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追憶令嬢の徒然日記  作者: 夕鈴
番外編 家族の記録

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リアムの日記2

母様とセリアがティアといつでもお話できる縫いぐるみを作ってくれた。

僕は母様の縫いぐるみが欲しかったけど、それは駄目だって。男の子の持つものじゃないって。

見かねたセリアが内緒よと言って映像魔石をくれた。学園に持っていってもいいけどティア以外には見せてはいけないって。僕の魔力でしか見れないように改良してくれた。


「リアム、ティア、」


僕達に声をかける人は少ない。

僕達に近づいてきたのはレント公爵家のエナ様とレシーナ様だ。

レント公爵家はお母様のお友達のレオ様とエイミー様が治める新しくできた公爵家。マール公爵家とルーン公爵家も後見についているから仲良くしても平気だ。

エナ様とレシーナ様は僕たちが兄妹と知っている。


「入学おめでとう。」


「エナ兄様、レシーナ姉様!!」


ティアがレシーナ様に抱きついた。


「ティア、失礼だよ」


「リアム、いいのよ。」


エナ様とレシーナ様はエイミー様と一緒に遊びに来てバイオリンを教えてくれた。


「リアム、学園は平等だ。それに俺も素っ気なくされたら寂しい」


僕の頭に手を置くエナ様はエイミー様そっくりで男には思えないほど可愛らしいお顔をしている。エイミー様も可愛いけど、一番は母様とティアだ。


「すみません」

「学園はどう?」

「ティアが一人で眠れないみたいで・・・」

「それはリアムにはどうにもならないか」

「エステルは来年、入学ですし」

「ティアも大人への階段をあがらないとだな。」

「道は険しいです」

「困ったらいつでもおいで」

「ありがとうございます」

「レシーナ、そろそろ行こうか。顔を見るだけだろ?」


抱き合っている二人に声をかける。


「ティア、離れて」

「お母様・・」

「ティアは甘えん坊ね。入学祝いにこれをあげるわ。人のいないところで見てね。落ち着いたらバイオリンのレッスンはじめるからね」

「え?」

「私の茶会はリアムとティアにお願いするの。」

「レシーナ、あんまり先の話をするな。」

「お兄様、予約は早めにしておくものよ。3年生に誘われたら私の名前を出していいから断ってね」

「レシーナ姉様?」

「可愛い。お母様の気持ちがよくわかるわ。困ったら相談してね。マールとルーンにレント公爵家にたてつく愚か者はいないだろうけど。じゃあ、授業頑張ってね」


レシーナ様とエナ様が去っていった。視線を集めてる。

ティアはレシーナ様にもらった魔石に夢中だ。


「ティア、ここでは見ちゃだめだよ」

「うっ」

「放課後、部屋で見よう。今日は魔法の授業があるよ。」

「魔法の実技の授業はじめてだね!!楽しみ。」


ティアは魔法が好きだ。だから初めての魔法の授業を楽しみにしていた。

その楽しみは授業が始まると一瞬で砕け散った。

魔力の認識と魔石を作る授業だった。

ティアがしょんぼりした。


「ティア、魔石作って、帰ろうか。この授業で今日は終わりだから」


ティアと一緒に魔石を作った。周りが驚いているのはどうしてだろう。


「先生、できました」


先生に魔石を渡すと目を輝かせた。


「これは・・。」

「もう少し大きい方がいいですか?」

「いや、十分だ。見事だよ。初手でこんなに純度の高いものを作ったのはエドワードとリオ以来だよ」

「おとう」

ティアの口を手で塞ぐ。お父様じゃないから。


「マール?」

「すみません。先生、この後どうすれば?」

「見学してもいいし、退席してもいい。来週は初期魔法に入るから自分の属性の詠唱を覚えておいで」

「わかりました。失礼します。ティア、行くよ」

「失礼します」


僕達は特別室に移動した。今日は生徒会も呼ばれてないから自由だ。


「リアム、先生、詠唱覚えるって言った?」

「うん」

「詠唱しなきゃだめなの?」

「授業だからね。」

「魔法の授業、つまらなかった。」

「父様達も受けた授業だよ。きっとなにか強くなる秘密があるかも」

「秘密?」

「そんなことよりレシーナ様からなにをもらったの?」


ティアがポケットから魔石をだして魔力を流すと音楽が聞こえてきた。

バイオリンの演奏?


「エイミー様!!どうされましたの?」

「感動して。気にしないで続けて。練習さぼったでしょ?」

「それは・・」

「シア、はじめていい?」

「リオ、エイミー様が」

「レオ様がいるんだ。嫁の涙を止めるのは夫の役目だろう。シアが泣いたら慰めるのは俺だろ?」

「セリアもいます」


また曲がはじまった。これ演奏してるのって・・。


「父様、母様」

「ティア、上手だね。今度帰ったら弾いてもらおうか」

「帰りたい。寂しい」


どうしよう。外泊届けだして帰る?

このティアは説得できる気がしない。


「ティア様、ロベルト先生と手合わせされました?」

「シエル?」

「武術のロベルト先生は強いんです。リオ様も勝てなかった方です」

「お父様が?」

「はい。せっかくですから鍛えてもらったらいかがですか?先生に勝てたら一人で冒険のお許しがでると思いますよ」

「行く!!父様に勝てないと冒険は一人じゃ駄目って」


部屋を出て行くティアを追いかける。勢いよく歩き出したティアが立ち止まった。


「リアム、先生、どこにいるのかな」

「職員室に行って聞いてみようか」


ティアの手を引いて職員室に行くとロベルト先生がいた。


「ロベルト先生、訓練してください!!」

「ルーン?」

「先生すみません。どうしても勝ちたい相手がいまして」

「勝ちたい相手だと」

「おと」


ティアの口をまた塞ぐ。

お父様って言わないで。秘密だから。


「ルーン公爵夫人に勝ちたいんです。そうだよな?」

「おばあ様にはいつも負けてしまうんです」

「おばあさま?」

「ローゼ様によくしていただいてます」

「あの風の天才にか。いいだろう。来い」

「ありがとうございます」


ロベルト先生と一緒に訓練場に行った。


「先生、魔法は使っていいですか?」

「ああ。二人でかかってきなさい」

「え?」

「さすがに1対1はつまらん」

「ティア、どっちがいい?」

「ティアが攻撃」

「わかったよ」


どっしりと構えるロベルト先生。

ティアに速度向上の魔法をかける。剣を持って飛びかかっていくティアを風で助ける。

時々ロベルト先生に風の刃を向ける。

ティアはロベルト先生の攻撃をうまく躱している。ティアは躱すのがうまい。

うん。このままだ持久戦になればまずいな。

ティアの攻撃に合わせてロベルト先生に斬りかかる。

父様が勝てなかった理由がわかった。隙がない。ティアも疲れてきてる。


「ティア、ここまでだ」


ティアがロベルト先生から離れた。


「先生、ありがとうございました」

「マール?」

「これ以上は僕たちの集中力が持ちません」


ロベルト先生が剣をおろした。


「いや、中々楽しめた。師匠は元気なようだな」

「え?」

「他言はしない。ただ戦い方が昔の俺の生徒にそっくりだ。ローゼは単身で戦う天才だったが、リオは補助の天才だった。連携戦やらせれば敵知らず。あいつ自身も強いけどな。いつも手を抜いてたけどな」


これ、バレてる?


「手を抜く?」

「武門の出でないあいつがあんまり優秀すぎると目立つしやっかみを受けるからな。軍部に目をつけられても厄介だ。」

「僕達も手を抜いたほうがいいんでしょうか?」

「さぁな。二人で俺の研究室に入るか?」

「ティアといつも一緒にいられるなら」

「そっくりだな。」


これはきっとバレてます。


「よく言われます」

「武術は誰に教わった?」

「父様、母様、ローゼ様、エディ、サイラス、ロキ、クラム」

「それは強くなるな。きっと当分授業はつまらないだろ。時々鍛えてやるよ。ティアはどうする?」


ティアのこと忘れてた。うずくまっている。


「ティア、大丈夫?」

「負けた。悔しい。全然駄目だった」

「ロベルト先生が研究室に誘ってくれたけどどうする?」


ティアが勢いよく立ち上がった。


「先生、ティアと毎日訓練してくれますか?贔屓しませんか?」

「贔屓?」

「すみません。師匠はティアにはあんまり訓練せず、俺にばっかり厳しいから妬いてるんです」

「昔からあいつはルーンにだけは弱いんだよ。贔屓はしない。厳しいけどな。いつでも付き合ってやるよ。卒業までに勝てるといいな。」

「頑張る。よろしくお願いします。リアム、反省会しよう」


ティアが元気になってよかった。

歩いていくティアの後ろをゆっくり追いかける。途中で道がわからず立ち止まるだろうから。


「シエル、ありがとう」

「お嬢様は何かに夢中になると一直線でしたの。周りが見えないのが傷でしたが。時々幼い頃のお嬢様にそっくりですわ」

「何歳?」


シエルが目をそらした。


「シエル、教えて」

「5、6歳のころは時々あんな感じでしたわ。お嬢様は厳しい教育のせいか大人びてましたから。」

「大人びてるのがよくわからない」

「リオ様の前だと甘えて子供のようになるんです。昔からお嬢様の令嬢の仮面を上手に外してくれるのはリオ様とセリア様でしたわ」


僕とティアはロベルト先生の研究生になった。ロベルト先生の研究室は強さを極める集団だった。この研究室だけは特殊らしい。

まさかエラム様がいるとは思わなかった。でもティアに近づけないように気を付けるよ。

ロベルト先生のおかげでティアの寂しさは薄れたみたいでよかった。

毎週、家に帰るのはかわらないけど。

父様、交友関係を広めるのは僕には難しいみたい。



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