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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第三十一話 前編 追憶令嬢12歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。

ステイ学園に入学して二日目です。


私はセリアと一緒に教室で昼食を食べています。


「セリア、選択授業どうします?」

「武術とマナー以外は全部。授業がつまらないなら、試験だけ受ければいいし」

「全部ですか?研究する時間は?」

「授業で閃きが起きるかもしれないわ。どこに隠れているかわからないのよ。授業よりも研究室のが問題よ」

「もう研究室のお誘いきてるんですの?」

「シオン伯爵家だから」


先生は研究室を持ち各々が研究に力を入れています。優秀な生徒は助手として研究生という名で迎え入れます。研究生には研究部屋が与えられ優遇されますが研究は大変手間のかかる物が多いのでそこまで人気はありません。研究者を目指す生徒以外には。

学園で研究者として有名になれば王宮や各領の研究所からスカウトがくることもあります。

基本の教養を全て終えている4年生以上が選ばれることが多いと言われています。

4年生から立候補で研究室に入れますが、低学年は先生からの推薦のみです。


「面倒よね。研究室がもらえるのは嬉しいけど。私の研究を手伝ってくれる先生いないかしら・・・」

「もうクラブを立ち上げたら?」

「面倒よ。自分以外の部員はいらないもの」


クラブは5人以上部員がおり生徒会の認可がおりれば、予算と部屋も用意され活動することができます。

必須ではないので、入部している生徒は多くありません。


「容赦ないですわね。学園の先生ですもの。セリアの閃きの助けになるかもしれませんわ」


廊下から歓声が聞こえ嫌な予感がします。

令嬢達の声に挨拶を返す聞き覚えのある声の主はやはりクロード殿下ですわ。

逃げましょう。

クロード殿下が教室に入ってくるので気付かないフリをして、後の扉から出ようとそっと開けると目の前にエイベルがいます。

閉めます?

戻れば殿下がいるので礼をすべきです。私に用とは限りませんが嫌な予感がします。

優雅に強行突破ですわ。殿下とエイベルならどっちを選ぶなんて考えるまでもないですわ。まだエイベルのほうが勝因がありますわ。笑みを浮かべて礼をします。


「エイベル、ごきげんよう。お久しぶりですわね」

「久しぶりだな。入学おめでとう」

「ありがとうございます。そこをどいてくださいませ。扉の前に立ち往生など迷惑ですわよ」

「殿下がお呼びだ。逃がさないからな」


わかっていて邪魔するなんて酷いですわ。

私が殿下と関わりたくないの知ってますのに。エイベルにしか聞こえないように小さい声で敵意を込めて囁きましょう。


「やっぱり敵ですわね」

「お前も俺にマールをけしかけただろ!!お互い様だ」

「存じませんわ。勘違いですわ」

「教室に戻れ」

「命令されるいわれはありませんわ」

「マールは来ないから諦めろ。睨んでも無駄だ」


笑顔で周りに聞こえないようにやり取りしますがエイベルが邪魔します。ただ気づかないフリをしてくれればいいのに。呆れる顔のエイベルの足を踏もうとしたら避けられましたわ。


「本当に二人は仲良くなったんだね。」


後ろから聞こえる声に振り返り礼をとります。

逃げ遅れましたわ。

エイベル、この恨みいつか晴らしますわよ。


「楽にして。入学おめでとうルーン令嬢。一緒に来てくれるかな?」


頭を上げて穏やかな笑みを浮かべる殿下のそっと出した手に気付かないフリをして笑みを浮かべます。昔なら手を重ねましたが、今は絶対に重ねません。自然にエスコートする殿下は要注意です。リオもエスコートは上手いですが、その上を行くのが殿下ですわ。


「ありがとうございます。恐れながら殿下、もうすぐ授業が始まりますわ」

「放課後に時間を貰えるかな?」

「私は婚約者のいる身ですわ。殿下の命とはいえ」

「エイベルも同席させるから安心してほしい。それに優秀な一組の生徒は公平な判断ができるだろう」


穏やかな笑顔で周りの生徒に牽制をかけてますわ。

余計な噂を立てるなよってことですね。

全然安心できませんが断れませんわ。王族の願いに応えるのが臣下の務め。平等の学園とはいえここで断れば不敬になってしまいますわ。


「ご配慮ありがとうございます。かしこまりました」

「ありがとう。放課後にエイベルを迎えによこすから()()()()()()


私にだけ聞こえるように囁かれた最後の言葉に動揺を隠して微笑みます。

逃げ道を封じるところは昔から変わりませんのよね。


「ご冗談を。お気遣いありがとうございます。お待ちしておりますわ」


殿下がエイベルを連れて去っていきましたわ。

二人を見て歓声を上げる令嬢達のせいで廊下が騒がしいですわ。

エイベル、潰しますわ。

食事を教室で食べたのがいけなかったのでしょうか。

せめて殿下が直接ではなく侍従を使って呼び出して欲しかったですわ。

自分の席に座り、腕を枕に伏せります。夢ではありませんよね。


「レティ、優雅さのカケラもないわ」


セリアの指摘を受け顔を上げます。

外を見て、物思いのふけっているフリでもしましょうか。


「殿下も相変わらずね。リオ様も足止めなんて、珍しいわね」

「目立ちたくありません。関わりたくも……」

「ルーン公爵令嬢は目立つから諦めなさい」

「そんな…。また令嬢達からの手紙が……。お手紙の返事は面倒ですわ。私の貴重な時間が―」

「仕返し手伝ってあげるから、安心して」

「可愛いくウインクしても駄目ですわ。実験台は他をあたってください。私の喧嘩は私が片付けますわ」

「残念ね」


気が重いですわ。私もそれなりに忙しく、暇な令嬢の相手をする無駄な時間はありません。無駄な時間は目標達成のためにまわしたいですわ。


「二人ともどうしたんだ?ルーン嬢落ち込んでる?」


カーチス様達が戻られましたわ。


「バカ」


ニコル様がため息をついてます。そして聞こえた呟きにため息を我慢できませんでしたわ。


「もう駄目ですわ。私の平穏な学園生活終わりましたわ」

「ルーン嬢、泣くなよ」

「いつもの発作だから気にしないで」


セリア、酷いですわ。

カーチス様が必死に宥めてくれます。


「ほら、これやるから元気出して」


手にチョコを握らされました。


「暴れるなよ。公爵令嬢が暴れたら噂の的だぜ」


暴れる気なんてありませんが、落ち込んでいる姿を見せるのは優雅ではありませんわ。

深呼吸してチョコを口に入れると甘みが口に広がります。


「美味しい」

「だろ?女の子は笑ってるのが一番だ」

「ありがとうございますわ」


大きい手に頭を乱暴に撫でられます。髪が…。

こんなにぐちゃぐちゃにされたの初てですわ。


「カーチス様、髪が乱れますわ」

「悪い悪い。癖でな」


突然現れたシエルが髪を整え結い直しています。シエルは神出鬼没なので気にしません。髪を乱すような行動を淑女はしません。そしてシエルはなんでも持ってます。私のシエルはいつの世も優秀な侍女ですわ。


段々気分が浮上しましたわ。

悩んでも仕方ありませんわ。

放課後に考えましょう。

後ではセリアとスワン様が話してますわ。


「意外ね。レティを宥めるのうまいわ」

「妹いるから。あの二人は似たもの同士みたいだし、シオン嬢もできるでしょ?」

「できるけど、面倒よ。ほっといても自分でなんとかするしね」

「放任なんだね」

「過保護はルーン公爵家とマール公爵家だけで十分」

「恐ろしい後ろ盾だね」

「ええ。リオ様と同じくらい厄介な方もいるから」

「興味あるな」

「お楽しみよ」


仲が良さそうですわね。

三角関係ですか…。


「カーチス様、セリア、スワン様にとられそうですがいいんですの?」

「お前は何を言い出すんだよ」

「セリアが仲良く話す同世代の方って初めて見ましたわ」

「たぶんあの二人は似たもの同士だ」

「うーん。スワン様も研究に目がないんですの?」

「本質的な問題だよ」

「そうなんですか…。ねぇ、カーチス様、私は屈服させたい殿方がいるんですが、いい方法ありますか?」

「屈服?」

「早急に。武力では残念ながら敵いません」

「お前に負けたら男として終わりだよ。マール様に頼めばいいんじゃないか?」

「自分の手で成し遂げなければいけませんわ」

「うーん。そうだな。お前みたいな美人に好かれて、突然冷たくされたら辛いかな。屈服とは違うか」

「最初は仲良くして途中から冷たくすればいいんですか?」

「そんな感じ。結構衝撃的だと思うよ」

「わかりましたわ。ありがとうございます」


セリアとスワン様の視線を感じます。


「シオン嬢、止めなくていいの?クラムの提案」

「カーチス様、面白いわね。面白いことになりそうだから」

「ひどいなぁ。僕も面白いことは大歓迎だから」


なぜか寒気がしますわ。

エイベルとの決戦前の武者震いですか?

先生が来たので、授業の準備をしましょう。

放課後がなくなればいいのに。そううまくはいきませんよね。

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