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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第一章

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第二十五話 後編 追憶令嬢10歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンです。

社交デビューしたばかりの公爵令嬢です。


社交デビュー直後はお茶会ばかりです。

前回のお茶会では参加する前に規模を調べることを学びましたわ。前回はレート公爵家のことしか調べなかったので反省しています。

生前は大規模なお茶会ばかり顔を出していたので、正直驚きましたわ。

今日のお茶会はお母様と伯母様も一緒です。

セリアは招待をお断りしたそうです。

シオン伯爵家なら、お茶会に参加しなくても許されます。社交デビューのパーティが終わってからセリアは一度も社交に出ていません。出かけるのは貴族令嬢の義務の神殿通いだけです。

社交デビューしてもセリアの周りだけは変わらない時間が流れています。羨ましいですわ。



今日の主催はリール公爵家。

リール公爵家は芸術に優れており、美貌と才能で歴代の王を骨抜きにしてきた一族です。

エイミー・リール公爵令嬢も殿方に大人気と噂なので、この魅力で殿下も是非魅了してくださいませ。

でもクロード殿下が相手にされない可能性もありますわね…。

殿下のにじみ出る腹黒感にマトモな令嬢は逃げて行くんでしょうか?性格以外は完璧ですのに。


案内された部屋には立派なピアノが置いてあります。

挨拶をすませて案内される席に座ります。お母様と伯母様の間なら安心です。

本当は伯母様、お母様、私の並びが正しいのですが社交慣れしてない私への配慮のための席でしょう。

招待客は18人。同派閥の上位貴族である侯爵夫人と伯爵夫人。あとは伯爵令嬢が二人です。ご令嬢は学園を休んでいるのは気にしません。学業よりも貴族は社交が優先ですから。


リール公爵夫人の挨拶が終わり、情報交換が始まりました。同派閥は協力関係にあるため腹の探り合いはそれほどしません。互いに手を取り合って王家にお仕えするための集団なので気楽なお茶会です。

流行の話題や商売の話に耳を傾けながら美味しいお茶を楽しみます。


「ルーン令嬢はどんな楽器がお得意?」


ふわふわの髪に大きな目を持つ年齢を感じさせない可愛らしい顔立ちのリール公爵夫人に話しかけられましたわ。


「バイオリンを少々」

「珍しいですね。どうしてかしら?」

「恥ずかしながら、お父様がバイオリンの名手なので一緒に演奏するために我儘を申しました」


隣に座る伯母様の上品な笑い声が聞こえました。


「レティシアの初めての我儘でしたね。懐かしいわ」

「ご勘弁を、マール公爵夫人」


伯母様からの爆弾発言に動揺を隠してよわよわしい笑みを浮かべます。


「あら?よくうちの息子と合奏してたじゃないの。最近はピアノも上手になったと言ってたわよ」

「マール公爵夫人、ピアノはまだまだ皆様にお聞かせできるほどの腕前はありません」


リオは何を言ってますの?確かにお母様との約束なのでピアノの練習もしてますよ。私はリオの前で演奏したのはターナー伯爵家でだけですけど。リオ兄様、皆が貴方のように楽器が得意ではありませんのよ!!バイオリンを持ってその日のうちに一曲弾けるのは一部の方だけですよ。セリアは楽器ができませんし自分が優秀な自覚を持ってください。ってリオへの文句を言っている場合ではありませんでしたわ。

目の前のリール公爵夫人もリオと同じ側でピアノの名手ですわ。


「あら?ピアノもありますし、せっかくですから一曲いかが?」

「お耳汚しになりますわ。ご勘弁を」

「でしたらバイオリンをお貸ししますわ。せっかくですから合奏致しましょう」

「レティシア、名誉なことですよ」

「ここにいる方々は、貴方が失敗しても誰も咎めませんわ。リール公爵夫人の胸を借りていらっしゃい」


お母様と伯母様が敵になりましたわ。お茶会で楽器を演奏するなんて初めてですわ。

伯母様、酷い演奏でも咎めたら許しませんと笑顔で周りに警告するなら止めてください。

私に許された言葉は一つしかありません。今回のお茶会も私の想像と違うのですが……。

王子の婚約者でないとただ座ってお茶を飲む以外の行動が求められますの?生前は国内のお茶会よりも視察や外交、接待に携わることが多かったので知りませんでしたわ。国外のお茶会は平穏なものでしたわ。


「光栄です。リール公爵夫人」


席を立ち、使用人からバイオリンを受けとるとサイズも丁度いいです。

調律しようとするとすでに終わっており、音色も綺麗。私のバイオリンよりも価値の高いバイオリンですわ。さすがリール公爵家。


「ルーン令嬢よろしくて?私が合わせますから、自由にはじめてくださいな」

「わかりました。よろしくお願いします」


ピアノに手を置き愛らしく微笑むリール公爵夫人に微笑みながら頷きます。深呼吸して気持ちを落ち着かせワルツを演奏します。ピアノの美しい音色が響きうっとりしそうになります。目を開けるとリール公爵夫人に笑みを浮かべられ微笑み返します。

段々演奏するのが楽しくなり、終盤では気持ちが良くなってきました。これが名手との合奏なのですね。

弾き終わると気分が高まりなんだかフワフワした心地がします。


拍手が響き、席に戻ると珍しくお母様が微笑んでます。及第点ですわ。


「ルーン令嬢素晴らしかったわ。磨けば演奏家も夢ではありませんわよ」

「ありがとうございます。リール公爵夫人のおかげですわ。音色の美しさに感動しました。リール公爵夫人の音色が導いてくださり、私の人生の中で一番の演奏ができましたわ」

「大げさです。でも惜しい。せっかく才能があるのだから磨きたい。ルーン令嬢、うちの息子の嫁にきませんか?」


リール公爵夫人が少女のように愛らしい笑みを浮かべました。

こんな笑みを向けられたら、殿方はイチコロですわね。私には真似できない笑顔ですわ。


「リール公爵夫人は相変わらず音楽が絡むと周りが見えなくなりますね。レティシアはマール公爵家の嫁です」

「悔しい。ローズはいつも私の一歩先を行きますね。でも私の息子がレティシア様を落とせばチャンスは」

「チャンスはありません。絵が得意な貴方の息子より楽器が得意なうちの息子とレティシアの子供のほうが、将来性がありませんか?」

「両親が音楽の才能に恵まれた子!!すばらしい。わが家と婚約を結ばせましょう」

「気が早いですわ。お互い孫が産まれてからまた話しましょう」

「ローズ、約束ですよ」


伯母様はリール公爵夫人と同級生でしたわ。

扱いが慣れてますわ…。

まさかリール公爵夫人が変わった方とは思いませんでしたわ。セリアと同族かもしれませんわ。


「レティシア、素晴らしかったわ。バイオリンが上手になりましたね」

「ありがとうございます」


お母様に褒められるの珍しく照れてしまいます。


「ローズ、レティシア様との婚約は思い切りましたね。経緯を聞いても?」


リール公爵夫人の話す口調が変わっています。

私はいつのまにか名前呼びに昇格してますわ。テンションの高いリール公爵夫人を気にするのはやめましょう。


「話すのは構いませんが、皆様の胸にとどめてくださる?」

「もちろん!!ねぇ、皆さま?」


夫人方が笑みを浮かべて一斉に頷きます。噂話や婚約、男女の話を好む女性は多いです。

家の事情を話すのはよくありませんが、派閥内で表面的なものなら大丈夫でしょう。リール公爵家とマール公爵家、ルーン公爵家の3公爵家を敵に回す勇気のある者もいないでしょう。伯母様が得意げな顔されてますが、どうしてですか?物凄く嫌な予感がするんですが。


「約束ですよ。息子自慢に聞こえたらごめんあそばせ。

息子とレティシアは従兄妹ですから、幼い頃からよく一緒にいました。兄妹のように仲が良く、息子はレティシアを兄として慈しんでると思っておりました」


確かにマール公爵家の皆様にはたくさん遊んでもらいましたわ。長男のカナ兄様、次男のレイ兄様、私に遊びを教えてくれたのはマール公爵家ですわ。


「アリア様主催のガーデンパーティを覚えてますか?

パドマ令嬢との騒動の後にレティシアは会場から逃げるなんて貴族としてあるまじき行為をしたと落ち込んでました。そこに殿下との噂に令嬢達の嫌がらせ……。

幼いレティシアには、荷が重すぎましたわ。それを傍で支えたのが息子でした。

その頃から息子は変わりましたのよ。なんでも卒なくこなす分手を抜くのが上手かった息子は勉強も武術も真剣に学ぶようになりましたのよ」


伯母様、そんな昔のことを持ち出しますの?5年前ですよ?

そして面倒でしたが、そこまで気にしてはいませんでしたわ。パーティの後に落ち込んでませんよ。むしろセリアと友達になれてご機嫌でしたわよ。ご夫人達の目が輝いてますが、嫌な予感がしますわ。


「その後にレティシアに魔力の適性がないことがわかり、俺が守りたい、傍にいたいからルーン公爵家に婚約を打診してほしいと真剣に頼む息子を見て主人と決めました。レティシアは外国語に堪能なので、我が家の嫁として申し分なく我が息子ながら立派と思いませんこと?」


先ほどの演奏よりも盛大な拍手が沸き上がりました。なんでですか!?

誇らしげですが伯母様、事実無根ですよ。嫌がらせのお手紙のことここで話していいんですか?

周囲の生暖かい視線、数人の涙を流す夫人、この状況はなんですか?

どこに要素がありましたの?

隣に座るお母様だけは無表情ですわ。私はどんな表情を作ればいいかわかりません。


「ルーン令嬢、マール公爵令息にハンカチはプレゼントしました?」


うっとりした顔の伯爵夫人の言葉にドン引きしながら平静を装い首を傾げます。


「ハンカチ?」

「まだ入学前だから知りませんのね。令嬢は好いた殿方に自分の瞳の色と同じ糸でハンカチに刺繍をしてプレゼントするのよ」

「懐かしいわ。私はいつでも貴方を見ていますよって」

「きちんとプレゼントしてあげてくださいね。婚約者からハンカチをもらえない方は惨めです。

もちろん殿方からもありますけど、それはお楽しみですわ」


ずっと見てますって怖くないですか?

リオが肩身の狭い思いをするのは申しわけないから、贈ったほうがいいんですか?

夫人方の盛り上がり方が…。ついていけませんわ。

この光景に伯母様は笑ってますが、お母様は無表情でただ静かにお茶を飲んでます。お母様の周りだけ別世界ですわ。



「幸せになりなさい」


ポンとリール公爵夫人に肩を叩かれましたわ。

目立ちたくありませんのにきっと噂になりますわ。

ご令嬢もうっとりするような顔で見ないでくださいませ。ほぼ創作です。

私は弱気な令嬢設定なのでよわよわしく微笑み時が経つのを待つしかできませんでした。

皆様に暖かく見守られお茶会は終わりました。

嫌な予感がしますわ。

平穏を願うのに、どうして平穏になりませんの!!私の知っているお茶会と違うんですけど。

ルーン公爵令嬢とは私の想像以上に難儀なものですのね。

明るい未来を思い描けません。それでも進むしかありませんわ。

とりあえず、部屋に帰って作戦会議しましょう。

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