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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
番外編 家族の記録

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リアムの日記10

長期休みはあっという間に時間が流れてしまった。

フラン王国を観光して、レオ様の所に遊びに行った。

父様は仕事に行っている。僕がいるから安心して出かけられるそうだ。今日は遠出をするので夕方まで帰らないので頼むなと出かけていった。僕達は宿題をしていた。気分転換に庭に行くと懐かしい人を見つけた。

昔と変わらない穏やかな笑顔を浮かべるクロだった。


「リアム、久しぶり。大きくなったな」


小さい頃からなんでも知ってて色んな話をしてくれた。


「クロ!?今日は遊んでくれる!?」

「夕方までなら。」

「剣、取ってくる」


クロはサイラスと同じ土属性の魔道士。

僕は急いで剣を取りに戻った。昔は全然勝てなかったけど、今なら勝てるかな。


「リアム、やめてください」


クロと剣を合わせていると母様の声が聞こえてクロから離れた。


「今はクロだよ。」


母様が困った顔をしてクロと見つめ合っている。


「クロ様、お忍びはお一人ですか?」

「ああ。魔法で来たから危険はないよ」

「全く気づきませんでした。リアムをありがとうございます。申し訳ありませんが、リオは出掛けていてまだ帰りません」

「そうなのか。マールにはまたの機会に挨拶するよ。せっかく来たから、一緒に過ごしていいかい?」

「お忍びはほどほどにしてください。リアム、クロ様に我儘言って困らせてはいけませんよ」

「うん。クロ、妹が産まれたんだよ。来て」


僕は訓練は終わりにして、リーファを紹介することにした。

家に入るとティアがリーファと遊んでいた。

ティアはクロを見て、どこかに行ってしまった。


「相変わらず、ティアには嫌われてるな」

「申し訳ありません」

「子供は正直だからな。かわりにレティが付き合ってよ」


僕はリーファを抱き上げて、クロに渡した。


「ターナーの色が濃いな」

「はい。お母様が大きくなったら訓練すると意気込んでます」

「年齢的に丁度良いか」

「リーファは貴族として育てるつもりはありません。クロ様はお戯れもほどほどになさいませ」

「義理でもいい。レティの血を感じられるだけで愛しく思う」

「クロ様はお心が広いですね。リーファは確かにリオの面影もありますね。クロ様とリオは仲良しですね」

「鈍いところは健在か。」


クロがリーファを優しい目で見ている。母様はどうしてか緊張している。笑顔の感じがいつもと違う気がする。


「レティ、不自由はないか?」

「はい。お心遣いありがとうございます」

「シア!?」


父様が帰ってきた。

母様がいつもの笑顔で父様に微笑んだ。


「リオ、お帰りなさい。クロ様がお待ちです」


「外で話しましょうか。旦那のいない家にあがりこむのはいかがなものかと」


「リアム、父様とクロ様は二人でお話があるから、母様とお茶しましょう」


母様はクロの腕からリーファを抱き上げて一礼して去って行った。

僕は母様に付いていった。


「リアム、クロ様は身分の高い方なので、失礼な態度はいけませんよ。詮索も駄目です」


人には踏み込んではいけない領域がある。

特に貴族は深入りは駄目と教わった。深入りするなら覚悟がある者だけと。僕は母様の静かな瞳を見て、頷いた。


「わかりました。」


クロは父様と話をして、最後に挨拶をして帰ってしまった。夕方まで遊んでくれるって言ったのに。クロはいつも早く帰ってしまう。僕とティアは父様に呼ばれた。


「ティア、連絡ありがとな。偉かった。助かったよ」

「うん」


父様がティアの頭を撫でてティアが嬉しそうに笑っている。


「リアム、クロは危険だ。特に母様には近づけてはいけない」

「クロ、優しいよ」

「優しい人が安全とは限らない。二人で修行するのは許すけど、母様には近づけないでくれ。」

「父様、ティアが頑張る!!」

「ティアはクロが苦手だろう?」

「母様のためなら我慢する。」


よくわからないけど、父様は母様のためにならないことは言わない。いつも正しいかは最近、わからなくなってきた。エディに相談すると正しさは人に寄って違うと教えてくれた。困ったら相談してと言ってくれるので今度聞いてみよう。


「わかった。気をつけます。」

「絶対に二人っきりにはさせるなよ。クロが来たら、すぐに教えてくれ」


真剣な顔の父様に僕は頷いた。

父様はまた出掛けていった。ティアにクロのことを聞いて慌てて帰ってきたみたいだ。

母様はソファで眠っていた。最近、よく眠っている。

少し顔色が悪い気がするけど、大丈夫かな。

エディが来て、静かにと視線をくれたので、頷いた。

エディが母様の手を握って、魔法をかけると母様の顔色が良くなった。エディは優秀な治癒魔道士。

エディが母様を寝室に運んでくれた。


「エディ、母様は?」

「疲れて休んでいるだけだよ。姉様は体があまり強くないから」

「病気?」

「違うよ。もしあんまり顔色が悪かったら僕か父上を呼んで」

「エディ、ティアに教えて」


ティアを見て、エディが小さく笑った。母様も時々同じ笑い方をする。


「治癒魔法は難しいんだ。覚えても、姉様には使わないでほしい」

「今は駄目でも、いつか役に立つ」

「先は長いから少しずつね。決して僕が許すまで人に使ってはいけないよ。治癒魔法は一歩間違えれば、毒だから。特にティアはルーンの血が濃いから容易く人の命を奪ってしまう」

「エディ、治癒魔法はそんなに危険なの?」

「ああ。間違えれぱ容易く人を殺せる。」


母様は魔法は便利だけど万能じゃないと言っていた。


「今の母様のためにできることはある?」

「二人が元気でいるのが一番だよ。姉様は二人の学園での様子をロキから聞いて喜んでいる。満足できないか。そうだね。よく学んで純度の高い魔石を作って贈れば助かるかな。二人は魔力操作が甘いからまだまだ先を目指せるよ。学園の先生は甘いから、先生方の評価は当てにならないよ。ロキに伝えておくよ。」


僕達は学園では優秀と言われている。

エディが魔石を僕とティアに作ってくれた。確かに僕達の魔石より色が濃い。


「これくらいなら及第点。二人ならいずれは作れると思うよ」

「エディ、この魔石を学園に持っていってもいい?」

「いいよ。僕から貰ったって言えばいいから」


僕はエディの魔石を貰った。

父様は帰ってきて、母様を見ると苦笑していた。僕達は父様と一緒に学園に行く準備を始めた。

翌朝、母様は起きてきて、僕達を見送ってくれた。

僕達はエディに貰った宿題を頑張ることを決めて馬車に乗り込んだ。


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