので伯父様はよく私に送ってくださいます。リオも嗜みとしてお茶についての知識はありますよ。必要なら流暢な言葉で称賛もします。あくまでも仕事として。

試飲が終わった茶葉の余りも良くくださいます。エディはお茶が好きなのでありがたく譲ってもらいルーンに帰った時に楽しむのも良くあることですわ。


「レティシア様、どうぞお話くださいませ。他言は致しません。ここは平等の学園ですもの」


私のマートン様への言葉を真似したブレア様に思わず笑ってしまいました。

利がないのに協力的で嘘のない笑顔や優しい表情を浮かべて頷く四人に心が和らぎます。仲良くなれて良かったですわ。お友達とはいいものですわね。


「ありがとうございます」

「レティシア様の満面の笑み、珍しいですわ!!」

「ブレア、落ち着きなさい!!」


ブレア様の突拍子のない叫びはいつものことなので気にしません。

エイミー様とレオ様の逢瀬の話をすると、四人の目が輝いていきました。この手の話は令嬢の大好物です。


「リール様と殿下が一緒にバイオリンを演奏されているのは知ってましたが、まぁそんな素敵なことが」

「レオ様はリール様の気持ちに気付いてないとは」

「殿方は鈍いものですわ」


後ろ盾のない不遇の王子と学園で一番人気のご令嬢のロマンスがいつの間にか出来上がっていました。想像以上の食いつきぶりに少しだけ引いています。でもフラン王国の未来のために二人には結ばれて欲しいですわ。王子が変態なんて嫌ですわ。そんな私の本音は決して言葉に出しませんわ。知らなければ幸せななことですから。


「私は疎いので協力していただけたらと」

「純愛物語をたくさんお持ちのレティシア様がご謙遜を・・」


サリア様の笑みに首を横に振りながらお茶を飲み心を沈めます。読んでいませんので知りませんが話のほとんどは嘘ですわ。うちの派閥の過半数の夫人達の妄想で書き上げられていますわ。

残念ながら私は恋の話は不得手です。興味がないので恋愛小説さえ読んだことがありません。


「純愛物語?」


ハンナが首を傾げてます。


「ハンナには後で、教えてあげるわ。ハンカチの用意をしてね」

「ハンナ、その話は誇張されほとんどが妄想で綴られていますから信じないでくださいませね。私達にはロマンスなんて一欠けらもありませんわ」

「よくわかりませんが、私はレティシア様に協力しますわ」

「ありがとう」


脱線した話を戻し、快く協力していただけることに安堵の笑みがこぼれました。ただし一つだけ忘れてはいけないことがありました。



「レオ様達と関わることで迷惑がかかるならば、私の名前を出してください」

「ご心配には及びません。私は伯爵令嬢です」

「レティシア様の後ろに隠れるようなことはしません。上位貴族ですもの。立ち振舞いは教え込まれております」

「失礼しましたわ」


美しい笑みを浮かべるブレア様とサリア様。


「うちは影響力がありませんので、どう取られても困りません」

「お気持ちだけありがたくいただきます」


愛らしい笑みを浮かべるステラにハンナ。ステラの言葉はある意味正論ですけど、堂々と言っていいことではありませんよ。

大事な友人です。それでも巻き込むからにはしっかり守らないといけませんわ。

シエルに定期的に探らせましょう。

4人の協力を得たので、音楽室で練習中のエイミー様のもとに突撃しました。

エイミー様に紹介し、カトリーヌお姉様の代わりに付き添うことをお伝えすると可愛いお顔で微笑み喜んでくださいました。是非その笑顔でレオ様をイチコロしてください。

これで二人の時間は守られますね。レオ様とエイミー様が同じ時間を共有し絆を育んでいただけるように祈りましょう。

エイミー様と意気投合した四人に別れを告げて、私は中座しました。

私はテンションについていけませんでしたわ。

まだ暗くなるまで時間があるので図書室に行きましょう。

調べたいことがたくさんあります。


「ルーン様」


私の前で足を止めた少女に見覚えありません。髪が短く、乱れているから平民?


「はじめまして。わたし、」


これは貴族ではありませんね。緊張している少女を怖がらせないように優しく見えるように微笑みます。


「ゆっくりでいいですわ。どうされましたの?」

「私、アナっていいます。ダンの妹です」

「まぁ!?ダンの妹ですか。貴方のお兄様にはお世話になっておりますわ」

「あのお嬢様にお願いがあるんです」


良く見ると目元にダンの面影がありますわ。昔の無礼なダンを思い出してしまいますわ。

そういえば妹が入学試験を受けるって聞いていましたわ。


「ダンの呼び方が・・。レティシアで構いませんわ。ルーン領民なら私に遠慮はいりません。どうしました?」

「お勉強を教えて。難しい、」


お勉強?まだそんなに難しくないはずですがまぁいいでしょう。


「構いませんわ。場所はアナの教室でいいかしら?」


平民のアナが目立たないのは教室かしら。


「ありがとうございます。全然わからないんです」

「私もダンにはたくさん教えていただきましたわ。諦めずに頑張る姿は素敵ですよ。一年生のお勉強なら私が教えられますわ」


ダンの妹なら私がダンの変わりに面倒みますわ。

アナに案内され、1年3組に行きます。3組は平民や下位貴族が多いので私が混ざっても目立たないかもしれません。教室には数人の生徒が残っていましたが私が知っている方は誰もいません。


「何がわからないか教えてくれる?」

「教科書の意味が」


入学試験どうして受かったのかな?アナの言葉に驚きを隠して笑みを浮かべて席に座らせます。

隣の生徒はもう帰ったようなので椅子を借りました。


「入学試験の内容は意味がわかった?」

「問題と答えを覚えていたので、意味はよくわかりませんでした」


納得しましたわ。ダンも記憶力良かったですね。

意味もわからず模範解答覚えるなんてすばらしい記憶力ですわ。

これはアナ達のような意欲がある子のためにお勉強教室でも開きたいですわね。

ルーン公爵領の平民の子供が何人か今年は入学しているはずですが大丈夫でしょうか。

入学前だけでなく後の支援も必要そうですわ。お父様と叔父様に相談してルーン領の子供達を育てる計画を見直さないといけません。私が在学中は私が面倒見ればいいでしょうか・・?

平民でもラウルのように優秀な子がいるかもしれません。才能や意欲があるなら学園で学ぶことで殿下のお役に立つかもしれませんわ。殿下の宝を大事に磨くのも臣下として必要なことです。


アナが気まずそうに見ています。顔に全てが出るところにダンを思い出しふと笑みがこぼれました。


「レティシア様?」

「記憶力がいいのね。素晴らしいわ。皆に追いつくまで時間かかりますが頑張れますか?」


先は長いけど、意欲があるなら協力しましょう。

ルーン公爵領の子供なら尚更です。

これは先輩としてとルーン公爵令嬢としての私の務めですわ。

コクンと頷いたアナに怖がらせないように優しく笑いかけます。


「アナが頑張るなら協力は惜しみませんわ。今日習ったノートと教科書を出してください」


アナはノートはきちんと写してありました。私達が習う内容とは大分違いますが。教科書の単語にはアナにとっては知らない単語だらけなんですね。それでも学ぼうとする姿勢に嬉しく思います。

アナの様子を見ながら、一つ一つの単語を解説していきます。

教室に残っていた生徒の視線を集めてます。言いたいことのありそうな少年に視線を向けて、


「どうされました?」

「僕もわからなくて」

「アナ、構わないかしら」

「うん」

「私もお願いします」

「私も!!」


残っていた生徒が集まって来ました。

勉強熱心で何よりですが、こんなに理解できていない生徒がいるのってどうなんですか!?

一年生は授業が始まったばかりなので、挽回はできますわ。

クラスによって求められるレベルが異るため先生達がこの子達にどこまで求めているかわかりません。この子達の様子を見ると先生には聞きづらいみたいですし。

受けるテストは同じですが基礎、応用、難解問題で組み立ててあるので基礎さえできていれば留年は免れます。ステイ学園は卒業するのは難しくありません。だからきちんと卒業できない者は貴族として認められません。

フラン王国の常識である建国神話から語りましょう。


「入学試験のお勉強からおさらいしましょう。すでにご存知の方は聞き流してください。もしも私の言葉でわからない時は、挙手して教えてください。別の質問のある方は後で順番に声をかけてくださいね」


建国神話を語り始めると少女達は目を輝かせて聞き入っています。そして質問への応答を交えながら話をします。領に寄って信仰する精霊は異なります。アナはルーン領出身のため、4大精霊というものから理解できていませんでした。水の精霊ウンディーネ様以外はよくわからなかったみたいです。

領民の教育をもっとしっかりしないといけません。

入学試験は突破できたのに理解できてない生徒がこんなにいますのね。でも学園にいるから意欲はあります。

将来、この国の未来はきっと明るいですわ。

笑みがこぼれますわね。きっと殿下の治世のお役に立ちますわね。

窓の外が暗いことに気付き、建国神話を話すのをやめました。


「もう遅いのでここまでにしましょう。もし時間があるなら明日の放課後もお付き合いしますわ」

「レティシア様、ありがとうございます!!」


笑顔でお礼を言いながら参加表明する意欲のある後輩達に頬が緩み慌てて令嬢の仮面を被ります。

ただ気をつけないといけないことがあります。


「後輩を手助けするのは先輩の義務です。困った時は相談してください。ですが一つお願いがあります。私がここでお勉強を教えてることを広めないでいただけますか?」

「内緒?」

「聞かれたら答えていいけど、自分からは言わないでください」


私を嫌っている方々に目をつけられないようにしないといけません。非常識な方が多いので、油断はできません。ルーン公爵令嬢が1年3組で勉強を教えていることを広めるのは危険ですわ。


「勉強に困ってる友達を連れて来るのはだめですか?」

「お友達を連れてくるのは構いません。勉強したい方は大歓迎ですわ。噂を自分から広めないと約束さえしていただければ。今日は遅いからここまでにしましょう。わからなくても授業でノートだけはとっておいてくださいね」

「わかりました!!」

「遅くまでお疲れ様です。気を付けて帰ってください」


辺りは暗く、明日はもっと早く切り上げないといけませんね。

玄関に濃紺の髪色を見つけて近づくとやはりリオでしたわ。


「リオ兄様、今帰りですか?」

「あぁ。シアの靴があったから待ってた。遅かったな」


わざわざ待っててくれましたのね。本当のことは言えませんので笑みを浮かべてごまかします。


「勉強していましたら、うっかりしてましたわ」

「シアは集中すると周りが見えないからな。今度遅くなるとき呼んで。シエルがいても心配だ」


昔から変わりませんね。優しさに嬉しくなりせっかく落ち着いた笑いがまたこみあげてきましわ。アナ達の前では我慢しましたが今はリオと二人だけです。周りに人の気配もありませんし我慢しなくていいですよね。素直に笑ってしまいましょう。


「リオ兄様は心配性ですわ。わかりましたわ」

「シアが可愛いから仕方ない」

「相変わらず優しいですわね。ありがとうございますわ」

「ご機嫌だな」

「私のリオ兄様の優しさが嬉しくて」


不思議そうな顔をするリオに抱きつくと一瞬リオの体がビクっと緊張しました。すぐに背中に腕がまわり優しく頭を撫でられます。


「そろそろ帰ろう。送るよ」


頼りになる従兄のそっと出す手に手を重ね笑みを浮かべたまま頷きます。

学園でリオのエスコートで歩くのが当たり前になるとは思っていませんでしたわ。

今日は幸せな日でしたわ。エイミー様達のことをリオに報告するとブレア様達に任せて大丈夫だと頼もしく頷いてくれました。私が入ると空気を壊してしまうのでリオの言うようにお任せするのもいいかもしれませんわ。やはり私には恋というものはわかりません。イチコロの脅威は知っても恋など一生知りたくありませんわ。恋は盲目。見えない世界の一員になった私はどうしても良い物とは思えませんわ。

リオに寮まで送ってもらいました。リオから寒気を感じることもなく今日はいつものリオで良かったですわ。

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