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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第一章

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第二十七話 追憶令嬢11歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。

未来の平穏な生活を目指して日々謀略を巡らす公爵令嬢ですわ。

暴略ではなく謀略ですわよ。


謹慎中のため部屋から出ることは許されていません。

お母様からも恐ろしいお説教を受けました。

周囲への警戒が足らずに、子供に遅れをとったことを。

ぶつかったのもうっかり一緒に走ってしまったのも私が悪いので深く反省しています。

全身に冷たい汗が流れお説教の後は体が冷えたので、お湯に浸かって反省しましたわ。


両親のお説教を受けたので厄介事はもう終わりと思っていました。両親は根に持つタイプではないので、一度厳しくお説教を受ければ終わりです。

安心した私は甘かったです。

お勉強の終わったエドワードの訪問を受けたのですが、


「姉様!!姉様にぶつかった無礼者を保護したのは本当ですか!?姉様を危険な目に合わせて不自由な思いをさせている元凶を」

「姉様は危険な目に合ってませんよ。心配してくれてありがとう」


エディが見たことないほど怒ってます。こんなに感情的なエディは初めてですわ。目を吊り上げて怒っているエディを無理矢理抱きしめて宥めるように背中を叩きます。


「姉様…」

「悪いのはロキ達ではありません。ロキ達の声を無視した役人ですよ。エディはこれから大きな力を持つようになります。だからこそ、きちんと冷静な目で物事を見てください。それに私は貴族としての務めを果たしただけです。シエル達には申しわけありませんがあの時にロキと出会い保護できためぐり合わせに感謝しています。放っておいたらフラン王国の宝が三つも失われました。未来ある善良な民の保護は臣下の務めでしょう?ロキ達に意地悪はいけませんよ。姉様は貴方にロキ達を暖かく迎えいれて欲しいと思います」 

「しっかり教育します」


返答がおかしいですわ。ロキとエディは歳が近いから遊ぶの間違いでしょうか?

意気込んでいるエディを抱きしめながら考えます。今日はエディと過ごしたほうがいいでしょうか?私のことを心配して動揺しているのかもしれませんわ。まだ幼い弟は心配性です。

エディは来年社交デビューですが優秀なので心配はしていません。厳しい教育を受けルーン公爵家嫡男として相応しい顔をすでに身に付けていますので。寂しいですが頼もしい成長を誇りたいと思います。


ロキ達の教育は執事長に任せています。私が見に行けるのは謹慎明け。ルーンには優秀な医務官もいるので夫人の心配はしていません。十分な治療を受けて療養しているはずです。

ここでの経験は将来のロキのためになることでしょう。

ロキ、ごめんなさい。衣食住の保証は約束するから頑張ってください。

弟よ、容姿は極上なのに純粋でかわいい貴方はもういないのですね。やはり時が経つのは残酷ですわ。


謹慎の1日目はエディと一緒に過ごしました。

子供らしさの戻った笑顔の可愛い弟と一緒にバイオリンの練習と刺繍をして淑女らしく過ごしました。


*****


今日はエディはお父様と一緒に出掛けています。

お母様も留守なので私は市で買った横笛を練習しようと思います。

息を拭き込むと鈍く低い音が出ます。音色が独特で綺麗でもなく音は決して響きません。

使い方を商人に教われば良かったでしょうか?笛は吹けば音が響くと勘違いしてましたわ。


「お嬢様、よろしいですか?」

「どうぞ」


扉から入ってきたシエルの後にいる小さい影は、ロキ達ですわ。

保護した時は汚れていたため気付きませんが、綺麗な金髪と黄色い瞳のロキは執事服を着ています。


「レティシア様、お助けくださりありがとうございました。こちらは妹のナギです」


行儀良く礼をしたロキの後から茶髪で海の色の瞳を持つ目がくりっとした幼女が顔を出しました。ナギも汚れていて気付きませんでしたが二人共フラン王国民には珍しい色を持っていますわ。だから忌避されて、酷い生活を送ることになったんでしょう。どんな理由でも許されることではありませんが、民は自分の生活で精一杯なので汚れた泥棒少年にまで気に掛けるのは求めすぎですわね。役目を果たさなかった役人には情状酌量の余地はないと思いますが。


「ナギです。レテ、レティ」


3歳くらいですかね?舌足らずで一生懸命話す様子が可愛いですわ。ナギは侍女服に似たワンピースを着ています。


「レティで構いません」

「レティ様だ。ナギ」

「レティ様」

「よくできましたわ」

「ふえ?」


ナギが私にトコトコと近付き膝の上に置いてある横笛を目を大きく開けて見ています。シエルがナギの行動を制そうとするのを視線を流して止めます。


「笛ですよ」

「お兄ちゃんが上手!!」


椅子から立ち上がり、予備の笛を引き出しから取り出しロキに渡します。


「ロキ、この笛の使い方はわかりますか?」

「うん」

「なんでもいいので演奏してみてください」


ロキが笛を持って演奏すると綺麗な音色が響きます。演奏しているのは芸人一座の入場曲ですわ。


「上手ですわ!!どうしてその曲を?」

「聴いたら大体わかるから」


これはリオ以上の逸材かもしれませんわ。バイオリンを持ち簡単なワルツを演奏します。


「これは弾けますか?」

「うん。簡単」


ロキが同じ曲を演奏します。


「シエル!!この子凄いですわ!!」


楽譜の読み方と書き方を教えましょう!!

ロキの優秀さに驚きと感動が。この子はきちんと育てればすごい逸材になるかもしれません。


「お嬢様、謹慎中です」  

「わかりましたわ。ロキ、その笛は貰ってください。何かあればいつでも相談してください」


シエルの嗜める声に頷き、今度は引き止めるのはやめてロキ達を見送りました。

謹慎中は読書と刺繍と楽器の練習をして過ごすしかありませんね。

ロキ達の元気な姿を見れただけでも満足しましょう。

落ち着いたらロキに笛を教えてもらいましょう。



***


謹慎が明けた日にお父様に呼び出されました。

執務室の椅子に座り感情の一切読めないいつものお顔で見られています。


「謝罪はいらない。謹慎が明けたがわかってるな?」

「はい。お父様」

「わかっているならこの件は終わりだ。例の件も終わったよ」

「ありがとうございます」

「あの親子の素性がわからない。国民権もなく、母親は記憶喪失。うちで保護するのは構わないが素性がわかるまでは、レティシアと一緒にいることは許さない」

「わかりました。ロキに音楽の教養を学ばせたいのですが」

「素性がわかってからだ」

「かしこまりました。」


素性がわからない不審者を私の傍におくことはできませんね。保護していただけるだけでもありがたいですわ。ロキ達の件はお父様にお任せしましょう。

ロキに笛を教わるのは、まだ先ですわ…。

ロキ達のことは、シエル達に任せておけば安心です。

さて謹慎生活が終わったのでまた社交の再開ですわ。

もうすぐ12歳になります。

両殿下の在学するステイ学園への入学は気が重いですわ。

監禁回避と平穏な生活のために頑張らないといけません。

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