ティアの日記 4
ティアです。
休養日なので家に帰ってきました。今日はセリアも来てました。セリアがティア達を見て綺麗な顔で笑い頭を撫でてくれました。
「リアム、ティアも面白いこと考えたわね」
「面白いこと?」
「ルリにお手紙書いたでしょ?」
「うん」
「二人の手紙に驚いたレティが動揺してリオ様に見つかったみたい。レティは二人がルリの正体に気付いてないと思ってるけど。二人の手紙がなければ絶対にバレなかったのに」
「セリア、余計なことを」
父様がセリアに怒った顔をしています。
「レティが二人を心配してたから、誘ったのよ。変装させた後はノリノリだったわ」
「お前がのせたんだろうが。いつもシアで遊びやがって」
「人聞きが悪い。私はレティで遊んだことなんてありません。どちらかというとリオ様への仕返しです」
「いつまで根に持つんだよ」
「余罪がありすぎて、レティが止めなければ生きてることが不思議ですね。リオ様は国の至宝の私には手を出せないからご愁傷さまです」
二人はまた喧嘩をしてます。父様はよくセリアと喧嘩をします。
「ティア、リアム、お帰りなさい」
「ただいま、母様、二人が・・」
「いつものことだから気にしないで。昔っから仲良しですから。お茶にしましょう。エディがお菓子をたくさんくれましたよ」
ティアはにっこり笑った母様が気にしなくていいと言うなら気にしません。ティアの母様は可愛いのです。父様達を放っておいて座りました。
シエルがお茶を用意してくれます。リーファを抱っこすると前よりも重たくなりました。
でも可愛い。頬をつっつくと笑うお顔は母様にそっくりです。
机の上にはお菓子がたくさんあります。クッキーを一枚食べると美味しくて頬がほころびます。
母様がシエルのお茶が一番ですねという言葉にシエルが笑っています。ティアはお茶と聞いて大事なことを思い出しました。
「母様、相談があるの」
「どうしました?」
「ティアね茶会のゲストに選ばれるかもしれないんだって。」
「1年生のティアが?」
「うん」
母様は優しそうな顔から困った顔に変わりました。
「リオ、セリアとのお話は後にしてください。ティアの相談にのってあげてください。」
父様とセリアが来ました。母様の話を聞いて父様が頷きました。
父様は生徒会役員だったので学園の事情に詳しいそうです。
「茶会のゲストは先生達が決める。1年でも生徒会役員で良家の令嬢に招待状が来るのは珍しくはない」
「ティアが茶会に・・・」
「母様、そんなに大変なの?」
震える母様を見てセリアが笑ってます。
「リアム、レティはね、」
「セリア、駄目です」
母様がお顔を真っ赤にしています。嬉しそうに笑ってる父様を睨んでます。
「懐かしいな。1年の時はシアのバイオリンが盗まれて、3年は勘違いして」
「昔の話はいいんです。ティアにお茶会の練習をさせましょう」
母様が顔を赤くしたまま綺麗な笑みを浮かべました。そして父様とセリアを見て首を横に振りました。
「この二人だと駄目ですね。セリアはお茶会に参加しないし、リオも勝手がわかりません」
母様が父様を役にたたないというのは初めてです。
「母様、エディは毎回ゲストで参加してたって」
「え?どうして・・?ならあとでエディとお母様を呼んで練習しましょう」
「父様は?」
「茶会は令嬢の役目よ。リオは作法がわかりません。お茶会はただお茶を飲むだけでいいわけではありません。」
お母様が真剣な顔でティアを見ます。どうしてかちょっと怖い気がします。
「母上と義姉上に頼もうか?」
父様が苦笑してます。
「お忙しいお二人に・・。でもそうですね。予定が合うならお世話になってもいいでしょうか。お茶会は経験が一番ですから。」
「二人も会いたがってたから大丈夫だよ。ここに帰ってきてから一度も行ってないだろ」
「リオ様、そのままマールに帰ろうなんて無理ですよ。その日はレティはリーファとうちに来る?」
「駄目だ。セリアとは二人で出かけるのは絶対に許さない」
「そんな・・。わかってます。すみません。しばらくは家でゆっくりしてます」
父様のお顔を母様が悲しそうな顔をしました。
もう母様から怖い空気はありませんでした。ティアの気のせいだったみたいです。
「来週、予定を合わせるよ。ティアは来週はマールで特訓だ。リアムはどうする?」
「僕は母様といる。父様がいない間は母様とリーファは任せて。セリアとのお出かけもついて行って守るよ」
「俺の息子は優秀だ」
父様がリアムを誇らしげに見ています。父様はいつもリアムばかりを贔屓するのです。
「リアム、あんまりリオ様に似ないようにね。碌な大人になれないわ」
「セリア!?リアムは絶対に立派な大人になりますよ。まぁいいです。ティアは今日と明日は母様と特訓ね」
「頑張る」
母様がティアの頭を撫でてくれます。
「頑張りましょう。もう少し頑張れば夏休みですから」
「また冒険!?」
「ええ。父様と行ってらっしゃい」
「母様は?」
「母様はリーファとお留守番。もう少し大きくなったら一緒に行けるかな」
「母様、僕は冒険よりも母様と一緒にお留守番がいい」
母様とリーファが一緒に行けないのは嫌です。
「冒険は難しくても、夏休みはどこか遊びに連れてくよ。だから茶会頑張れよ。二人共行きたい場所を考えといて」
父様が一緒なら母様もきっと一緒です。皆でお出かけは楽しみです。
「リアム、楽しみだね」
「ティア、行きたい場所は茶会とテストが終わってから考えようね」
「そうだった・・」
「ティア、レティは厳しいから覚悟しなさい」
セリアはティアを可哀想な目で見ました。ティアが頷くと頭を撫でてくれました。
それからティアの特訓がはじまりました。お茶会の母様は綺麗だけど怖かったです。
ティアが間違えると優雅に笑って見つめてきます。翌週のマールのおばあ様とエレン様とのお茶会は和やかでした。
「ティア、礼儀作法は完璧よ。よくできてるわ」
「母様には、まだまだって」
「レティも厳しいのね。」
「ティア、学園の茶会ならこのレベルで大丈夫よ。常に笑顔で相づちうっていれば」
「母様はお返事が駄目だって」
「レティは特別よ。あの子は小さい時から戦ってたから」
おばあ様が笑っています。
「戦う?」
エレン様が真剣なお顔になってティアを見ています。
「社交界は令嬢の戦場よ。親交を深めて、情報を集めて、自分の家の価値をいかに」
「エレン、やめなさい。それはティアが貴族として生きる覚悟を決めた時に教えればいいわ。茶会は楽しんでらっしゃい。リオ、出てきなさい」
父様がいつの間にかお部屋にいました。
「ティアをありがとうございました」
「レティの教育は厳しいから気をつけなさい。」
「はい。母上達に任せて良かったです。ルーンだと、どうしても基準が高くて。また時々お願いします」
「ええ。いつでも連れてきなさい。ティア、レティとリオのことで困ったらいつでも来なさい。」
「本人を目の前に言わないでください。確かに母上が一番強いですからね。」
よくわからないけど、マールのおばあ様が一番頼りになるということでしょうか。
父様が母様との茶会に慣れれば、どんな茶会も簡単だと言う意味がわかるのは先の話です。
母様が一番怖かったのは隣国のお姫様とのお茶会だったそうです。その次はクロード殿下とのお茶会。
お姫様や王子様とお茶会するってやっぱりルーン公爵令嬢は凄いんですね。




