表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
番外編 家族の記録

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/207

リアムの日記5

リアムです。ステイ学園1年生です。

最近、マートンの機嫌が良いせいかティアとの喧嘩が減って一安心。エラム様は相変わらず、つきまとってくるけど追い払うから問題ない。


「ルーン、俺はとうとうセリア様に近づいた」


偉そうな顔をしてマートンはティアに話しかけた。セリアが僕達と親しいのは秘密。シオン伯爵家と親しくなる理由が僕達にはないんだって。

ティアが余計なこと言わないように気をつけないと。セリアと母様が友人なのは有名な話。母様の学生時代の交友関係はなんでか有名なんだよな。


「おめでとう」

「悔しいだろ?」

「悔しくない。」

「俺はセリア様の助手と文通をしている」


セリアの助手?僕が知らないだけかな。ティアがセリアと友達と言わなかったことに安心した。


「ようやくレティシア様への道が開く」

「ティアもエドワード様と文通してるもん。レティシア様のお話いっぱい教えてくれるもん」


ティア、えらい。お母様って言わなかった。

父様が言い聞かせてくれたのかな…。


「セリア様はレティシア様の親友だ。」

「知ってる」

「セリア様とルリ様は同じ歳。そしてルリ様もレティシア様を知っている。」

「ルリ様?」

「知らないのか。セリア様の助手のルリ様だ。こないだ学園に来られた」


母様の偽名と同じなのは偶然?

話に混ざろう。喧嘩じゃないからティアも拗ねないだろう。


「マートン、その手紙、僕にも見せて」

「やらないぞ。」

「いらない。見るだけだ」


マートンが手紙を見せてくれた。


マト様

お手紙ありがとうございます。

申し訳ありませんが、セリア様はお忙しいのでご紹介することはできません。

レティシア様は平凡な生徒でした。人の噂とは頼りにならないものです。

いずれ、真実に気づかれることをお祈りします。

お勉強頑張ってください。  ルリ


「ルリ様が俺を応援してくれている」


これ、母様の筆跡だ。応援ではないような。


「ルリ様にお会いしたことあるの?」

「いや、同じ研究生がルリ様と文通しているから俺も仲間にいれてもらった。侯爵家と知れたら遠慮されると思って偽名だけどな」


ティアが手紙を覗き込んで震えている。母様の筆跡と気付いたんだろう。


「お手紙、どれくらいくるの?」


「セリア様が来るときに渡してくれる。連絡先は教えてくれない。レティシア様のお知り合いだから文字も綺麗だよな」

「ティアもお手紙書く」


立ち上がったティアの腕を掴む。


「ティア、授業があるから」


泣きそう。駄目だ。ここで泣いたら色んな意味で問題だ。父様には周りの視線を意識しろと言われている。


「わかった。移動しようか。ティアと体調不良で休むから伝えといて」


戸惑った顔をしているマートンに伝えたけど平気だろうか。聞き耳をたてていた生徒が先生に話してくれるか。

ティアの手を引いて僕達の特別室に移動する。


「母様はティアにはお手紙くれないのに、どうして」


泣き出したティアを抱きしめてあやす。

それは僕にはわからない。ルリのことはシエルに調べてもらおう。


そういえば、セリアから貰った物があった。魔法で父様から貰った木箱を開けて魔石を取り出す。手元に来たので魔力を流す。学園内は魔法禁止だけど、見つからなければ大丈夫。


「レティ、気分はどう?」

「皆、心配しすぎです」

「母様とセリア?」


ティアが顔を上げて手元の魔石を覗き込むとお腹の大きい母様が映っている。


「リオ様やエドワード様に魔力を貰わないと倒れるのに?」


母様が優しく笑っている。


「意地悪。確かに体は辛いです。でもね心は暖かいの。昔はルーンのためなら、なんでも捨てられた。」

「リオ様も?」


母様が目を伏せた。


「うん。ルーンのためならリオとも離れます。でも、きっとこの子だけは無理です。心が壊れます。ルーン公爵家より重たいものがあるなんて知りませんでしたわ」

「リオ様が聞いたら泣くわね」

「リオもきっと同じです。マールのためなら私を捨てます。公爵子息だもの。でも、私はマールよりも、この子を選んでほしいとルーン公爵令嬢としてありえないことを願ってしまう」

「リオ様可哀想ね。良い気味かしら」

「セリア、酷い。」

「絶対にリオ様は落ち込むわよ。産まれる前からレティの取り合いかしら」

「セリア、リオは身内に甘いんです。きっとこの子達にも優しいですわ。何があっても私が守るから安心して産まれてきてね。私のせいで狙われても、絶対に守るから、」

「シア、それは俺の役目だから。俺は何があってもシア達を捨てないよ」

「リオ。いつからいたんですか?」

「さぁな。でも確かに妬けるよな。俺は捨てられるのにこの子は選ぶんだな。いつになったら報われるんだろうな。逃さないけど」

「もしもです。例え話です」

「俺もいつかルーン公爵家に勝てるかな」

「無理ね」


母様が拗ねた顔の父様を見てクスクスと笑い出した。


「リオもセリアも大好きですよ。でも貴族としての務めですもの。許されるなら二人とこれからも一緒にいたいです」

「セリアと同じ枠かよ」

「レティ、リオ様が嫌になったら私が面倒みてあげるわ」

「シアは絶対に渡さない」

「きっとリオもセリアも貴方が大好きになるわ。だから元気で産まれてきてね。私は何があっても大好きな気持ちは変わらないから」


映像が消えた。これは僕達が産まれる前の時かな。


「ティア、聞いた?」

「ルーン公爵令嬢は家が一番大事。でもティア達のほうが大事?」

「うん。父様より僕達が好きだって」

「マートン様より?」

「母様が父様より好きな男がいると思う?」

「いない。ティアとリアムが一番?」

「残念。きっとリーファも入れて一番だよ」


ティアが嬉しそうに笑ったからもう大丈夫かな。


「シエル、ティアが毎日お手紙書いたら母様お手紙くれる?」

「勿論ですわ。お嬢様は自分からはお手紙を書きませんが、お返事は必ず書きますわ。」

「え?」

「リオ様もお嬢様にお手紙を貰ったことはありません。お二人がお手紙をくださったら喜んでお返事を書いてくれますわ」

「シエル、学園に来たセリアの助手のルリを調べてほしい」

「ルリ様はお嬢様が二人を心配して一度だけ変装して来たんですよ。リオ様も知りません。そのときに1年3組で挨拶をしたらファンができました。お嬢様に渡してほしい手紙をセリア様が預かり、渡されたお嬢様が律儀にお返事しているだけです。お嬢様は昔、お手紙の返事をせずに怒られてからは、どんなお手紙にもお返事しますわ」


シエルが苦笑している。


「マートン様との手紙は?」

「あれは義務として返してるだけです。面倒だなって思ってますよ」

「ティアの手紙は?」

「ティア様とリアム様の手紙はきっと喜びますわ。リオ様に自慢されます。興奮してお返事が遅くなるかもしれません」


母様が学園に来たの・・。全然気づかなかった。セリアが時々来てるのは知ってたけど・・。


「シエル、本当に父様気づかないのかな?」

「たぶんご存知でしたら、リオ様が代筆しますよ。お嬢様って関心のないことは誰にもお話ししないのでリオ様は気づかないかもしれません」

「関心のない?」

「はい。お嬢様とお手紙のことはまた今度お話しますわ。せっかくですから、お嬢様とルリ様のお二人にお手紙を書いたらいかがでしょう。」

「なんで?」

「お楽しみです。」


シエルが楽しそうに笑っている。僕達はルリ宛に手紙を書いて、ロキにセリアが来たときに渡して欲しいと頼んだ。


母様にも手紙を出した。翌日、父様から手紙が来た。


リアム、ティア、手紙ありがとう。

母様からの返事はもう少し待ってくれ。喜んでるよ。今は返事を一生懸命考えているから。書き損じた手紙を一枚同封する。うちは書き損じた便箋だらけだよ。何が駄目なのかわからないのけど、気に入らないみたいだ。


二枚目には短い文章が綴られていた。


ティア、優しい風が花に息吹を吹きかける季節になりました。

お手紙を頂いて大変嬉しく


「シエル、これは?」


父様からの手紙を見せるとシエルが笑った。


「お嬢様がお手紙に悩むなんて初めてです。きっと言葉遣いや書きたいことなど悩んでるんでしょう。」


その3日後にティアには猫の絵の便箋、僕には鳥の絵の便箋で手紙が来た。手紙への感謝と感想とリーファのことが書かれていた。母様は何を悩んでいたんだろう。


2週間後にルリから手紙が来た。

僕の手紙には栞が同封されていた。母様はルリとして手紙をくれた。


ティアには花柄の絵葉書だった。

ティア様

お手紙ありがとうございます。

ティア様のお手紙大変楽しく読ませていただきました。

お勉強頑張ってください。

お手紙楽しみに待っています。 ルリ

と書いてあった。


手紙を読んだマートンが固まっていた。


「どうしたの?」

「ルリ様はこれから遠方に旅立たれるのでもう返事はできないと。当分は帰ってこれないから自分のことは忘れてほしいって。せっかく仲良くなったのに。リアムはなんて書いてあった?」

「秘密」


僕の手紙にはそんなことは一言も書いてなかった。きっと父様が気付いたんだろう。覗き込んだマートンの手紙の最後の文章の文字は母様の筆跡じゃない。似てるけど違う。

ティアがマートンを見て嬉しそうに笑った。マートンのは白い便箋なのにティアは封筒の中には香りつきの絵葉書だもんな。僕には白い便箋だけど、見たことのない栞。明らかに特別扱いしている。

母様はルリの正体に僕達が気づいてなくても、特別扱いをやめられなかったらしい。

マートンよりも僕達が好かれてるのはわかってたけど、嬉しい。僕がしてない文通をマートンが母様と先にしていたのは面白くないから。

ルリと文通をしているのは僕とティアだけ。

他の人にはマートンと同じ手紙が届いたらしい。


ティアはルリからの手紙をマートンには見せなかった。

ロキを通してルリとの文通は続けている。

このことで、ティアはマートンに優越感を感じたのか喧嘩も少なくなった。

ティアがマートンを時々、あざ笑ってるけどいいのかな。

こんなティアを見たら、父様と母様が嘆きそうなんだけど。


いつもお付き合いいただきありがとうございます。

追憶令嬢のやり直しを初めてましたので、心の広い方は是非!!

番外編より進んだレティシアの逆行のお話です。

レティシアの性格が少し悪くなっています(苦笑)


追憶令嬢のやり直し

https://ncode.syosetu.com/n7260gh/


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ