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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
番外編 家族の記録

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リアムの日記11

リアムです。

ティアの画集が盗まれてから荷物には全部魔法陣をしかけた。追跡魔法にしようと思ったら、父様から魔法陣が送られてきたので書き換えた。ティアは、笑顔でさらに魔法陣を書き加えていた。ティアがどんどん物騒な性格になってる気がするんだけど、大丈夫だろうか。


学園では2年生の転校生が有名だ。公爵家が後見につき、転入してきた女生徒だ。なんと銀髪と水色の瞳を持っている。しかも名前はシア。父様だけが呼ぶ母様の愛称だ。

両親は話せないという。ただ時々、母様の名前を意味深に口に出す。ティアは話を聞いて、不機嫌だ。シエルが宥めてくれた。


「ティアはいらっしゃいますか?」


噂のシア様がティアの前に来た。ティアは反応せず読書している。シエルが嫌なら下位の呼び掛けには答えなくていいと伝えていた。


「ご挨拶もできないんですね。お恥ずかしいですわ。同じ、あら」


人をあざ笑うような顔は同じルーンとしてと言いたいのだろうか。僕の母様が絶対にしない顔でティアを見ている。ティアにその気かないなら僕が相手をすればいいか。


「僕の婚約者に何か御用でしょうか?」

「あら?そっくりなのね」


見つめられる親愛をこめた笑顔が気持ち悪かった。これが僕の家族を名乗ろうとしてると思うと嫌な気分になる。ただ感情に支配されてはいけない。父様の教えを思い出す。嫌な気持ちは隠して笑顔を纏う。


「僕の婚約者の名は見知らぬ人間に呼びつけにされるほど安くありません。平等の学園とはいえ」

「私を見て、何も思わないの?」


誰にも似てない。銀髪だって、ティア達の色と違って光沢がない。母様達の持つ太陽の下でキラキラと輝く銀髪と比べ物にもならない。


「わかりません。」

「マールの名を持つのに嘆かわしい。同じ血が流れているの、ごめんなさい。忘れて」


やっぱり母様と父様の子供と言いたいみたいだ。二人の話は有名だから。

ティアが立ち上がって、シア様の瞳を覗き込んだ。


「ルーンの瞳ではありません。マールの遠縁の方ですか?」

「私の外見を見て気づかないの?」

「どなたか存じません。ルーンでは貴方のような薄い色は産まれません。マールの色でもありません。何が言いたいのか教えていただけませんか?」

「私の母は魔力を持たない。」


ティアが笑った。


「血の継承は瞳に出ます。レティシア様もエドワード様と同じ瞳を持っていました。貴方の誤解を招く言葉の意味はご存じですか?ルーンはレティシア様への無礼は許しません。」

「そんなのわからないでしょ!?私の母はレティシアよ」


やっぱり、影で公言していたのか。母様の名前は有名だ。父様が言うには母様の名前を出すだけで力を貸してくれる家がたくさんあるらしい。ただ母様の名前をこんなにはっきり出すなら、エディが動く。ルーン公爵はレティシア・ルーンへの無礼は許さない。ルーンには私情で動いても咎められないほどの権力があると父様が言っていた。母様への無礼はエディに任せろと教わった。


「ルーン公爵家にレティシア様の子供の情報はありません。ただ過去、偽物には相応しい裁きを与えられています。この件は私が預り、ルーン公爵に報告させていただきます」

「ロキ先生!!」

「私は本物よ」

「わかりました。覚悟があるなら止めません。ルーン公爵への面会の手続きをするので、ついてきてください」


ロキが冷たい顔でシア様を見て、連れて行った。

それから彼女は学園に帰ってこなかった。

休養日に帰ると、エディが迎えてくれた。


「エディ、どうして偽物を放っておいたの?」

「ルーン公爵として、見極めを。馬鹿な貴族をあぶり出したんだ。ティア、良くできたね。ロキが褒めてたよ」

「ティアは母様の子供らしくしっかりできた?」

「よくできてたよ。ティアの言葉でルーンが彼女と関わりがないと気づいた貴族もいるからね。これからも不埒な輩が出てくるかもしれないから気をつけてね。偽物の話は姉様には内緒にしてくれる?」

「うん。」


ティアがしっかりするなら僕は楽になる。

母様の利用価値の高さ・・。ルーン公爵令嬢は凄い人だったんだと思う。だけど、どうしても僕の目の前に穏やかな顔をした母様がそんなにすごい人には見えない。

またソファでうたた寝してしまった母様を父様が運んでいる。


「父様、母様は大丈夫なの?」

「シアはもともと体が強くないから。今回はどうしても譲れないから、頑張ってるよ」

「譲れない?」


父様に頭を撫でられた。


「当分、母様は安静だから頼んだ」


まさか!?僕は父様の顔を見て確信した。きっとまた家族が増える。


「僕、修行頑張る。」

「そうだな。あとで、見てやるよ」

「母様はまだ狙われるの?」


父様が驚いた顔をした。


「聡いよな。シアは昔、女神を召喚した。それから利用価値をあげてしまった。シアの死体がほしいと話を聞いたときはゾッとしたよ。殿下も許さないだろうけどな。人間は汚い。苦労をかけるな」

「強くなるから。」


僕はちゃんと学園で交友関係を広めよう。ちゃんと学園にいる意味を考えよう。僕の幸せな時間を守るにはこれからもたくさん努力しないといけない。力はいくらあっても無駄じゃない。安心した顔で眠っている母様の顔が曇らないように。

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