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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
第一章

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第二十一話  追憶令嬢9歳

ごきげんよう。レティシア・ルーンですわ。

将来の平穏な生活のために、謀略を巡らす公爵令嬢ですわ。


私はターナー伯爵家で過ごしております。

午前中の訓練は終わったので、町に散策に行きます。

今日は大道芸が広場で行われると聞き、おねだりしました。

護衛騎士が一緒ならと伯母様が許可をくださいました。

伯母様コーディネートのおさげ髪の町娘の装いです。服を選ぶ伯母様は楽しそうでしたわ。

四人の護衛騎士とシエルと一緒に歩いているんですが一つだけ気になることが。

一歩後ろを歩いているのは


「エイベル、何かご用ですか?」

「興味本位。伯父上の許可はある」

「大道芸に興味はないと思ってましたわ」

「公爵令嬢が興味をもつ大道芸に興味があるだけだ」

「大道芸に身分は関係ないありません。騒いだり平民に突っかからないでくださいね。迷惑かけないで」

「しない。本当のお忍びは護衛も撒いて出かけるんだよ」 

「楽しそうですわね」

「やるなよ」

「やりませんわ」


エイベルは相変わらず失礼ですが敵意はなくなりました。一緒に訓練しても喧嘩することもあまりありません。

同じ公爵家同士。エイベルもビアードに帰れば厳しい日々が待っているかもしれません。羽を伸ばしたいなら邪魔はしません。

エイベルよりもシエルが警戒した顔を向けています。

シエル、その顔やめてください。

やりませんわよ。シエルに首を横に振ってアピールすると曖昧に笑い返されました。ターナーに来てからはシエルが表情豊かになりましたわ。

どうしてシエルに信用されてないんでしょうか。リオと一緒にこっそり出掛けているのは知られてませんし。考えるのはやめましょう。何も言われないなら気にしませんわ。


騎士の案内で町の大きい広場に向かうと人が集まっています。

大人も多く大道芸が行われる広場の中心は全く見えません。見えなくても楽しむ方法は知っています。


「レティシア様、見えますか?」

「見えません。せっかくですから音を楽しみますわ」

「内緒ですよ。失礼します」


背の高い護衛騎士がそっと抱きあげ肩に座らせてくれましたが、私は身長も伸びて大きくなったので


「重くないですか?大丈夫ですか?」

「鍛えてますからご安心を。ですが暴れるのはご勘弁ください」

「わかりましたわ。ありがとうございます」


ありがたい言葉に甘えましょう。エイベルではないので暴れたりしませんわ。

横笛の奏でる明るい音楽に合わせて、布を持った踊り子達が踊ってますわ。

風に布をなびかせ軽やかな踊りは見ていて気持ちを明るくしますわ。

踊り子が礼をして消えると煙が立ち上りました。


剣舞が始まり観客の女性の歓声が響いてます。

精悍なお顔の役者に女性は夢中です。

剣を振ると風が起こりましたわ。風魔法と剣舞の組み合わせ。

幻想的な舞には魔法の演出、お勉強になりますわ。


次は大きい玉の上にピエロが乗って登場しました。玉乗り?

どうすればできるんでしょうか?

あら?ピエロがお手玉を始めました。

お手玉を空高く投げ、お手玉が火の文字に変わりました。

ようこそ!!こんな演出もできますのね。


男性の歓声が響き渡りました。

まぁ!?

お胸と腰だけを布で覆い、お腹や両腕や足は何も羽織ってません。

布を持って肌をさらして舞う踊り子。布を大きく振ると水しぶきが飛び散りますわ。

パシャンと水がかかりましたが冷たく気持ちいいですわ。

シエルが私を拭こうとしますが不要と目配せします。

今度は魔法で簡単な小屋を作られ、ハトが小屋を壊して飛び立ちました。

子供達の歓声が聞こえ、かすかに大道芸の終わりの挨拶が聞こえました。

楽しかったですわ。子供達が役者に握手しに駆け寄っています。

抱き上げてくれた騎士にお礼を言うとシエルが私の濡れた体をタオルで拭いています。


「お嬢様、握手は駄目ですよ」

「わかってますわ。帰りに市を見たいのですが」


じっとシエルを見つめると私を拭き終わったシエルは騎士達と話し合っています。


「絶対に離れないでください」

「約束しますわ!!ありがとうございます。」


お許しが出ましたわ。お買い物は久しぶりですわ!!自然に笑みがこぼれるのは仕方ありませんわ。

シエルが笑ってますが騎士の皆様が固まりました。

よくわかりませんが何も言われないなら気にしません。

エイベルの顔が赤くなっています。


「エイベル、気分が悪いなら先に帰ってください」

「違う。広場の熱気にあてられただけ」

「意外に繊細なんですわね」

「うるさい。さっさと行くぞ」


エイベルが先に歩いていきますが道がわかるんですか?

騎士達が止めないので気にせず自分のペースで歩きます。

広場ほどではありませんが賑やかな市に着きました。

たくさんの楽器が置いてある露店の前で足を止めます。


「可愛いお嬢さん!!気になるなら見ていきなさい。見るのにお代はいらないよ」


おじ様の言葉に甘えて膝を折り、商品を眺めます。見慣れない物も多いですわ。


「木細工が得意で、この箱なんてお手頃だよ」


おじ様が指さす小さな小箱よりも気になるのは、隣にある


「私は横笛が気になりますわ」

「大道芸を見てきたばかりだな。あの兄ちゃんの楽器も私の手製だ。音色も綺麗だったろう?」


素敵な偶然ですわ。横笛を指差し、


「素晴らしかったですわ。二つくださいな」

「二つもか!!気前がいいな」

「素晴らしい物でしたから。おじ様が一番苦労して作った箱はどれですか?」

「面白い注文だな。これだな。自信作だ」


細かく繊細な絵が掘ってある見事な木細工の箱。これなら貴族の持ち物としても見劣りしませんわ。


「一つください」

「あいよ。気前のいい嬢ちゃんに、これもサービスしてやるよ」


木彫りのウサギをおじ様が手に持ち商品と一緒に纏めてくれました。シエルが代金の支払いと商品を受け取ったのでお礼を言い移動しましょう。


「お嬢様、全部調べますからまだ勝手に触らないでくださいね」

「わかってます。よろしくお願いします」


購入物は危険な物がないかチェックが入ります。私が直接手に取ることを許されるのはルーンのお抱え商人や身元のしっかりした方の贈り物だけです。

これで笛の練習ができますわ!!



魔石つきの装飾品店で足を止めます。

魔石が彫られているのにお安いですわ。

魔力をこめて作る魔石の使い道は様々。魔石は高価なものが多く魔石入りの装飾品を持つのは裕福な者ばかり。露店で売るのを見るのは初めてです。


「これは魔石ですか?」

「わかるのかい?この魔石は小さくてね、役に立たないもんばかりだがね」

「小さい魔石がたくさん欲しいのですが」

「これだけなら」


握り拳くらいの包みを見せられる。


「いただきますわ」


セリアが喜びますわ。

魔石の研究したいって言ってましたもの。魔石を作れるようになるのはステイ学園に入学してからですので、セリアは魔石不足に頭を悩ませています。


別売りしている高価な大きい魔石の装飾をみる。

水、火、地、風、各属性の入った腕輪を購入する。

いい買い物ができましたわ。シエルが商品を受け取るのを待っているとエイベルが隣にいました。

先を歩くエイベルを追いかけなかったので別行動してましたがよく見つかりましたね。


「何に使うんだ?」

「お土産ですわ」

「自分の分は?」

「笛を買いましたわ」

「装飾品は興味ないのか?」

「必要最低限で充分ですわ」

「変なやつ」


苦笑しているエイベルは知りませんのね。ルーン公爵令嬢に必要な装飾品はルーン公爵家に用意されています。もう少し市を楽しみたいですがシエルが許してくれませんでした。

暗くなる前に帰らないとですものね。

そろそろ帰らないといけませんね。

ターナー伯爵家に帰るといつもはすぐに別れるエイベルがまだ一緒にいます。

目の前に袋を突き出されました。


「やるよ。殴った詫びと今までの」


気まずそうな顔に思わず笑ってしまいました。気にしてませんのに。

しかも今更ですか?受け取って中身をあけると驚きました。


「オルゴール?」

「たまには令嬢らしい物もいいだろ」


エイベルにそんな気遣いができるなんて思いませんでした。


「ありがとうございます。嬉しいです」

「これから、大変だと思うけど頑張れよ。気が向いたら助けてやるよ」


頼りないエイベルに?でも心意気だけは受け取りましょう。

同じ派閥なので魔力がないことへの私への非難を知っているのかもしれませんね。


「ありがとうございます。私も気が向いたら助けてあげますわ」

「生意気」

「でも殿下関係のお願いはお断りですわ」

「お前、本当に変だな」

「失礼ですわ」

「令嬢達に潰されないことを期待してるよ」


先程から意味深ですわ。エイベルは私の頭を乱暴に撫でて手を振って去っていきました。

その晩、エイベルは帰りました。エイベルなりの挨拶だったんでしょうか?

翌朝、エイベルが帰ったと聞いて驚きましたが。

生前のエイベルとは、やはり違いますわね。

昔は脳筋ですが硬派で騎士らしい一面もあったんですが・・・。

まぁ、いいですわ。

人の心配をしている場合ではありませんわ。

よくよく考えるとエイベルは敵でしたわ。

エイベルを力で屈服させる方法を探さないと・・。


エイベルがレオ殿下と仲良くするなら、監禁は駄目って教育してもらいます?

関わるのは危険ですわ。まず脳筋に教育なんて無理ですわ。

うっかり絆されかけましたが、エイベルは敵ですわ。

強くなるように頑張らないといけません。

エイベルには弓でしか勝てませんから。

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