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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第三十四話 後編 追憶令嬢12歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。


午前の授業も終わりお昼の時間ですわ。

今日も令嬢達は元気がよく廊下に騒がしい声が響いていますが気にしませんわ。

カーチス様とスワン様はいつも食堂に行きますが今日は違うようです。カーチス様の侍従が控えているので教室で食事されるのかしら?


「カーチス様達もこちらで?」

「一緒にいいか?」

「もちろんですわ」


四人で食事をするのは初めてです。

カーチス様の侍従とシエルが食事の席を作ってくれます。

セリアは侍女を連れていないのでセリアの昼食もシエルが用意しています。手が必要な時はセリアにシエルを貸します。私のシエルは優秀なのでセリアが頼りにするのは仕方ないことですわ。

シエルの淹れた美味しいお茶を飲みながらカーチス様の楽しい話に耳を傾けているとセリアに肩を叩かれました。


「レティ、お客様よ」


恐る恐る椅子に座ったまま振り向くと、後ろにリオがいて驚きました。

教室の入り口には誰もいません。廊下を騒がしていたのはリオだったんですね。気配なく後ろに立つのはやめてほしいですが笑みを浮かべて礼をします。


「ごきげんようリオ兄様、どうしました?」

「体は大丈夫か?」

「大丈夫ですわ」


リオの長い腕が伸び、お腹が背中に当たり肩に頭を乗せられ長い腕は私の胸の前で組まれています。体重がかけられ、のしかかられています。ナギならかわいいおんぶですが、リオのは違いますわ。重いですし、体格差を考えてくださいませ。


「シア、俺に友達を紹介してくれないの?」


カーチス様とニコル様が立ち上がります。リオ、それは人にのししかかりながら言う言葉ではありませんわ。礼儀を思い出してくださいませ。


「お初にお目にかかります。カーチス侯爵家クラム・カーチスと申します」

「スワン伯爵家ニコル・スワンと申します。お会いできて光栄です」


「俺のレティシアが世話になっているな。マール公爵家リオ・マールだ」


もう耐えられません。挨拶の際に口を挟むのはマナー違反でも、このままならさらにお行儀悪く潰れますわ。


「リオ、重いですわ!!」


体重をかけないでくださいませ。真横にある顔を睨むとリオの視線はセリアに向いています。


「セリア、この二人は?」

「今のところ白」

「わかった。ありがとう」

「リオ様、相変わらず余裕がないわね」

「可愛い婚約者を持つと苦労するだろ?」


セリアとの話に夢中なところ申しわけありませんが、全然私の言葉を聞いてくれないリオをさらにきつく睨みます。


「リオ、重い!!離してくださいませ」


「悪い。俺はお前しか見てないから、怒らないで」


リオがようやく私のほうを見て悪戯に成功した子供みたいな顔をします。

腕が解かれて、体が軽くなりました。

セリアが胡散臭い目で見てますわ。リオのエセ紳士モードはやはり違和感があるので気持ちもよくわかります。カーチス様達もリオに呆れて固まってますわ。

食事を再開しましょう。もうお昼休みも半分の時間が過ぎてますわ。


「リオ、お食事は?」

「これから」

「シエル」

「大丈夫です」

「一緒に召し上がりますか?いいでしょうか?」


セリア達に確認をとると三人が頷き、シエルがリオの食事の用意を始めました。


「お言葉に甘えようかな。あれは…?」


リオの視線が扉の方に。

視線を追うと見覚えのある髪色、もしかして…。


「先に食べてください。少々失礼しますわ」



食事中に立ち上がるのはマナー違反ですが、セリア達なら大丈夫でしょう。立ち上がり廊下に行くとやはりレオ様がいらっしゃいました。礼をして笑みを浮かべます。


「レオ様ごきげんよう。会いに来てくれましたの?」

「今日から復帰って噂を聞いて。体は?」


心配そうな顔をするレオ様はやはり変態ではありませんわ。優しい気遣いに明るい未来を想像して、笑みがこぼれます。


「大丈夫ですわ。大事をとって休んでいただけですわ。証言ありがとうございました」

「事実を言っただけだから」


見て見ぬフリをしないで、生徒会の調査に協力してくれただろうレオ様に嬉しくなります。


「それでも感謝しております。レオ様、お時間ありますか?」

「あるけど」

「よければ一緒にお食事しましょう」

「俺がいても大丈夫なのか?」

「私がお誘いしたんですのよ。どうぞこちらへ」


笑みを浮かべてレオ様を席にご案内しましょう。

レオ様は周りへの影響を気にしてますが、きっと大丈夫ですわ。平等の学園ですもの。


「もう一人、加わってもいいかしら?」

「飯は大勢の方が美味しいからな。歓迎するよ」


カーチス様が一番に明るい笑顔で頷き、他の三人は一瞬固まりましたが、静かに頷きました。


「レオ様、食べられないものありますか?」

「劇薬以外なら平気」


サラリと言う言葉に息を飲みました。

劇薬?毒耐性をつけている途中ですか?気にするのはやめましょう。

私の隣に座ってもらいシエルがサンドイッチをレオ様の前に置きました。私はレオ様の前のサンドイッチを手で一口ほどちぎり、口にいれて毒味をすませてレオ様に渡します。


「レオ様、お口に合うかわかりませんがどうぞ」

「え?ああ。いただくよ」


レオ様の毒味をしながら二人でサンドイッチを食べているとリオ達から視線を感じ、もしかして自己紹介が必要ですか?

サンドイッチを一切れ食べ終わりお茶を一口飲み、笑みを浮かべて口を開きます。


「お友達になりました。レオ様ですわ。レオ様、こちらがセリアですわ」

「レオ殿下、お久しぶりです」

「久しぶりだな。母上は元気だよ」

「そうですか」


二人は従兄妹です。サラ様とセリアは定期的に面会しているのでレオ様とも面識があるんですね。紹介はいりませんでしたわ。


リオが立ち上がるとスワン様も立ち上がりました。


「レオ殿下、婚約者がお世話になりました。マール公爵家三男リオ・マールです」

「スワン伯爵三男ニコル・スワンです。クラム、挨拶!!」


二人が礼を終えると一瞬顔を顰めて痛そうな顔をしたカーチス様が立ち上がり礼をしました。


「あぁ。カーチス侯爵家次男クラム・カーチスです」

「頭をあげてくれ。レオ・フランだ。臣下に下るから、気楽に接してもらってかまわない」


座って礼を受けるレオ様の言葉に三人が顔を上げました。私も教育を開始しましょう。

エディに教えるように優しい笑みを浮かべてレオ様を見つめて口を開きます。


「レオ様、正直に堅苦しいのは寂しいからお友達になってくださいって言いましょうよ。ね?」

「なかなか難しいな。俺は将来王家の人間じゃなくなるから、同じように仲良くしてもらえると嬉しい」


リオとスワン様が固まっています。珍しい光景に思わずフッと噴き出して笑ってしまいました。

驚きますわよね。まさか、レオ殿下がこんな子供のように素直な方だったなんて。

うちのエディより子供に見えますわ。


「わかった。仲良くしよう。レオ!!」


カーチス様が明るく笑いレオ様の肩を組むとスワン様が叩き落としました。

スワン様、やはり外見に似合わずに武術が得意なんでしょうか。


「バカ。クラム。不敬だ。敬語と様は付け忘れるな。殿下申しわけありません」


頭を下げるスワン様に大事なことをお伝えしましょう。


「スワン様、大丈夫ですわ。レオ様は不敬罪は使いませんわ」

「あぁ。気にしないでくれ。気軽な方が俺は嬉しいよ」


屈託ない笑みを浮かべるレオ様にカーチス様は明るく笑って頷きます。

他の三人はレオ様に可哀想なものを見るような視線を向けていますわ。こんな大きい子供ですから仕方ありませんね。私も教育を頑張りますわ。絶対にブラコンにも変態にもならないように。


「こちらこそよろしくお願いします。レオ様」


社交の笑みを浮かべるリオを見てレオ様が目を輝かせています。


「マールには聞きたいことがあるんだ」

「なんでしょうか?」

「人脈の増やし方を。レティシアがマールに聞けばなんでもわかると」


リオの銀の瞳に視線を向けられゾクリとして視線をお茶に向けました。

リオが丁寧にレオ様とお話してるので大丈夫ですわ。毒味を終えたお茶をレオ様にお渡ししながら二人の様子を見守りましょう。

こんなに賑やかなら、庭園に移動した方が良かったでしょうか?

教室には生徒も増え初めそろそろお昼休みも終わりですわね。

シエルに目配せして、片付けを任せます。


「レオ様、リオ、そろそろ移動しませんと授業に遅れますわ」

「レティシア、また来てもいい?」


楽しそうなレオ様に笑みを浮かべて頷きます。


「歓迎しますわ」

「ありがとう。じゃあまた」


手を振って帰るレオ様を立ち上がって礼をして見送りました。

情操教育を頑張らないといけませんわね。

突然腕を引かれて驚くとリオの胸が目の前にありました。抱きしめられていますがなんですか?


「シア、聞いてないんだけど」


嗜める声が頭の上から聞こえます。


「忘れてたな。放課後迎えにくるから、教室にいて」

「いえ、リオの部屋に伺いますわ」

「迎えに来るから待ってて」

「かしこまりました。お待ちしております」


リオからきっとお説教されますわ。これは素直に従うのが一番でしょう。


「名残惜しいけど、ここで。そんなに寂しがらないで。また放課後迎えにくるよ」


リオがよく響く声で話し、私の頭を撫でて去って行きました。

もう人に見られることは諦めましたわ。

歓声が上がろうと人が倒れようと気にしませんわ。問題なのはどうやってリオのお説教を回避するかですわ。せっかくの楽しい気分とやる気が台無しですわ。


「レティのその諦めた顔がご令嬢フィルターだと、恋人が離れるのを名残惜しげに見つめるに変わるから不思議よね。レティ、もう少し表情に気をつけないと疑われるわよ」


「マール様の溺愛は牽制だったんだ。まぁ溺愛してるのは間違いないんだけど」

「見てて楽しいでしょ?どんなことも完璧にこなす公爵家令息の暴走。リオ様を振り回せるのはレティだけ」

「時々、胸やけしそうになるけどね。クラムはわかってないか」


セリアとシオン様が和気あいあいと話して仲が良いですわね。

とりあえず、午後の授業の準備をしましょう。

放課後の楽しい時間が恐ろしい時間に変わりましたわ。

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