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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第四十九話  追憶令嬢12歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンです。

自衛能力をつけたい公爵令嬢です。


長期休みに入り学園内の味方を増やす方法を相談するためにマール公爵夫人に面会を求めました。


「伯母様、お時間を作っていただきありがとうございます」

「私も可愛い姪に会いたかったのよ」

「私も伯母様にお会いできて嬉しいですわ」

「まだ学園も始まったばかりなのに中々大変そうね」


穏やかに笑う伯母様の言葉に苦笑するしかありませんわ。

伯母様は学園での出来事もご存知なんですね。


「運が悪いだけと思っていたんですが、私が生徒達から嫌われているのも原因みたいです。社交のコツを教えていただきたくて・・」

「レティも大きくなったわね。私は伯爵家出身だからそんなに苦労はしなかったわ。全ての方に好かれる令嬢はいなかったわ。アリア様でさえもね。好みや相性、派閥もあると尚更」


伯母様が考え込んでいますが悩んでる伯母様も美しいです。突然銀の瞳が細くなり口角がニンマリと上がり企んでる時のリオにそっくりな顔をされました。見間違いかと目を閉じてもう一度確認すると美しい顔で考えこんでいたので気の所為でしたわ。私は疲れてましたのね。


「まずはどこから攻略していくかね。レティ、学園で一番に敵に回していけないのは誰かしら?」


穏やかに笑う伯母様からの問題。


「殿下ですか?」

「違うわ。学園内では殿下の権力も使えないことが多いわ。一番権力があるのは?」


平等精神の学園。その精神を殿下は忠実に守ります。生徒会?生徒会の上にいるのは、


「学園長?」

「正解よ。学園長と先生方ね。成績優秀、品行方正に過ごし問題をおこさなければ、」

「伯母様、私はすでにもう問題は起こしてますわ」

「あら・・・。貴方は学園では優秀と聞いているから、先生方には嫌われてないと思うわよ。これからも励みなさい。先生方を味方につけておけば学園生活は安泰よ」


伯母様はやはり学園の情報も集めてるんですね。

私は先生の評価は知りませんでしたわ。


「わかりましたわ」


うっかり頷いてしまいましたが、先生方を味方に?

生前も先生方には好かれていたと思うので大丈夫です。

今後は成績優秀、品行方正でいきましょう。

ただ今世は問題を起こしたくないのに気付いたら起きてますのよね・・。


「どの令嬢とも波風立てず、受け流すことも大事だけど、レティには難しいわよね・・・。ローゼに似て好戦的なところもありますし」


伯母様が何か呟いていますが聞き取れません。


「伯母様?」

「社交は経験よ。できるだけ色んなお茶会に出て、夫人や令嬢達と親交を深め攻防戦を観察なさい。レティは今までは最低限のお茶会にしか参加しないでしょ?この夏休みは社交の特訓ね」


伯母様がお母様と同じ目になりましたわ。確かに私が参加するのはお父様の命令のお茶会ばかりでしたわ。お母様のスパルタコースを思い出しゾクリと寒気がしますわ…。

でも大事なことを言わないといけませんわ。


「ターナー伯爵家に行きたいんですが・・」

「修行ね。ローゼに指導はできないものね。1週間くらいなら・・。

夏休みの予定は伯母様が組んであげるわ。レティがお茶会を主催してもいいけど追々ね。」


伯母様が素敵な笑顔で提案しますが怖いです。

やっぱり伯母様もお母様のお姉様。

ターナー伯爵家はスパルタですの?

寒気が止まらず目の前のお茶に口をつけますが体が温まりません。

この感じの伯母様はきっと止まりません。頑張るしかありませんわ。

夏休みは修行と脱貴族計画だったのに予想外の展開ですわ。

覚悟を決めるしかありませんわ。


「よろしくお願いします。伯母様」


「最初は友好的なお茶会に連れていくから安心して」


最初は・・?不穏ですが逆らえない雰囲気です。

そして私の連日お茶会という過酷な長期休みが始まりました。

しかも長期休みはお母様の代わりの仕事も回ってきます。

お母様はエディの特訓で忙しく、お父様に申しわけないと謝れらました。

今のお母様はお父様でも止められないみたいです。

生前はお父様に謝られることはなかったのに今世は多いですわね。

生前は殿下の婚約者の務めで忙しかったですし、今世はルーン公爵家令嬢の務めを果たしましょう。

ですがお父様からご褒美に1日だけ外出許可をいただきました。

安全のためリオが一緒の条件ですが。

リオには申し訳ありませんがお父様からご褒美なんて初めてで嬉しいですわ。

夏休みの楽しみが一つできたので、この社交地獄を乗り切りましょう。



本日はリール公爵夫人主催のお茶会です。

何度か呼ばれたお茶会よりも規模の大きいお茶会です。

私はお茶会に来ましたのに、今日もバイオリンの指導を受けてます。

他の方々はお茶会をしている後で私はバイオリンを演奏しております。

横でリール公爵夫人に指導されながら。

招待客の皆様は誰も気にしてません。お茶会の規模が大きくなっても誰も突っ込みは入れないんですか?先に着席していた伯母様が笑顔で見守る体勢に入ったので諦めましたが。

個人レッスンなら光栄ですが、お茶会でのレッスンはご遠慮申し上げたいですわ。

恐れ多くて言えませんけど!!

伯母様、やはり止めて欲しかったですわ。


「うん。よくなったわ。今日はここまでにしましょうね」

「ありがとうございます。リール公爵夫人。」

「次までに今日の感じを忘れないように練習してね」

「はい。ご指導ありがとうございました」


次もありますの?これはリール公爵家に訪問するたびに毎回繰り返される会話です。

顔には出さずに、茶席にいらっしゃる皆さまにご挨拶をして、伯母様の隣に座ります。

伯母様はいつも微笑んで労ってくださいます。


「レティ、お疲れ様」

「伯母様、私はバイオリンを弾いてて良かったのですか?」

「主催に誘われたら断るのは無礼よ。音楽の名家は尚更ね。レティ、社交はこれからよ。しっかりなさい」

「わかりました」


伯母様からお母様にそっくりの課題を出す時の顔を向けられ、令嬢モードを装備し直して気合いを入れますわ。


「ルーン様、また腕をあげられましたわね」


伯爵家夫人から声をかけられましたわ。

貴族はどんなことも笑顔で受け流します。心の籠っていない社交辞令に照れた笑顔で口を開く。


「ありがとうございます。リール公爵夫人とエイミー様のおかげです」

「レティシア様、うちのエイミーをありがとう。あの子は妹ができたみたいって喜んでたわ」

「エイミー様にはよくしていただいています。妹など恐れ多いですわ。エイミー様のような素敵なお姉様ができたら幸せですわ。学園中の令嬢達の憧れの的ですわ」

「うちの息子の嫁にきます?絶賛募集中ですわ」


返事を間違えたんでしょうか?リール公爵夫人の可愛らしい笑みに、よわよわしい笑顔を浮かべ微笑み返します。

これはどうすれば穏便にすませますかね。

私は昔から婚約者がいましたので、縁談を穏便に断る方法なんて知りませんわ。縁談を勧められたこもはありませんわ。


「マール様とルーン様を応援する会はどうします?」


侯爵夫人の言葉は助け舟でしょうか?

このまま弱々しい表情で受け流しましょう。


「難しいわ。レティシアが義娘になるのも捨てがたいわ。どうしましょう」

「リール公爵夫人、レティシアはマール公爵家の嫁ですよ。婚約者に名乗りあげるなら、うちの息子がお相手しますわ」

「武術ではうちの息子に勝ち目はありません。想い合う二人を引き離すのは美しくありませんものね」

「思い留っていただけてよかったわ」

「レート様の茶会の二人の演奏は素敵でしたわ。マール様のリードを必死に追いかけるレティシア様。

レティシア様のメロディーが迷うと寄り添って導くマール様。息もぴったりでしたし二人の愛の深さが伝わってきましたわ。マール様の腕もすばらしく、私がバイオリンの名手に育てますから、二人を貸していただけません?ローズ?」


目がギラギラしているリール公爵夫人。

普通に演奏していただけですわ。私は演奏に迷ってませんがリオが演奏中に遊んだことですか?

これはリオのリードに合わせて弾いたことですの?

全然意味がわかりませんがリール公爵子息との縁談は流れてよかったですわ。

自然な流れで話題転換するのは流石伯母様ですわ。私にはできませんわ。


「リオもレティシアも忙しいのよ。名手になるには、長い期間の修行が必要でしょ?息子は一つを極めるより、色んなことを身に付けるほうが好きですのよ。バイオリンはこれ以上極める気はないと思いますわ。レティシアがリオと一緒にバイオリンの名手になりたいってお願いすれば話は変わりますけど」


伯母様の言葉に一気に私に視線が集まりました。

リオは私がお願いしても聞いてくれませんわ。

笑顔でお断りされますわ。動揺が顔に出そうになるので、気を取り直して淑女の笑みを浮かべます。

リール公爵夫人のギラギラした目が怖いです。

伯母様には試すような視線を向けられ、これは・・。修行ということですね。


「レティシア様、どうかしら?マール様と一緒に名手を目指しましょう!!」


直接お断りするのは失礼です。

リール公爵夫人は認めたくないけど私達を見守る会の会長。

気弱そうな令嬢の表情をつくり視線を段々下げて、お茶を見つめます。


「とても光栄なお話ですが、私のためにマール様に我慢を強いるのは・・・。」

「まぁ!?マール様が大事ですのね。健気ですわ!!わかりましたわ。マール様は諦めますわ」

「申しわけありません。リール公爵夫人」


意外に簡単でしたわ・・。顔を上げるとなぜかさらにリール公爵夫人の目が輝いてる気がしますが。

伯母様の顔を見ると、微笑んでいるので合格みたいですわ。

波風を立てずにお断りできて良かったですわ。



「仲が良くって素敵ですわ」

「私も学園でお二人の様子を拝見したいわ」


他の夫人達も加わり、よくわからない妄想で盛り上がっています。

空気が温まっているので、思い切って聞いてみます。

ここは同派閥のお茶会。伯母様もおり私に好意的な夫人ばかりですので多少の失態なら許されますわ。

ある意味一番安全なお茶会です。


「私とマール様が一緒にいるのは周りの方々に嫌がられるのですが、不快ではありませんか?」

「ルーン様はもう洗礼を受けてますのね」


夫人達が楽しそうに笑っているので、聞いても問題ない話題のようですわ。


「お似合いの二人に嫉妬してるだけですわ。気にする必要はありませんわ」

「婚約者と仲睦まじいのは素敵なことですわ」

「貴方達を暖かく見守ってる方たちもたくさんいますわ。そんなに心配しなくて大丈夫ですわ」


よくわからないですが、一番知りたいのは、


「一緒にいても、マール様に迷惑はかかりませんか?」

「ルーン様、可愛いですわ。ありえませんわ。こんな可愛い婚約者が傍を離れる方が悲しみますわよ。ねぇ、マール公爵夫人」

「そうですね。お恥ずかしながら、息子の方がレティシアを追いかけてますから、距離をとるのは難しいと思いますわ」

「まぁ!!」

「レティシア様、安心してマール様の傍にいらして大丈夫ですのよ」


私、別にリオに追いかけられてないですが…。

お父様にリオがお目付け役を頼まれているからですか?


リール公爵夫人のお茶会でわかったことがあります。

理由はわかりませんがリオと仲良くするのは心象が良いみたいです。

これが私の味方を増やすことにつながるかわかりませんが試してみる価値はありますよね。

全然良い作戦が思いつかないので、思いついたら試してみるしか策がありませんわ。

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