表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/207

第四十二話 後編  追憶令嬢12歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンです。

平穏な生活を夢見る公爵令嬢です。


今日は茶会2日目です。

初日のメインはカトリーヌお姉様の茶会でした。

本日のメインはパドマ様の茶会でしょう。公爵令嬢の茶会は注目を集めないと評価が下がるので、茶会が始まる前から駆け引きが行われ見学者を集めるために動いています。

カトリーヌお姉様のお茶会はうちの派閥の令嬢はもちろん平民の生徒も見学に来ていたそうです。

私はセリアと一緒に茶会の見学に回ってます。さすがにルーン公爵令嬢が茶会に興味を示さないのは外聞が悪いのでうちの派閥の令嬢の茶会を、最初だけでも見学に回っているフリは大事ですよ。


「セリア、昨日は来てくれてありがとう」

「久々にレティの演奏を聴きたかったし、おもしろそうだったから」


正直、セリアが今日も見学に回るとは思いませんでした。何か閃きを探しているのかもしれません。セリアが綺麗に微笑みましたか、どこに面白い要素があったのでしょうか?リオの意地悪くらいしか変わったことはなかったと思いますが。


「おもしろそう?」

「レティとリオ様に妄想を巡らせる令嬢達の観察、リール公爵夫人の暴走を優雅に止めるマール公爵夫人、殿下がレティに近づこうとするのを可憐に止めるレート様、令嬢達のアピールに全く気付かない殿下、令嬢達の争いをさりげなく止めるレート様、喜劇の台本になりそうなくらい滑稽だったわ。レティの演奏を1曲聴いて帰ろうと思ってたんだけど中盤まで見入ってしまったわ。残念ながら途中でカーチス様達が令嬢に絡まれたのに巻き込まれて最後まで見れなかったけど…。最後までいたらリオ様対殿下も見れたかしら?」



綺麗な笑みで首を傾げるセリアの言葉に寒気がして、自分の体を抱きしめました。私は途中から演奏に集中したので客席はほとんど目を向けませんでした。伯母様以外は視線を向けたくありませんでした。殿下の笑みなんて見てませんわ。


「そんな物騒な茶会でしたの!?リオは殿下と対決なんてありえません。不敬です」

「残念ね。パドマ公爵夫人は自分の娘を殿下に薦めてたけど今更よね。謹慎になった醜聞持ちの王妃なんてありえないもの」


パドマ様の非常識は夫人譲りなんですね。もうどこから突っ込んでいいかわかりませんわ。王妃は表面上は清廉潔白さを求められます。学園で罰を受ければアリア様による殿下の婚約者選びのお茶会に招待されることはないでしょう。


「カトリーヌお姉様のお茶会で、なんて失礼な…。でもその茶会の主催が自分だったらゾッとしますわ」

「レティのお茶会も荒れそうね。演奏はエドワード様かしら」

「先のことはわかりませんが、それはないと思います。エディはバイオリンが上手ですけどその頃には姉離れですかね。荒れるのは嫌・・」


エディは頼もしいほどしっかり成長しています。夜会のエスコートもばっちりです、

社交も上手く、交渉もお手の者。幼いですがルーン公爵家嫡男は警戒されるので、魔力のない評価の低い私が脇の緩い貴族と親交を深め、空気を温めてから爽やかな笑みを浮かべたエディに交渉を任せます。つい数日前も伯爵家をうちの派閥に引き込みましたわ。これでルーンの研究が進みますわ。不便ですが魔力のない設定が便利なこともありますのね。うちのエディがこんなに小さい頃から優秀だったとは知りませんでしたわ。現実逃避に弟自慢をしているわけにはいけませんわ。

セリアが労わるように肩を叩いてくれたので笑みを浮かべます。


「まだ先の話しだからね。予想通りレート様の圧勝ね」

「まだパドマ様のお茶会があるからわかりませんわ」

「リール様を確保できなかった時点で負けでしょ。見に行く?」


楽しそうに笑うセリアの言葉に首を横に振ります。リール様が入学してから演者として参加する茶会は常に優勝に導くため勝利の女神と呼ばれるそうです。偶然よと愛らしく笑われていましたが無欲の勝利でしょう。演者の引き抜きから駆け引きは始まっているので。でもパドマ様も多くの取り巻きを持っています。パドマ様の派閥の在校生の票を全て集めれば上位入賞は果たされるはずです。

考えても仕方がないので思考はやめましょう。


「行きません。嫌な予感しかしませんもの」

「英断ね。レティは敵か味方しかいないもんね」

「作りたくて作ってるわけではありませんわ」


セリアの言葉は図星ですので曖昧に笑うしかありませんわ。


「ルーン嬢!!」


呼ばれる声に足を止めます。走って近寄ってくるのは…。ラウル?

ラウルが走るの初めて見ましたわ。ラウルは走れるんですね。礼儀正しいラウルの困っている顔を見て、厄介事の予感がします。またレオ様が何かしましたの!?


「ラウル?礼はいりません。どうされました?」


「ご、相談が、相談に、のって、いただきたいんですが」


息を切らしているラウルの相談なら私は頑張りますわ。意気込んで笑みを浮かべるとセリアに落ち着きなさいと肩を叩かれましたわ。強気な笑みを浮かべるのはやめて穏やかな笑みを浮かべるとラウルの後ろに女生徒がいますわ。


「もちろん、構いませんわ」

「できれば、人目がつかないところに」


確かに視線を集めていますわ。

ラウル達を連れて、会場から離れたサロンに移動します。

私の前に座っているのは困った顔をしているラウルに真っ青な顔の眼鏡を掛けている女生徒です。

シエルの用意したお茶に手をつける余裕はなさそうですわ。


「どうされました?」

「彼女は研究員のヘレナと言います。ヘレナはパドマ令嬢に目をつけられているんですが、パドマ令嬢のお茶会の招待客に選ばれました」

「ヘレナ様、もしよろしければ眼鏡を外していただけますか?私は貴方に危害を加えることはありませんわ」


ヘレナ様が恐る恐る眼鏡を外すと、整った顔立ちに青い瞳。ルーンの瞳程ほど深い青さはありませんが平民にしては美しい青い瞳を持っています。

パドマ様に目をつけられた理由も納得しましたわ。

パドマ様の瞳の青さは公爵令嬢にしては薄いです。瞳の色が濃く美しいほど魔力が強いと言われています。両殿下はもちろん、リオもエイベルもエディも濃く美しい瞳の色を持っています。


「ありがとうございます。ヘレナ様、眼鏡をかけていただいて構いません。困った時はいつでも生徒会に相談してください」


パドマ様、平民の生徒にも目を付けるなんて、お暇過ぎませんか?公爵令嬢としてありえませんわ。容姿が羨ましいからなんて。

二人に愚かな貴族が迷惑をかけていることを謝罪をしたくなりました。でも謝罪は後ですわ。優先すべきは茶会です。招待状をもらった招待客が辞退するなど前代未聞ですわ。茶会の空席、招待客が来ないのは招待を受ける価値のない茶会ということです。それを身分の低い者がすれば・・・。平等の学園で不敬と責められてなくても、学園でない場所で裁くのは簡単ですもの。うちもですがパドマ公爵家も裏工作は得意ですから。


「招待状はいつ届きましたか?」

「今朝」


ありえませんわ。招待状は極秘で一週間前に届けられます。

茶会の参加する生徒も事前準備がいりますから当日に招待などありえませんわ。

しかも公爵令嬢の茶会に平民が招待されることはありえません。上位貴族の茶会には上位貴族令嬢が招待されるという暗黙のルールがあります。マナーを持たない、お茶会とは関係ない世界に生きる方々相手に茶会を披露しても意味はありませんもの。慈善事業をするほど学園も暇ではありません。言葉が悪いですが求められるのは上流階級の方を満足させられるもてなしですわ。生徒会案件ですわ。


腕輪に魔力をこめます。

リオ、お休みにすみません。急用です。ラウルと一緒にお部屋に伺ってもいいでしょうか?

連絡するとすぐにフウタ様が飛んできて了承してくれました。



「これは私の手に余りますわ。生徒会に相談してもいいでしょうか?もちろんこの件で二人が裁かれることはないとお約束しますわ。パドマ公爵家よりもうちのほうが強いので、パドマ公爵家として動かれるならルーン公爵令嬢として私がお守りしますわ」

「構いません。お手を煩わせてすみません」

「気にしないでくださいませ。こちらこそ教えていただいて助かりましたわ」


こんな嫌がらせは見過ごせませんわ。

真っ青な顔のヘレナ様が茶会に参加したら、どんな嫌がらせを受けたか。

これ以上怖がらせないようにできるだけ優しい笑みを作ります。


「怖い思いをさせてごめんなさい。貴方を参加させるようなことはしません。安心して下さいませ」

「ルーン様」


いざとなれば私が代わりに参加しますわ。

砂の入ったお茶でも笑顔で飲みますわよ。公爵令嬢としてきちんとお相手しますわ。

了承が取れたのでラウル達を連れてリオの部屋に向かいます。


「レティシアです」


ノックをするとすぐに扉が開いてリオが出てきました。

後ろの三人をリオが静かに見つめてます。


「どうぞ。中に座って」

「お休みなのにすみません」

「大丈夫だから事情を話して」


リオに穏やかな笑みを向けられます。この感じは協力してくれますわ。恐縮するラウル達をリオの部屋に招き入れて椅子に案内します。

事情を説明するとリオが頷きました。


「この件は俺が預かるよ。殿下に報告に行くけどラウル達は一緒に来れるか?シアとセリアはどうする?」

「リオ様に任せてお暇します」


即答したのはセリア。ここまで一緒に来てくれただけでも珍しいですものね。

いつもなら、行ってらっしゃいって見送り終わりです。


「何かお手伝いできることはありますか?」

「生徒会で動くよ。目をつけられている件も含めて。シアは何も心配いらないよ」


頼もしい顔で頷くリオにお任せすれば大丈夫ですわ。

私にできることもありませんね。家の力は使わずにすむなら使いたくありませんわ。


「わかりました。リオにお任せして失礼しますわ」

「シア、昼はちゃんと食べろよ。セリア、悪いがシアを頼む」

「お任せを。レティ行きましょう」

「お仕事を増やしてごめんなさい」

「生徒会の仕事だから気にするな」

「ありがとうございます。やっぱりリオ兄様が一番ですわね」


殿下は関わりたくありませんし、エイベルは頼りになりません。

セリアがクスリと笑いながら手を出したので握って立ち上がります。セリアがリオの耳に囁きましたが気にしません。

ラウル達にできるだけ優しい笑みを浮かべて微笑み、礼をしてリオの部屋を出ました。二人が貴族嫌いにならないといいのですが・・・。

その後はセリアと一緒に食事をすませて、別れました。

久しぶりに図書室に向かいましょう。

調べたいことがたくさんあります。


「お嬢様!お嬢様!」

「シエル?」

「移動されなくて平気ですか?そろそろお時間では?」


壁の時計を見て目を丸くしました。

閉会式は令嬢は全員参加です。

優雅に見えるように、気を付けながら急いで足を進めます。

席に着くとすぐに壇上に生徒会役員の皆様が現れました。


「レティ、良かった。間に合ったのね」

「忘れてましたわ」


セリアが溜息をつきましたが、私が悪いので仕方ありませんわ。


閉会の挨拶と学園長の言葉が終わり後は生徒会長のクロード殿下の挨拶と結果発表で終わりますね。

クロード殿下が黒い笑みを浮かべて辺りを見渡しました。機嫌が悪そうですね。悪い理由はわかりますよ。殿下の統治する学園で不正が行われるなんて、臣下として恥ずかしい事態ですわ。


「皆さんお疲れ様でした。各々が趣向をこらして、素晴らしい茶会だったと思います。私もゲストとして何件か参加しましたが、我が国のもてなしとして満足いくものが多かったと思います。これから先生方からの評価がありますので、参考にしてより高度なものを主催できるようになってもらえると、我が国の未来は明るいものになるでしょう」


殿下?

満足いかないものもあったから、もっと勉強してくださいって…。

評価として、満足してないって言っておりますがいいんですの?

周囲の令嬢達は穏やかに見える殿下の笑みに騙されて頷いてます。演者に選ばれた生徒がありがたいお言葉に喜んでますが、褒められてませんわよ。


「ただ悲しいお知らせがあります。今回の茶会に不正がありました。調査中ですが、詳細を知っている生徒は生徒会役員に情報提供をお願いします。間違いは誰にでもあります。自ら名乗りあげ、反省の意を示すなら情状酌量も考えています。反省の意がないなら、慈悲はないと思ってくださいね。私の話はここまでです。お疲れ様でした」


穏やかな笑みを浮かべて話す言葉は棘が含まれています。殿下は優しいですが甘い方ではありません。

ヘレナ様の件で自首しないなら取りつぶしも覚悟しろということですわ。



結果発表では、一位はカトリーヌお姉様、二位は伯爵令嬢、三位は侯爵令嬢でした。

三家ともうちの派閥のご令嬢です。

パドマ様は駄目でしたので。伯爵家に負けたのは公爵家としては屈辱的な結果だと思いますす。

優勝したカトリーヌお姉様の挨拶が終わり閉会の宣言をして茶会はおわりました。。


カトリーヌお姉様、おめでとうございます!!流石ですわ。

これで肩の荷がおりましたわ。バイオリンの練習の日々から解放されますわ。

茶会は無事に終わりましたが、リオにたくさん迷惑をかけたので料理長に頼んでチョコのお菓子の詰め合わせを用意しましょう。

明日から平穏な日が待っているといいですわ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ