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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第二章

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第二十九話 後編 追憶令嬢12歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。


ステイ学園入学しました。

先生からの学園の概要と選択授業についての説明が終わり今日の授業はもうありません。

生徒は寮に帰ったり学園の散策に行ったりと各々自由に過ごしています。

私は自分の席で受講登録票を睨んでおります。

選択授業について悩んでいます。

実は一つ気がかりなことがあるんです。対策を思いついたので先にそれを解決したほうがいいでしょうか。


バタン!!ガタン!!と後から物騒な音が響いてます。

振り向くと人の塊があります。


「どうしてここにいますの?」

「爵位を剥奪された貴族の面汚しですわね」

「あら?もともと成り上がりには過ぎた身分だったのよ」

「薄汚い商人風情が」

「罪人は」


あれはなんでしょうか?

高慢な話し方と高笑いに物凄く聞き覚えがありますわ。


「レティ、戻ってきたのね。あれの中心にいるのはハンナ・イーガン元伯爵令嬢」


教室の後から聞こえる罵る声に席を立つと座り込んでいる真っ青なお顔の小柄な赤毛の女生徒。

ハンナ・イーガン様とは彼女のことでしょう。

ずっと下品な言葉が言葉が掛けられていますが誰も助ける様子はありません。

イーガン様に酷い言葉を投げかける中には侯爵令嬢もいますから身分的に難しいでしょう。家格に問題のないセリアもカーチス様も動かれませんのね。

目立ちたくありませんが仕方ありませんわ。平民の生徒への貴族の無礼は止めないといけません。

イーガン様達に近づくと、集まっている生徒が道を開けました。


「見苦しいですわ」

「同感ですわ。ルーン様」


怯えた顔で私を見るイーガン様と蔑む言葉をやめない囲んでいる令嬢達。

淑女としてふさわしい振舞いをしない貴方達に見苦しいって言いましたのよ。

体に染みついてる令嬢モードで挑みましょうか?


「ここは誰もが平等なステイ学園ですわ。身分の貴賎は関係ありません」


生前の私が絶対言わない言葉ですが、クロード殿下はよく平等とおっしゃっていました。

罵る令嬢達の声が止みました。そしてようやく視線がイーガン様ではなく私に向きました。


「イーガン家は貴方に」


わざわざ終わったことを蒸し返そうとする令嬢の声を遮ります。


「無用ですわ。裁きは陛下が下しました」

「彼女の罪はなくなりませんわ!!」


堂々と言い切る目の前の令嬢は立場がわかってません。

名前は覚えていませんが目の前の令嬢達はパドマ様の取り巻きです。派閥の違う関係のない者が家のことに口を出すのはマナー違反です。


「彼女も罰を受けましたわ。彼女が貴方達に虐げられる理由はありません。また私の名を大義名分にするのはルーン公爵家への侮辱ですわ」

「ひどいですわ!!私はルーン様のことを想って」

「我が家は貴方達に助けていただくほど落ちぶれていませんわ」

「まぁ、ひどいですわ。今の貴方をマール様が見たらどう思いますかね」


楽しそうに笑っているのはパドマ様と仲の良い侯爵令嬢。

非常識なところがそっくりですわ。

私の名前を使ってイーガン様に嫌がらせするなんて許せません。ルーン公爵家として醜聞ですわ。謀は見つからないようにするものですよ。リオは何も思わないと思いますが。


「俺が何?」

「マール様!!」


侯爵令嬢が突然現れたリオにうるんだ瞳で腕に縋りつこうとしましたが、サラリと躱されてます。

先程の高慢な物言いも甲高いお声も嘘のように甘えた声でリオを呼んでいます。あら?

この光景に覚えがありますわ。ケイトが提案しましたが私が却下した案ですわ。

人前で腕に縋りついて助けを求める、はしたない行為はルーン公爵令嬢としてはできませんので。

貴方も気弱な令嬢を目指してますの?

今更ですが気弱な令嬢作戦忘れてましたわ。

初日で失敗ですか?あんなに練習したのに・・。お茶会でも夜会でも頑張りましたのに。


「触らないでください」


寒気に襲われて我に返るとなぜか隣にいるリオが冷たい視線で令嬢達を見つめています。

リオ、それは女性に向ける視線ではありませんわよ。

平民を貴族が蔑むなんて許されませんのでリオの態度が厳しくなるのも仕方ないのでしょうか?

侯爵令嬢がうるんだ瞳でリオを見つめてますが、残念ながらリオは年下の令嬢の涙目くらいでは、イチコロできませんわよ。

全く効果ありません。

ケイトは継続は力。過程が大事と言いますので時々試しますが全敗記録更新中です。

仕方ないのでリオ以外の練習台を見つけて試していたのが懐かしいですわ。あれは愉快でしたわ。


「ルーン様が。私達、ルーン様のためと思って…。なのにルーン公爵家への侮辱ですって」


侯爵令嬢が涙を流して泣きはじめましたが、人前で涙を流すなど醜聞ですわよ。

ご令嬢、リオのお顔を見ました?早く泣きやんでくださいませ。社交デビュー前でも許されない怪しい行為ですよ。

マール公爵家子息であるリオに軽蔑した目で見られてますわよ。リオのこのお顔は今世は初めて見ましたわ。


「確かにレティシアが間違ってます」

「マール様」


令嬢達が頬を染めてうっとりとリオを見つめています。リオが怖くて泣いてるのではありませんの!?

このご令嬢達も変態ですの!?

これ危険ですよ!!私でしたらすぐに謝罪して逃げますわ。待っているのは恐怖ですよ。寒気がしてきましたわ。どちらに対する寒気かはわかりません。貼り付けている私の顔が恐怖で歪みそうになるのを令嬢モードを再装備して耐えます。もう逃げたいですわ。


「うちも混ぜてもらわないと」

「え?」

「俺のレティシアを貶めるなんてマールへの宣戦布告。ルーン公爵家が出る前に俺が潰して差し上げますよ」

「マール様、騙されてますわ!!」


ご令嬢、口答えはやめたほうがいいですわよ。もうリオの敵として認識されてますわ。リオは敵には容赦ありませんのよ。身内に甘く敵は徹底排除がマール公爵家ですわよ!!


「何のことでしょう?」

「ルーン様はマール様の前だけ態度が違いますわ」

「気の弱いレティシアも可愛いですが、立場上許されないんですよ」

「え?」

「気が弱くても、ルーン公爵家令嬢です。幼い頃から公爵家令嬢として、厳しく育てられた彼女が貴族としての務めを果たせないなんてありえません。平等の学園とはいえ、庇護すべき平民を貴族が虐げる行為を許しません。しかも理由が彼女のためというなら尚更。おわかりいただけますか?」


令嬢達が息を飲み、リオに怯えた顔を向けましたわ。

遅いですわ。危険回避能力低すぎますわよ。


「レティシアに非はありません。たとえ非があってもレティシアを傷つけたら、潰してさしあげますのでお忘れなく。シア、待たせたな。行こうか」


極上の笑みを浮かべたリオに寒気が止まりません。この怖いリオと一緒に行きたくないんですけど。

目が合ったリオが上着を脱いで私の肩に掛け、そっと手を出したので諦めて手を重ねます。


「カーチス、セリア、生徒会長が生徒会室に来てくれとお呼びだ」


周囲を見ると真っ青なお顔のカーチス様、目を輝かせているスワン様。

セリアは笑って手を振ってますわ。これは逃げられないから覚悟しなさいってことでしょうか。

リオに促されてますし足を進めます。

廊下を歩いていると視線が集まってますわ。

どうしてこんなに、見られてるんですの!?

リオが人気だからですか?

恐怖でリオに従いましたが特に約束はありません。

名前を呼ぶと向けられるのは見慣れた笑み。きっともう怒っていませんわ。

リオに小声で話しかけます。


「どうしましたの?」

「レティシアに会いたかったから。ついでにセリア達を呼びに」

「ここにいてよろしいんですの?」

「伝言役だから俺の役目は終わりだ。シアの生徒会入りの話は断ったよ」


忘れてましたわ。まさか生徒会役員への打診がくるとは思いませんでしたわ。

殿下と関わりたくないので助かりますわ。頼もしいですわ。


「ありがとうございます」

「愛しいレティシアのためだから。っで今の悩みはなに?」


どうして小声で話しかけているのによく響く声で返すのでしょうか。どんどん視線が集まりますわ。


「人目のつかないところに移動したいですわ」

「二人っきりになりたいなんて、大歓迎だよ。もちろん用意してあるから安心して」


リオ、人目集めるの楽しんでます?先ほどから視線が凄いんですが・・。

言葉も雰囲気も変ですが。

部屋というのは特別室でしょうか?



学園には個人で使うことのできる特別室がありますの。

手続きすれば自由に使える部屋と生徒会役員に個人で与えられる部屋があります。

リオも生徒会役員なので部屋を与えられています。

リオに手を引かれて入ったのはリオ専用の特別室です。

生前はこの頃にはリオと距離を置いていたのであまり入ることはありませんでしたわ。

部屋に入り、リオの手を解いてソファに座ります。

ようやく視線から解放されてほっとしますわ。初日から疲れましたわ。


「お疲れ様」


労わるような声を掛けるリオを睨みます。


「誰の所為ですか!?」

「俺?」

「ご名答ですわ」

「ごめん。令嬢達がしつこいから、シアを利用させてもらった。俺の願い叶えてくれるんだろ?」


楽しそうに笑っているリオ。公爵家同士が話していれば近寄って話しかけてくる生徒はいませんわ。それでもわざわざ視線を集めるように動かなくても。

いつもお世話になっているのでお役には立ちたいですが、


「それは・・。そうですが、他に方法が…」

「俺達公爵家は存在だけで、常に人の視線を集める。シアもそろそろ慣れないと。視線の数だけ証人がいるんだよ。せっかくだから利用すればいい」


殿下の婚約者でなくても視線が集まるんですね。私の平凡な学園生活の計画がどんどん狂いますわ。

でもリオにもリオの考えがあるので好きにしていただきましょう。リオの考えていることを私が理解しようなんて無駄なことはやめましょう。


「わかりましたわ。でもほどほどにしてくださいませ」

「なんで?」

「恥ずかしいですわ」

「シア、免疫ないもんなぁ。俺なんて序の口だよ。もっと凄いの出てくるから…。俺で慣れようか。訓練だな」


嫌ですけど。変な物を食べたのではなく、様子がおかしかったのはわざとだったんですね。何が楽しくて視線を集める訓練もリオの変な言動に付き合う訓練もしないといけませんの?


「嫌そうな顔してもやめない。俺は甘やかしすぎるなって言われてるから」


お父様とお母様からですか?私には特に命令はないのにリオにはあるんですか?もう訳がわかりませんわ。


「ケイト達と研究してる顔、作っても効かないから」


先手を打たれましたわ。

溜息がこぼれましたわ…。

このリオは止められません。一度決めたら譲ってくれませんもの。


「っで、シアは何を悩んでるの?」

「将来監禁される場所を壊せないかなぁと」

「は?」

「嘘。冗談です」


うっかり考えていたことが口から零れました。

リオの満面の笑みが怖い。また寒気がしてとうとう鳥肌が立ちましたわ。


「シア?」


思いきって、笑ってみましょうか?

妃教育で身に付けた鉄壁令嬢スマイルを浮かべ無言の微笑み合いです。これ以上怖い思いはごめんですわ。


「方法は?」

「考え中です」


リオが額に手を当てて、ため息をついたので私の勝利ですわ。私とリオの睨み合いは先に視線を逸らしたほうが負けですわ。これは幼い頃から変わりません。


「無謀だよ。この学園に監禁可能な場所がどれだけあるか知ってる?」

「そんなにありますの?」

「両手の数は余裕で超える」

「学園に大きな爆弾を仕掛けるしかないでしょうか」

「やめろよ。セリアに作らせるなよ。そんなことすれば、シアでも処刑、ルーン公爵家は潰されるよ」


セリアに頼めば盛大な爆弾により学園が更地になりますわ。爆発の経過を観察し楽しそうに笑うセリア。冗談でしたが笑えませんわ。そして本気で作りそうですわ。



「詰めが甘いんだよ。きちんと先のことも考えないと。だからいつも相談しろって言ってるだろ?

俺が監禁なんてさせないから。もし監禁されても、助けるから」


先のことなどわかりませんわ。結局は・・・。

リオの手が頭に置かれ優しく撫でられます。

私を慰めたり宥めるときはいつもこうしてくれます。

生前も今世も安心して力が抜けて無意識に握っていた拳が解けましたわ。


「泣くなよ。まだ3年あるから、ゆっくり考えて対策とろう。協力するから。大丈夫だよ」


リオの優しい声に頭を撫でる手に沈んだ心が落ち着いていきます。

確かにまだ時間はあります。


「わかりましたわ。ありがとうございます」


まだ3年あるんですね。学園に入学したら監禁が待っていると思っていましたわ。そういえば私、


「リオ、うっかりしていましたわ。いけませんよ。社交デビューが終わった私がリオと二人っきりなんて。学園に入学したなら尚更きちんとしないといけませんわ」


リオの頭を撫でる手が止まり大きなため息が聞こえました。リオも失念していたんですよね。とりあえず気付いて良かったですわ。今から気をつければ間に合うでしょう。今は皆様入学で浮足立っていますから私達が二人っきりとは気づかないでしょう。両肩に手を置かれ、顔を上げると目の前にリオの顔がありました。


「シア、俺とシアの関係は?」

「従兄妹です」

「他には?」

「他ですか?幼馴染ですか?同派閥の」

「婚約者だよ。従兄妹なら問題になるけど、婚約者なら二人で会っていても問題ないだろ」


意図のわからないリオの言葉にようやく思考が追いつきました。すっかり忘れてましたが律儀ですわ。夫人達が大興奮するリオが私に婚約を申し込んだと言うのは勘違いですが、両当主の命令とはいえリオが婚約を受け入れた理由がわかりましたわ。


「確かに。さすがリオ兄様」

「は?」

「昔の約束を守ってくれたんですね。学園に入学しても相談する方法を考えてくれましたのね。私はこの婚約の利はわからなかったんですがお父様達はリオがお気に入り。お目付け役の意味もあるんですね」

「なんでそうなるかな。先が長いな。なぁ、俺の事好き?」

「もちろん大好きですわ」


律儀な頼もしいリオ兄様に笑いかけるとそっと抱きしめられました。


「わかったよ。絶対落とすから覚悟して」


ブツブツ言っていますが聞こえませんわ。リオが聞かせるつもりのない言葉は気にしません。

でも入学してもリオが傍にいてくれるのは嬉しいですわ。生前は少しだけ寂しかったですから。

まだ監禁まで時間がありますし、焦っても仕方ありませんね。

リオが協力してくれるなら心強いですわ。温かい腕の中にいるおかげで鳥肌もいつの間にか消えました。

監禁回避と共にお金を稼ぐ方法と自衛能力を学園でどのように磨くか考えなければいけませんわね。

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