公爵子息の記録1
エラム・ビアードです。ビアード公爵家の嫡男。12歳です。
俺は父に連れて行ってもらってマール公爵領の村を訪ねたことで人生が変わった。
今まで一番強いと思っていた父上が一番じゃないことを知った。
訳あり魔導士が住む家と教わって訪ねた家で世界が変わった。
平民なのに父上より強いリオ様と美しいレティシア様。平民でもこの二人を呼びつけにするのはまずい気がする。俺より小さいのに強いリアムと可愛いティア。
俺はティアが父上に見せる笑顔を見て恋におちた。
ティアは可愛い。今までたくさんの令嬢を見てきたけど見惚れたのははじめてだ。
でもティアは父上の愛人になりたいみたい。
俺なら愛人なんてしないのに。ちゃんとティアだけを大事にするのに。
ティアが父上に振られて、泣いてたから慰めたかったけど、リアムが許してくれなかった。
俺より幼いリアムに魔法で取り押さえられたのは情けなかった。
ティアと仲良くなりたいのにリアムとリオ様が邪魔をする。
リアムに勝つために、リアム達のことを調べた。情報収集が大事だから。
レティシア様の瞳はルーン公爵家の色、父上にレティシア様はルーン公爵家の人間なのかと聞いたら顔が青くなっていた。これは当たりだと思った。父上がこれ以上調べることを禁じ母上にも誰にも絶対に言うなと言われて確信した。
レティシア様がルーン公爵家ならティアも同じ公爵家。それならティアを婚約者にしたいと話したら、ビアード公爵夫人とは認められないと言われた。今のティアは平民だからって。なら爵位はいらないと言ったら殴られた。俺は父上に憧れていたけどビアード公爵になりたいわけじゃなかったから。その程度の覚悟だったかと失望されたんだと思う。俺は全然悲しくなかった。ティア達はいつも家にいるけど時々家族で姿を消す。調べたら冒険者だった。ティアが冒険者なら俺も冒険者になろうと決めた。父上は訓練はしてくれるけど、跡取りの教育は弟にはじめた。母上は複雑そうに見てたけど、何も言わなかった。
時々内緒でティアに会いに行っていたけど、リオ様に送ってもらってからは行けなくなった。
さすがに監視をつけられたら撒けない。父上にもティアが好きなら近づくな。俺の軽率な行動がティアを傷つけると言われた。リオ様には父上に勝てるまでは一人で来るなと言われた。ティアに会いにきて、俺が襲われたら迷惑だと怒られた。確かに俺は弱い。リアムに全然敵わない。お許しが出るように強くなろうと決めた。
ティアに会いたい。ただ神様は俺を見捨てなかった。
王家のパーティで銀髪の令嬢を見つけた。エドワード様と一緒にいるからティアかもしれない。
彼女は陛下にティア・ルーンと名乗った。貴族の令嬢はパイプつくりのために挨拶周りをするが彼女にそんな様子はなかった。
「ティア、挨拶よくできたよ。僕は挨拶に行ってくるからリアムと待てる?」
「はい。エドワード様」
「リアム、任せたよ。なにかあれば先に帰っていいからね」
「お任せください」
エドワード様が離れたのを確認して二人に近づく。
「久しぶりだな」
リアムがティアの前にたつ。
「お初にお目にかかります」
「は?」
「リアム・マールと申します。彼女は婚約者のティア・ルーンです。初めての社交で緊張しているのでご容赦ください」
「なんで?」
「僕たちはこれで失礼させていただきます。行こうティア」
リアムがティアをエスコートして去ろうとする。
「待って、ティア、せっかくだから一曲」
「僕は婚約者が他の男と踊るのを許せるほど心が広くないんです。では。」
リアムとティアが婚約?
「余計なことを騒いだら物理的に落としますのでよく考えてくださいね」
リアムが去り際に呟いていった。怖い。なんなの。本当に年下?
「リアム、どうしよう。やっぱりエイベルのこと諦められない」
「ティア、僕が傍にいるから大丈夫。ずっと一緒だよ」
「リアム大好き」
「僕もティアが大好きだよ」
このパーティで寄り添う二人を見たご婦人方の興奮がすごかった。令嬢達に人気の純愛物語の主人公の容姿にそっくりだったせいだろうか。今度こそは二人が結ばれるように見守る会が結成されたのは驚きだ。
ティアには近づけなかったけど、貴族ならステイ学園に入学してくる。そしたらティアに会える。
ティアが入学するまでにせめてリアムよりは強くなるように頑張らないと。
二人が入学しても俺はティアに徹底的に避けられ続けるとは予想してなかった。
そしてリアムがずっと近くにいて近づけない。周りは二人を応援する令嬢ばかり。
孤立無援の戦いが始まるとは思っていなかった。
リアムとティアは兄妹のはずなんだけど、二人の距離の近さに心が痛いのはどうしてだろうか。
いつも読んでくださりありがとうございます。
評価、感想、誤字報告ありがとうございます。連日更新はここまでになります。
のんびりお話を増やしていけたらと思いますので、時々覗いていただけると嬉しいです。
長いお話になりましたがここまでお付き合いくださりありがとうございした。




