第四十五話 追憶令嬢12歳
ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。
平穏な生活を夢見るステイ学園の一年生です。
学園行事の茶会から一月が経ちました。
茶会で不正があり、調査が進められいましたが首謀者がわかりません。
パドマ令嬢が疑われていましたが証拠が見つからず、パドマ公爵から抗議が入り調査は打ち切り。
不正を事前に見抜き、公正な茶会が行われたので問題ないだろうという先生方の判断です。
どうかと思いますが、先生と生徒会の皆さまが納得されているならこの件は終わりです。
生徒会はクロード殿下と上位貴族で運営しているので逆らう生徒はいませんわ。
特に殿下が生徒会長をしている期間に逆らう生徒はいないでしょう。
殿下とリオが共に調査をして首謀者がわからないなんてことがあるんですね。
世の中、何が起こるかわかりませんわ。
まぁ終わったことは気にするのはやめましょう。
今はお昼の時間です。
食事はいつも一緒のセリアとカーチス様、スワン様と時々現れるレオ様、ラウル、リオが混ざり賑やかです。
先程からカーチス様がリオに縋りついています。
涼やかな笑顔で一刀両断しないところをみるとリオもカーチス様を気に入っているんですかね。
「マール様、お願いします。ターナー伯爵を紹介してください」
「俺に言われても・・。カーチス侯爵と叔父上は折り合いが悪いだろう?」
「俺、平民のフリします」
「無理だ」
「ターナー伯爵は国一番の目利きですよ。指導力も、」
「叔父上以外もいるだろう」
「いません」
「長期休みに聞いてみるよ」
リオがサラリと言いました。適当にあしらってる気がしてなりませんわ。
お茶を飲みながら二人の様子を眺めてましたが気になる言葉がありました。
「リオ兄様、ターナー伯爵家に修行に行くんですの?」
「まだ叔父上から一本とれないから。仕事を調整して二週間は行きたいと思ってる」
お茶を飲みながら苦笑するリオ。リオとの差がどんどん広がっていきます。たぶんエイベルも長期休みは伯父様のところですよね。ターナー伯爵家に滞在中はよく会いましたもの。おねだりしたら連れて行ってくれないでしょうか。リオはお父様のお気に入りですし、
「私も行きたいです。リオ兄様」
リオをケイト直伝の上目遣いでじっと見つめます。
効果がないですが、日頃の修行が大事です。お友達で師匠の言葉は信じますわよ。ケイトは嫌そうな顔をしてもいつも最後は笑ってお願いを叶えてくてますもの。
「母上達にシアのことも相談してみるよ。俺と一緒なら許可がでるだろう」
リオの銀の瞳が細くなり、頷きましたので私の勝利ですわ。ケイト、今回は成功ですわ!!
嬉しいです!!最近はさらに成功率が低くて自信をなくしていました。エイベルにも効かなくなりました。あまりの嬉しさに笑みがこぼれますわ。人前なので感動しても抱きついたりはしませんよ。
「ありがとうございます」
「シアが喜ぶならいくらでも叶えるよ」
「俺を使用人としてお連れください!!」
「クラム、邪魔するな。無謀だよ。使用人試験受からないから」
カーチス様の頭をスワン様がパコンと叩きました。
カーチス様は先ほどのリオの了承は信じてないみたいです。真剣なお顔で必死に頼むカーチス様の気持ちはよくわかります。私もターナー伯爵家への修行の許可が降りずに大変でしたもの。
ロキを保護した時以来、社交以外の外出許可は伯母様経由のお願いしか敵いません。社交以外で訪問するのはセリアの家くらいですし、時々リオが連れ出してくださるのでそこまで不便はないんですが。
ただ修行に関しては別です。
いつもお世話になってますし、なんとかできないでしょうか…。
隣で食事をしているリオはカーチス様のために伯父様を説得する気はあんまりなさそうです。でも隣に座っているリオの機嫌も良さそうですし今のリオならお願いすれば相談には乗ってくれるでしょう。今日はデザートにうちの料理長自慢のチョコケーキをリオのために用意させましたし。リオがチョコケーキを食べ終わったらお願いしてみましょう。
カーチス様の言葉を流しているリオがチョコケーキを食べ終わり、お茶を飲んでいるのでそろそろいい頃合いですわ。
「リオ兄様、伯母様にお願いすればなんとかなりませんか?」
「母上を通せば叔父上もシアの友達の頼みなら聞いてくれるかもしれないな」
「私は伯母様に一生懸命お願いしますわ!!」
「いいよ。俺が聞いてやるよ」
この頼もしい笑顔の感じは大丈夫ですわ。きっと説得してくださいますわ。チョコケーキ効果は絶大ですわ。
カーチス様、私やりましたわ!!嬉しくて笑みがこぼれますわ。
カーチス様に向き直ろうとすると突然抱き寄せられて胸に顔を埋めさせられました。
「シア、その顔はここではやめて。いや、わかんないよな。なんでもない。悪い。気にしないで。スワン、許可が出れば同行してくれないか?」
「わかりました。クラムの保護者ですね」
「すまないな」
リオの胸を押して顔を上げるとリオとスワン様が二人で見つめ合ってます。
この二人もよく二人の世界を作るので仲良しです。
私もスワン様とはお友達ですがここまで親密にはなれていません。見つめ合って世界を共有することはありません。
やっぱり人脈作りはリオの方が上手いですね。
リオには敵わないことばかりです。
私の方が年上なのに…。
平凡な私は幾つになっても、優秀なリオに敵わないのは仕方ありませんので気にするのはやめましょう。
「マール、俺も行きたい!!」
「レオ様、陛下から許可が降りないのでは?」
「俺は行事以外は学園か離宮にいるだけだから、出かけても見つからない」
「護衛の関係で厳しいと思います」
目を輝かせたレオ様の頼みをリオは笑顔で一刀両断しました。
流石リオですが、不敬罪になりません?
レオ様を非公式でお招きすることはできませんわ。レオ様の気持ちはわかりますが、
「レオ様、休みは私は学園で過ごします。レオ様がいらっしゃらないと寂しいので、一緒にお留守番していただけませんか?」
「ラウル、俺がいないと寂しい?」
「寂しいです。長期休みはいつもより時間に余裕があるので一緒に過ごせるかと楽しみにしていたんです。自由研究を一緒にやりましせんか?」
「そうか。わかった。学園に残るよ」
「公務とサラ様に会いにいくのは忘れないでくださいね」
「わかってる」
ラウル、見事ですわ。
レオ様が嬉しそうに笑っています。レオ様はラウルが大好きです。
最初は心配していましたがラウルとの関係がうまくいってるみたいでよかったですわ。外見は真逆なのに飼い主と犬のように見えてしまうのは内緒ですわ。
どうしてこんなに単純いえ素直な方が将来変態になるのでしょうか・・。
ラウルにレオ様を育ててもらえば変態になるのは回避できるでしょうか。他力本願はいけませんわ。私もレオ様の情操教育頑張りましょう。円滑な友人関係を築き空気を読めているので今のところ安心ですわ。
「俺の目に狂いはなかったな。ラウルありがとな。いつでも力を貸すから頼ってくれ」
ラウルすごいですわ!!リオのお気に入りに認定されましたわ。
リオは身内以外に厳しいので、無条件で自分から手を貸すことなんてありえませんわ。
リオは優しいですが貴族としての立ち位置を優先します。
手を借りたければ、うまく手回しが必要になります。
貴族は家の利がない限りは、他人のためには動きません。
自分のことばかりな私が言うのもおかしい話ですね。
私は身内枠なのでリオに面倒をみてもらえています。
血の繋がりに感謝ですわ。
お母様、伯母様ありがとうございます!!
「ありがとうございます。お気持ちだけで十分です。マール様」
控えめに笑うラウルはなんて良い方なんでしょう。
こんなラウルに言いがかりをつける方など、私が撃退してあげますわ。
シエルに情報を集めさせましょうか。
「シア、余計なことはするなよ」
「リオ、心を読むのやめてくださいませ」
「わかりやすいのが悪い。怒るなよ。可愛い顔が台無しだ。」
「うるさいですわよ」
「ごめん」
もう少しで長期休みに入りますわ。
エディやケイト達は元気にしているでしょうか。
セリアが先程からつまらなそうな顔でこっちを眺めながらお茶を飲んでいます。
リオに不満をこめて睨むと宥めるように頭を撫でられました。私にはエセ紳士モードは効きませんわよ。
監禁を華麗に回避して平穏な生活が送れるように今日も頑張りましょう。




